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日本企業のシステム停止による年間損失は1471万ドル ― 最新オブザーバビリティレポートも公開

New Relic、生成AIアプリのパフォーマンスや品質、コストを最適化する新APM

2023年12月07日 10時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 オブザーバビリティプラットフォームを提供するNew Relicは、2023年12月6日、AIアプリケーション向けのAPMとオブザーバビリティ市場のレポートに関する記者発表会を開催した。

マニュアル運用率が高く、障害復旧に時間を要する日本企業

 まず始めに、New Relicが年に1度実施する「2023 オブザーバビリティ予測レポート」の調査結果が発表された。同調査は、日本を含む世界15カ国、約1700名のIT意思決定者および実務担当者を対象に、2023年3月から4月に実施されている。

 調査では、世界全体における障害発生頻度と機会損失のインパクトについて、システム停止などの重大障害が週1回以上発生した企業が31.9%、システム停止による年間の機会損失の中央値は、775万ドルになったという。

 New Relicの副社長 宮本義敬氏は、「システム障害が経営にどれだけインパクトを与えているか、その先のユーザーを考えると社会的にも影響をおよぼしていることがわかるかと思う」と説明。

New Relic 副社長 宮本義敬氏

 一方で、日本企業に絞ると、週1回以上重大障害が発生した企業は、24.0%とグローバルより少ない割合になった。しかし、日本特有の問題として、障害復旧を1時間以内におさめた企業の割合が、世界全体の57.2%よりも大幅に低い、36.8%にとどまることを指摘している。日本の50%弱の企業が障害復旧に1時間以上要しているという結果は、システム停止による年間の機会損失にもつながっており、世界の775万ドルの倍近い1471万ドルもの損失(中央値)を生み出している。

重大障害の発生頻度と復旧時間、機会損失における日本と世界の比較

 また、世界全体のオブザーバビリティの導入範囲として、セキュリティやネットワーク、データベースといったインフラ監視領域が、昨年は50%ほどの導入だったのが、70%前後になったという。「ここ1年でオブザーバビリティの導入がグローバルで広がる一方で、アプリケーションやクライアント側、あるいは、AIやKubernetesといった新しい領域は、導入が追い付いておらず、フルスタックのオブザーバビリティには課題が残る」と宮本氏。

 一方で日本では、ログ管理を除くすべての領域で、世界と比べてオブザーバビリティの導入割合が低い。特に顕著なのがダッシュボードで31.2%にとどまった(世界は65.2%)。リアルタイムで一元管理が可能なダッシュボードの導入が低く、ログ管理が高いのは、人間が直接ログを見て、マニュアルで検査して、復旧する運用体制の企業が多いからだと宮本氏は分析する。

 それを裏付けるように、システム停止の検知をツールで自動化している企業の割合が、世界は73.0%なのに対し、日本は59.2%と少ない。これは、前述の障害復旧に時間を要しているという結果にもつながっている。

障害検知手段と導入範囲における日本と世界の比較

 このような結果ではあるが、日本におけるオブザーバビリティの導入意欲は高まっていると宮本氏は言う。

 「今年になってオブザーバビリティを検討したいという企業が増え、デジタルネイティブな企業だけではなく、製造業や金融業といった伝統的な企業からも問い合わせをいただく。来年日本市場は、“オブザーバビリティ元年”を迎えるのではないか」と宮本氏。調査における、日本企業のオブザーバビリティの導入意欲も、多くの領域で7割を超えた。

 オブザーバビリティの意欲が高まる中で、New Relicが注力するのが、調査において日本企業が課題の1番手に挙げた「エンジニアの技術不足」、トレンドの1番手に挙げた「AI技術の活用」の領域だ。オブザーバビリティを導入するエンジニアをサポートし、関心の高いAIをオブザーバビリティ導入の契機とする。

日本における将来的なオブザーバビリティの導入意欲

課題と促進するトレンドにおける日本と世界の比較

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