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西田宗千佳の「AIトレンドトラッキング」 第11回

マイクロソフト30年ぶりのキー追加は“生成AI推し”の象徴だ

2024年02月03日 07時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●ASCII

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Steam、生成AI使ったゲームOKに(1月10日)

 これは次のニュースと並び、非常に影響の大きな話題。生成AIを実際にコンテンツに使うことについては、かなりの議論と反発もある。しかし、アイデアを具現化したり、量産が必要なアセットの制作をしたりするのに生成AIを使いたい……というニーズは無視できないのだろう。「現状では」という但し書きがつくものの、生成AIで思い通りのゲームアセットをすぐに量産できるわけでもない。アセットを量産する人々が「狙って」使い、初めて効率が上がってくる状況にある。その関係もあって、ゲームで使用可能なアセットの制作に生成AIが使われ始めており、それらの活用を無理に止めない、という現状追認的な要素も大きいと思われる。

 ただ、ゲームの中でどう生成AIを使ったかの明示については、詳細なルールがあるわけではない。そのため、ユーザーからの反発を含めた議論は当面続くものと思われる。

俳優のAI合成音声、ゲーム開発で利用可能に。全米映画俳優組合が協定締結(1月10日)

 こちらもコンテンツ制作がらみ。前述のように、画像などではどんどん活用が進んで「しまった」ので、こうしたルールの策定は待ったなしだった。放っておくと勝手に合成音声を作られかねないので、ちゃんとルールが締結されることは必須だ。2023年はハリウッドでストの嵐が吹き荒れた。こうした交渉は不可欠だが、長引くと演者・スタッフのビジネスにも関わる。このタイミングでの策定はそういう意味でも望ましいことだっただろう。

ChatGPT「GPT Store」開店 カスタム版GPTで収益化可能に(1月11日)

 ChatGPTの活用を進める上で、GPTsによるエコシステムは極めて重要だ。ユーザーが自分で工夫する領域を超えていくことで、より多くの人々が実践的に使えるからだ。また現実問題として、ChatGPTを他の生成AIプラットフォームと差別化するにも大切だ。

 ただ、昨年末のゴタゴタもあり、スタートは遅れてしまった。それ自体はたいした影響があるとは思えないが、「大変だったんだろうな」と苦労が偲ばれる。

マイクロソフト個人向け「Copilot Pro」月額20ドルで提供(1月16日)

 OpenAI同様、マイクロソフトは着々と「生成AIプラットフォームから日銭を得る」ビジネスに突き進んでいる。Microsoft 365とCopilotを本格活用する場合、大手企業は「Copilot for Microsoft 365」が中心となるが、個人・スモールビジネスは「Copilot Pro」を主軸にすることになるだろう。

 実はGPT Storeへもアクセス可能だったりして、コスパはChatGPT Plusより良い。

自分の分身AIを低コストに生成。NTT版LLM“tsuzumi”を活用(1月17日)

 NTTは生成AIについて、かなり特徴的な展開を始めている。tsuzumi自体が単純な「パラメータ数勝負のLLM」ではない上に、それをどう使うかという点でも、NTTグループ内で研究されていたいろいろな施策との連動が目立つ。

 日本勢としてぜひ頑張ってほしいと思うが、短期的に「GPT-4とがっぷり四つ」というような路線でもないので、収益化までの道のりも気になる。

最強AIスマホ! Galaxy S24シリーズを発表したサムスン新製品発表会「Galaxy Unpacked」レポ(1月18日)

 オンデバイスAIを全面に押し出してきたのが、今季のサムスンの戦略の特徴と言える。

 実は2つのAIを搭載しているのもこの製品の特徴。「かこって検索」を含め、Googleの「Gemini」のオンデバイス版である「Gemini nano」を活用、さらに、クラウド上のGemini Proでコンテンツ要約もしつつ、自社の「Galaxy AI」も、リアルタイム翻訳や対話文字変換などに使う。

 統一した方が……と思わなくもないが、素早く自社の価値を出しつつ、Googleが進める「Androidでの生成AI活用戦略」に最初に乗っていくという意味では正しい選択なのだろう。

 これも含め、この数年でサムスンはGoogleとのパートナーシップ戦略をより強めている。Google自身も、一番人気のあるAndroidであるGalaxyをより有効活用したい……という意図がありそうだ。

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