複雑化と単純化をくりかえしながら進化する
最後にもうひとつ、Forgeとともに、Stable Diffusionを使うハードルを下げたと言えるのが自動インストーラー「Stability Matrix」です。
Stable Diffusionをブラウザーで使うためのユーザーインターフェースは、A1111、ComfyUIなど様々ですが、Stability Matrixでは、これらのユーザーインターフェース間でフォルダーを共有できます。使いたいファイルをStability Matrixに入れておき、インストールしたい環境を選んでクリックするだけで、必要なデータをまとめてダウンロードしてくれます。
Stable Diffusionユーザーにとっての大きな問題は、ユーザーインターフェースが登場するたびにファイルが増えてしまうことでした。複数のユーザーインターフェースをインストールすると、ファイルサイズが1つあたり2~7GBある学習モデルや、様々なLoRA、ControlNetをそれぞれにコピーする必要があり、ストレージを圧迫する要因となっていたんです。
Stability Matrixを使うと、そうした多くのファイルがひとつの共通フォルダーで管理できるようになり、大幅にストレージの節約になります。ビューアー機能も搭載しているため、それぞれの環境ごとの画像のチェックも簡単です。
記事執筆時点のForgeにStaility Matrix v2.8.3はまだ対応していませんが、次バージョンのv2.9で対応すると予告されています。Stability Matrixは、2023年6月に最初のバージョンが公開されてから既に60回以上のバージョンアップが繰り返されており、Stable Diffusionを初めて触るユーザーに広く推奨される環境にまで成長してきています。
Stable Diffusionのユーザーインターフェースは、オープンソースコミュニティに属する世界中のエンジニアの努力により、絶え間ないアップデートが続けられてきました。一方、自由な開発によって機能面がどんどん複雑化して、初心者にとってハードルの高い環境になっている側面もあります。その中で、ふたたび単純化をはかり、使いやすい環境にもしようとするという動きが同時に起きるのがコミュニティ型開発の強みとも言えます。ときに開発者同士の緊張もはらみながら、さらなる高みを目指す絶え間ないイノベーションが続いています。

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