既存のシリーズでの立ち位置を検証する
今回は冒頭でも述べた通り、単純な時間的リソースの制限から、RTX 4070 Ti SUPERのRTX 40シリーズにおける立ち位置を確認するための検証とする。GeForceはRTX 4080を筆頭にRTX 4060まで(RTX 4060 Ti (8GB)は除く)を準備し、前回のRTX 4070 SUPER検証のデータをそのまま引き継ぐ形で検証データを作成している。
RTX 4090がない理由はお察しだとは思うが、後日RTX 4080 SUPERレビューが可能な時に戦列に加えることとしよう。比較用にRadeonはRX 7800 XTのみが入っているが、RTX 4070 Ti SUPERと同じ4Kも狙え、VRAM 16GB/256bit幅というスペックも同じ。ただし、実売価格はRTX 4070 Ti SUPERよりもずっと下(実売価格8〜9万円)である。
さらにRX 7800 XTはDLSS FG(Frame Generation:フレーム生成)は使えないが、Radeon専用のフレーム生成機能「AFMF(AMD Fluid Motion Frames Technology)」が利用できる。素の性能ではRTX 4070 SUPERに近いRX 7800 XTがRTX 4070 Ti SUPERに勝つ見込みは薄いが、「ゲーム側の対応が不要な」AFMFを使うことでRX 7800 XTにもフレームレートで上回れるチャンスもある。
検証環境はRTX 4070 SUPER時と同じである。RTX 4070 Ti SUPERのドライバーはレビュー用β版、それ以外はGameReady 536.52。RadeonはAFMFに対応したテクニカルプレビュー版23.40.01.10を使用した。また、検証にあたってはResizable BARやSecure Boot、さらにコア分離やWindows HD Color(HDR)も有効としている。
【検証環境】 | |
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CPU | AMD「Ryzen 7 7800X3D」 (8コア/16スレッド、最大5GHz) |
CPUクーラー | ASUS「ROG RYUJIN II 360」 (AIO水冷、360mmラジエーター) |
マザーボード | ASUS「ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI」 (AMD X670E、BIOS 1807) |
メモリー | Micron「CP2K16G56C46U5」 (16GB×2、DDR5-5200動作) |
ビデオカード | NVIDIA「GeForce RTX 4080 Founders Edition」、 Palit「GeForce RTX 4070 Ti SUPER Jetstream OC」、 ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC」、 NVIDIA「GeForce RTX 4070 SUPER Founders Edition」、 NVIDIA「GeForce RTX 4070 Founders Edition」、 Palit「GeForce RTX 4060 Ti SUPER Jetstream 16GB」、 MSI「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」、 AMD「Radeon RX 7800 XTリファレンスカード」 |
ストレージ | Micron「CT2000T700SSD3」 (2TB M.2 SSD、PCIe 5.0、システム用) |
電源ユニット | Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(23H2) |
テストにより異なるRTX 4070 Ti SUPERの立ち位置
では「3DMark」から検証をスタートしよう。RTX 4070 Ti SUPERは、RTX 4070 Tiに対してSM数だけでなくメモリーバス幅でも勝っているため、スコアーで上回ると考えられるが、どちらもTGPが285Wであるため、電力とパフォーマンスを天秤にかけた場合、より回路規模の小さいRTX 4070 Ti SUPERが不利になる可能性がある。
RTX 4070 Ti SUPERのスコアーは予想通りRTX 4080とRTX 4070 Tiの間に着地したが、テストにより着地地点が若干変わってくる。今回試した中では一番負荷の低いFire Strikeや次に負荷の低いTime SpyだとRTX 4070 Tiのわずか2〜4%程度しかスコアーが増えていない。
しかし、それ以外の負荷の大きなテストでは、RTX 4070 Ti SUPERのスコアーはRTX 4070 Tiに対し7〜13%ほど上、RTX 4080に対しては11〜18%ほど下といった塩梅になる。WQHD向けのGPUであえてフルHD環境で使うような状況では、むしろRTX 4070 Tiの方が費用対効果が高くなることを示している。
そして、RTX 40シリーズ全体だが、同じVRAM 16GBを備えるRTX 4060 Ti (16GB)に対しては少ない場合で約39%、多い場合で約94%のスコアーアップとなった。GPUの上と下で比べているのでこの程度の差は当然といえるが、RTX 40シリーズにおける性能差は現状こんなものだ、という感じでご覧いただきたい。
続いては消費電力を比較する。3DMarkの“Time Spy”におけるGraphics Test 2実行時における実消費電力をHWBusters「Powenetics v2」を利用して計測した。ここではシステム全体の消費電力とTotal Board Power(ビデオカード単体の消費電力)を比較する。アイドル時は3分間放置した際の平均値を、高負荷時は平均値や最大値のほかに99パーセンタイル点の値も比較する。
GPUの性能順に消費電力も綺麗に並んでいるが、注目したいのはRTX 4070 Ti SUPERとRTX 4070 Tiのわずかな違い。Total Board Powerでは平均値および99パーセンタイル点は3WだけRTX 4070 Ti SUPERの方が高いが、システム全体の消費電力では両者の差がやや広がり、RTX 4070 Ti SUPERの方が10W程度高くなっている。
まずTotal Board Powerの差がわずかな点は、スペック上どちらも285W設定なのでさもありなんという感じ。その一方で、システム全体の消費電力でより大きな差がついているのは、RTX 4070 Ti SUPERの方が描画性能が高く、より多くのフレームを描画できるようになったためCPUの仕事量が増え、結果としてシステム全体の消費電力が増えたと考えられる。
もっと強めのファクトリーOCモデルでは差が拡がると思われるが、消費電力はほぼそのままでRTX 4070 Tiに比べて描画性能を大きく向上させたのがRTX 4070 Ti SUPERといえるだろう。
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