サイオスは、2024年2月13日、サイオスグループの2023年度の事業進捗と2024年度の注力事業に関する事業戦略発表会を開催した。
サイオスグループは、OSS(オープンソースソフトウェア)を活用したSI事業を原点として、ソフトウェア&SaaSを中心に展開するテクノロジー企業群。成長領域であるSaaS事業においては、ワークフローシステム「Gluegent Flow」やIDaaS製品「Gluegent Gate」などを提供する。
同グループの2024年12月期における通期業績予測は、売上高が166億円、営業利益が2億5000万円となり、2期連続の増収かつ営業利益の黒字化を見込む。コロナ禍では苦戦を強いられたが、増収による売上総利益の増加や、研究開発投資の絞り込みなどの販管費の減少により、黒字化を目指している。
サイオスの代表取締役社長である喜多伸夫氏は、2024年度の成長戦略を「SaaS・サブスク事業に引き続き注力しつつ、未来を見据えて新たな領域を切り開く」と説明。“SaaS・サブスク事業への継続投資”“APIソリューション事業の拡大”“生成AIによる事業強化“の3つの領域に注力するという。
SaaS・サブスク事業:Gluegentシリーズの新規ユーザー獲得、アップグレードに注力
注力領域のひとつ目であるSaaS・サブスク事業は、前述のワークフローシステムであるGluegent Flow、IDaaS製品であるGluegent Gateからなる「Gluegentシリーズ」が中核を担う。同シリーズのARR(Annual Recurring Revenue、1年ごとに繰り返し得られる収益)合計は、2023年には5億7700万円に達し、前年度比で18.2%の伸長を遂げている。
2024年度のGluegent Flowの成長施策としては、新規ユーザー獲得と既存ユーザーのアップグレードに向け、2023年に実施した「Microsoft 365との連携機能の強化」を、業務効率化ソリューションとして訴求していく。具体的には、Excelを介したGluegent Flowと基幹システムの自動連係を全面に押し出す。
Gluegent Gateについては、2023年に、企業グループだけではなくサプライチェーンも含めた効率的なID管理を実現する取り組みを開始。同取り組みで実装した「統合ID管理」機能を柱に、新規ユーザー獲得と既存ユーザーのアップグレードを狙う。
システム障害を監視し、障害が生じた場合には自動でシステムを切り替えるソフトウェア「LifeKeeper」においては、国内でのサブスクリプションモデルへの転換を推進する。同システムは海外でのサブスクリプション売上が前年比22.6%の伸びと好調。ユーザーが契約内容やオプション情報を確認できるマイページを開発するなどカスタマーサクセスの改善を進め、国内のサブスクリプション販売を強化していく。
精神科病院のDXを支援するクラウド電子カルテシステム「INDIGO NOTE」では、国内の医療DXが活発になっている現状を踏まえ、Version1.0の提供を終了し、次世代システムとしてのVersion 2.0の開発に着手する。
テレワークやフリーアドレスに対応した座席管理・行動記録システム「Your Desk」は、前年伸長率が465.9%と好調で、成長を緩めることなく、更なる利用拡大を目指すとする。
APIソリューション事業:パートナーシップ拡大により幅広いニーズに応えられる体制を
2つ目の注力領域であるAPIソリューション事業の詳細は、サイオステクノロジーのAPIソリューションサービスラインヘッドである二瓶司氏より説明された。「APIソリューション事業は、2017年に立ち上げた。APIのプラットフォームにより、DXやIoTといった新しいビジネスを始める、もしくはレガシーなシステムをモダナイズするといった需要に対してソリューションを提供している」と二瓶氏。
同社のAPIソリューション事業の強みは、APIの基盤構築に特化した専門チームが、APIプラットフォームの開発やシステム拡張をワンストップで提供していること、および事業を継続してきたことによるナレッジの積み上げだという。年平均成長率48%と活況を呈する市場のニーズを獲得して急成長しており、「競合があまりいない領域なこともあって、ビジネスが順調に伸ばせているのではないか」と二瓶氏。
同社で取り扱うパートナーのサービスは、API Gatewayにはじまり、周辺領域としていわゆるiPaaSであるAPIインテグレーションからデータパイプライン、認証・許可、そしてサブスクリプション実装までを取り扱う。現在は、セキュリティやIaC(Infrastructure as Code)、データ可視化といったDevSecOpsの領域にもサポートを拡げているという。
今後について二瓶氏は、「プラットフォーム志向のユーザーが多いため、システム開発事業者やコンサルティングファーム、クラウドプロバイダーなどとのパートナーシップを強化しつつ、同時に特定領域に強みを持つパートナーを含めたエコシステムを拡大していきたい」と説明。
NTTデータのサプライチェーンプラットフォーム「iQuattro」における協業事例では、サプライチェーンに必要な機能をマイクロサービスとして提供。サプライチェーンにつながるサプライヤーとのエコシステムの拡張をサポートしている。
生成AIによる事業強化:自社活用の知見を基にコンサルティングサービスを展開
3つ目の注力領域で、同社にとって新たな領域でもある生成AIによる事業強化については、サイオステクノロジー 取締役 専務執行役員である山﨑靖之氏より説明された。生成AIコンサルティングサービスの提供を軸に、社内においても生成AIによる業務効率化や既存サービスの強化を進める。
2024年1月に提供開始した、生成AIコンサルティングサービス「Azure OpenAI Service技術コンサルティング」は、マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceの導入から活用を支援。導入プラン作成からPoC、設計・開発、運用まで一貫したコンサルティングを提供する。
加えて、社内における生成AIの活用を進め、蓄積した知見をコンサルティングサービスにも還元していく。
ソフトウェア開発においては、マイクロソフトの開発者向けAIアシスタントである「GitHub Copilot」を活用。2023年4月から導入しており、利用言語は、PythonやJava、JavaScript、TypeScript、ShellScript、C#、Rubyなど。コメントに基づくコード生成や新たに使用するライブラリの利用方法の調査、テストコードの生成、OSSコード解析、コードレビューなどに活用しているという。
「用途や利用条件によってばらつきがあるが、定量的には5%から25%程度の開発工数削減効果を得ている。将来的には50%程度まで削減することを目標としている」と山﨑氏。
また、Azure OpenAI Serviceで全社員向けのChat Botも開発。社内データがAIモデルのトレーニングやマイクロソフトのサービス改善目的で使用されないなど、生成AI活用で懸念されるセキュリティを担保できる点からAzure OpenAI Serviceを選択している。
ユーザー向けサービスでも生成AI活用を進めており、テクニカルサポートサービスでは、過去の問い合わせデータをインプットした生成AIが対話するQAサービスの構築に取り組んでいる。