Edge-to-Cloudプラットフォーム拡充などの施策を紹介、東京電力HDも「HPE GreenLake」採用顧客として登壇
HPE望月社長「エッジ、ハイブリッドクラウド、AI領域のリーダー狙う」2024年度方針を説明
2023年12月05日 07時00分更新
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2023年11月30日、同社 2024年度(2023年11月~2024年10月期)の事業方針説明会を開催した。社長の望月弘一氏は、エッジ、ハイブリッドクラウド、AIの3領域に注力する「Edge-to-Cloud Company」という企業方針をさらに加速させ、2024年度は同領域を牽引するリーディングカンパニーになるという目標を打ち出した。
またゲストとして、東京電力ホールディングスでCDO/CIO/CISOを務める関 知道氏が登壇。TEPCOグループとしてデータドリブンな事業運営を目標に取り組む「TEPCO DX」への挑戦と、その中核をなす「TEPCO Data Hub」を「HPE GreenLake」の活用で構築した事例について紹介した。
「Leading Edge-to-Cloud Company」を目指すHPE
望月氏はまず、グローバルの2023年度業績を紹介した。売上高は前年度比で5.5%増の291億ドル、売上総利益率は35.3%と「堅調な成果を残した」という。なかでも、現在のHPEが戦略的に注力する「GreenLake」「エッジ」「HPC & AI」の各分野では、いずれも好調な業績を残せたことを報告した。
続いて望月氏は、昨年度HPEが実施したM&Aについて紹介した。
望月氏はまず、現在のITプラットフォームにおいては「ITへの期待の変化」「一貫性のあるクラウド体験ニーズ」「急激なIoT/AIの浸透」といったトレンド変化が生じていると説明する。そうしたトレンド変化に対応するために、HPEではこの1年間に多くのM&Aを行ってきた。
具体的には、ハイブリッド/マルチクラウド環境においてAIによる運用自動化(AIOps)や全体最適化を実現するOpsRamp、エッジ/オンプレミス/クラウドに一貫性のあるセキュリティ(SASE)を提供するAxis Security、ローカル5Gコアを提供するAthonet(アソネット)、大規模なAI/機械学習モデルの開発パイプラインを自動化するPachydrm(パキダム)、複数サーバーのリソースを束ねて巨大な仮想マシンの構築を可能にする“Software-Defined Servers”のTidalScaleといった企業のM&Aだ。
こうした企業買収によって、HPEとして提案可能なソリューション領域も拡大している。市場そのものの成長も含めて、エッジ分野におけるHPEの提案可能領域規模は2022~2026年で1.5倍に、ハイブリッドクラウド分野は同1.6倍に、そしてAI分野は同2.0倍に、それぞれ拡大する見込みだ。
こうした動きをふまえ、2024年度のHPEジャパンでは「Leading Edge-to-Cloud Company」を目指して事業活動を展開すると、望月氏は述べる。
「これまでも“Edge-to-Cloud Company”という言葉を掲げ、エッジ、ハイブリッドクラウド、AIという3つの領域に注力すると宣言してきたが、さらに幅広いテクノロジーでこの完成度を上げていき、この分野のリーダーを狙う」(望月氏)
望月氏が特に強い期待を示したのが、GreenLakeプラットフォームへの、買収したOpsRampのテクノロジー統合だ。これによってベンダーニュートラル/クラウドニュートラル のプラットフォームを実現し、各ベンダー/クラウドの良い部分を組み合わせたハイブリッド環境を構築できる「第三極のクラウドプラットフォーム」という立ち位置を獲得する。それによって顧客企業をベンダーロックインから開放し、ビジネス変革や持続可能な社会の実現に貢献していきたいと語った。
プラットフォーム拡充、顧客エンゲージメント強化、パートナー拡大
2024年度の施策方針として、望月氏はまず「Journey to One」という言葉を挙げた。これは、社員全員が「Leading Edge-to-Cloud Companyの実現」という同じゴールを目指すことを意味している。
この大テーマのもとで、具体的施策として「Edge-to-Cloudプラットフォームの拡充」「購買特性/サイクルに合わせたエンゲージメント強化」「パートナリングの革新と拡大」の3つを推進していく。
まず1つめの「Edge-to-Cloudプラットフォーム拡充」では、昨年度の事業戦略説明会で宣言した“GreenLakeの第二章”の続きとして、さらなるクラウドエクスペリエンスの強化とベンダーニュートラル/クラウドニュートラルの実現に注力していく。
2つめの「購買特性/サイクルに合わせたエンゲージメント強化」については、製品を導入する2つのタイプの顧客(ソリューションバイヤー、テクノロジーバイヤー)のそれぞれに合わせた支援体制を強化していく。ソリューションバイヤーは、課題の洗い出しからソリューション提案、実際の構築や運用までを求める顧客。一方でテクノロジーバイヤーは、そうしたことは自社でまかなうので、必要とするハードウェア/ソフトウェアを手早く効率的に提供してほしいと求める顧客を指している。
この取り組みは昨年度からスタートさせており、これまでに両タイプの顧客に対応する営業組織やカスタマーサクセス組織を立ち上げている。今年度はさらに2つ、顧客企業側で検討したソリューションのラフデザインに適したサービスや製品を提案するスペシャリティセールス組織を大幅に拡大すること、GreenLakeユーザーやテクノロジーバイヤーどうしの情報共有を可能にするコミュニティを立ち上げることに取り組むと述べた。
3つめの「パートナリングの革新と拡大」においては、先述した“Journey to One”で目指すHPEの方向性をパートナーとも共有し、推進していく「Journey to One with Partner」というテーマを掲げる。具体的には、これまでオンプレミス製品を中心に販売してきたパートナーがGreenLakeを提案しやすくなるような制度を構築する「パートナリングの深耕と開拓」、GreenLake PlatformのAPI公開を通じてパートナーによるマネージドサービス提供を容易にする「プラットフォームの解放」、パートナーどうしが情報交換を行う「コミュニティの進化」に取り組むという。