成功するために必要なパートナー選びとユーザー側の体制を語り合う
こんなに増えたkintoneパートナーをどう選ぶ? オオタニ&稲澤が導いた方程式
2024年02月27日 09時00分更新
ユーザーがやるべきこと パートナーが提案すべきこと
稲澤氏の立ち上げたBe Magical Solutionsは、1990年代後半に「パソコンのお医者さん」という事業を第二創業としてスタートし、その後2015年から第三創業でkintoneの対面開発にシフト。2020年はDX人材の育成研修としてkintoneの教育事業を始めており、今は年間170回くらいは研修を行なっているという。パートナーの立場でありながら、ユーザーの気持ちもわかるという希有な存在と言えるかもしれない。
そんな稲澤氏から見て、ユーザーとして最初に決めるべきなのは、「どんな支援をしてもらいたいか」ということ。稲澤氏は大きく、「導入を手伝ってくれ」「作り方を教えてくれ」「自分たちで作りながら」「困ったことを相談できて」「道案内をしてくれる」などをパートナーに期待しているのではないかと分類。このうち、どれが必要かをまずは決める。
また、「自分たちで作る」だけでなく、「外部に作ってもらう」という選択肢もある。外部に作ってもらうと早くできるが、変更にはベンダーの依頼が必要になる。自分たちで作れば変更は自分たちでできるが、学ぶのには時間が必要になる。支援の内容と内製化or外部への開発依頼かを決め、パートナーが決まったら自社でやるべきポイントは5つあるという。
①必ず経営者を巻き込む
Be Magicalが関わっている案件では研修に必ず経営者が参加する。経営者がいることで、取り組んでいる内容がわかり、優先度の指示や変更が行なえる。また、業務プロセスの変更がその場でできる。意思決定のスピードの速さが経営者を巻き込む最大の理由だという。
ちなみにBe Magicalの研修に参加した経営者は、最初から最後まで出席する必要がある。「途中で入ったり、途中で抜けたりすると、『いつまでやってるんだ』『いつできるんだ?』という冷たい言葉をかけられたり、社長じゃないと決められないことが起こる。その場に経営者がいると、すごくスムーズに進みます」と稲澤氏は語る。
②かかる費用は先にすべて伝える
kintoneは1ユーザーで月額1500円だが、5ユーザーからなので必ず7500円かかる。さらに稲澤氏は、「これに加えて必要なものはけっこうある」と指摘する。たとえば、「帳票」が必要な場合はトヨクモの「PrintCreator」などを利用することが多いが、この場合もライト版の月額6000円ではなく、プレミアム版の月額1万4000円を提案しておかないと機能的に不足することが多いという。
また、操作改善のためにアールスリーインスティテュートの「gusuku Customine」が必要になるが、こちらも1万8000円の月額プランではなく、アプリスロット1000の最大年額120万円は考えておいた方がよい。同じく集計のために使うメシウスの「krewData」もスケジュール実行が1日最大10回の2万4200円くらいのプランを想定すべき。「kintone使い始めると、経営者はだいたいグラフが見たいと言いますので、これくらいは想定すべき」と稲澤氏は語る。
経営者への伝え方のポイントとしては、人件費換算がオススメだ。「短時間さん一人分から、フルタイム一人分くらいの費用は必要になります」と伝えているという。しかも予算がいきなり必要になるわけではないので、あらかじめMAXの数字を経営者に知っておいてもらうというのがポイントになる。
③社内の体制を整える
社内の体制を整える上で重要なポイントは「現在の課題を洗い出す、みんなで話す」「一人でやらず、チームでやる」「現場を巻き込む。チラ見せ&相談」「対面開発で目の前ですぐに変更してみる」「勉強会を定期的に開く」などだ。
稲澤氏は、勉強会をやった場合には、必ず宿題を出すという。とにかく1つアプリを作り、わからないところまでやる。次の勉強会では、前回から今回までに作ったモノをみんなでシェアし、できたこと、できなかったことを話してもらう。ここまで行って、初めて稲澤氏はできなかったことの解決策を教えるという。「大切なのはできたことより、できなかったこと。kintoneでどこまでできないのかを知ってもらうのが大事だから」と稲澤氏は語る。
④必ず自分でやりますと宣言してもらう
出した宿題は必ず自分でやりますと宣言してもらう。次の勉強会では、その宣言に従ってどうやって進めたかを確認していくという。
⑤業務改善の意識を根付かせる
サイボウズはkintoneのことを「問題を解決したい人が一番速く試行錯誤できるツールである」と説明している。また、働きやすい職場に必要な要素として「働きやすい風土」「誰でも仕事ができる仕組み」があり、その上で「ITツールの活用」があるとも言っている。
とにかくkintoneを使って成功体験を積むことが重要。なにかアプリを作り、誰かの業務が楽になり、誰かの役に立つ。これにより、会社の変化を感じ、もっとやってみたくなるというサイクルが回るという。
その際に参考になるのが、サイボウズチームワーク総研の「問題解決メソッド」だ。これによると、問題とは「理想と現実のギャップ」を指すのだという。頭の中にはすでに理想があるので、その理想と現実にある差はなにか、どうすれば埋まるのかを、順番に解決していくメソッドだという。「これを使うと、そもそも課題はkintoneで解決できるのか?」が判断できるので、kintoneでできたら解決に近づくというわけだ。
5つのポイントを聞いた大谷は、稲澤氏にいくつか質問を投げかける。まず現場のメンバーから経営者をうまく巻き込むコツとは? これに対して稲澤氏は、「まずは部署のリーダーを巻き込み、エスカレーションしていくのが大事」とコメントする。
また、成功体験を積むための工夫については、「好きなアプリを1つ作ってくださいと言います。自分のしている仕事をなんとか楽にできないだろうか?と考えてもらう。この意識がとにかく重要」と語る。その上で研修でそのアプリを発表してもらうと、周りの人から「それええやん」とか「それができるなら、これできひんの?」という評価やリアクションが得られる。こうやって3承認欲求を得られると、次のアクションに結びつきやすい。実際の稲澤氏の案件でもよくある話だという。
「kintone導入の成功とは?」 ゴールを見据えてパートナーを選べ
最後、オオタニは「みなさんにとってkintone導入の成功ってなんですか?」と聴衆に問いかける。「目の前の業務課題が改善すれば成功なのか、全社でkintoneが利用されるようになったら成功なのか、あるいは自ら業務改善をする文化が根付いたら、それは成功なのか? ユーザーごと、導入・運用のフェーズによって、けっこう違うと思う」とオオタニは語る。過去200本以上のkintone事例をASCIIで掲出してきた経験から、各社でゴールが違うことに驚いたオオタニ。やはりkintone導入はそれを強く意識すべきだとアピールした。
これについて稲澤氏は、「kintoneでスモールスタートしやすいのはわかるのですが、経営者はもっと全然高い目標を描いていることの方が多い」とコメント。このギャップを埋めるために指導してくれるパートナーこそが真のパートナーになり得ると持論を述べた。
では、kintoneパートナーを選ぶ方程式とは? まずは稲澤氏が述べたポイントを満たせるか自らに問いかけることから始める。「自社の課題を洗い出し、この課題を全社で解決するのか? 確認するところからスタートするとよい」と稲澤氏はアドバイス。その上でパートナーに関しては、オオタニが話した5つのポイントをそれぞれスコア化し、自社の課題解決にマッチするかを考える。首都圏なのか、地元なのか、自社の業種に強いのか、中小企業向けなのか、エンタープライズ向けなのか、どこを重視するのかを洗い出す作業だ。
最後のバリューは、まさに「なにをもって成功と言えるのか?」というポイントの定義だ。ユーザーのやりたいこと、パートナー選びで重要視するスコア、kintoneに期待する成功を掛け合わせることで、最適なパートナー選びができるという。稲澤氏は、「自分たちでできることをまずやっていただく。言われるがままではなく、自分たちも力を付けていくのが成功の鍵」とアドバイス。その上で「パートナーとどこに行きたいのか。ゴールを見定めた上で、伴走なり、アドバイスなり、必要なサポートを検討すべき」とまとめた。