2023年10月31日にMIXIと伊藤忠商事が発表した、業務提携の狙いは何か。MIXIは「Unlim MEMBERSHIP」、伊藤忠は「CiRCuSFan」というスポーツにおけるサービスを展開している。今回は提携することでスポーツコミュニティーサービス市場にどのような影響を及ぼすのか、業務提携の背景を訊いた。
共にスポーツコミュニティーサービスを展開
MIXIが運営する「Unlim MEMBERSHIP」は、アスリートとそのファンが交流することができるクローズドのコミュニティーサービスだ。アスリートのファンだけが集まることができるクローズな空間を作成し、ファンへ近況報告を行ったり、オンラインで交流したりできる。また、月額有料のメンバーシッププランをファンに利用してもらうことで、そのプラン料金を活動資金に充てることも可能になっている。
一方、伊藤忠の「CiRCuSFan」は、アスリートとファンをつなぐファンエンゲージメントプラットフォーム。プロやアマチュア問わず、アスリートは自分のファンクラブをサービス上で立ち上げることが可能。ファンと交流したり、デジタルギフトによる支援を受けたりできる。「Unlim MEMBERSHIP」と同様にクローズドサービスであることも特徴だ。
これからの業界を盛り上げるための提携
それぞれにスポーツコミュニティーサービスを展開する2社だが、どのような経緯で提携に至ったのだろうか。MIXIで「Unlim」のマネージャーを務める武本泰伸氏は、提携の理由について「我々と近しいサービスを提供し、似たビジョンを持つ伊藤忠さんと一緒に事業を進めることにメリットを感じ、業務提携することになった」と話す。
近年、ファンエンゲージメントの市場規模は大きくなってきてはいるものの、アスリートに対してのファンエンゲージメントサービスは「これから」という状況だ。武本氏も「需要はあるものの、同事業における主要なプレーヤーがいない状況」だと感じている。そのため、市場ができあがっていない中で個別に進めるよりも、力を合わせて進む方がアスリート、ファンのためになるのではということで、タッグを組むことになったとのこと。
お互いに得意な分野で支え合う
「Unlim MEMBERSHIP」と「CiRCuSFan」はアスリートの支援ビジネスとしては近しい内容。ライバル同士でうまくタッグが組めるのかのかが気になる点だが、武本氏は「そもそも得意とする事業領域がお互い異なる。ライバルというよりはお互いを補完し合える部分が大きいと考えている」と、今回の提携に大きな可能性を感じている。
例えば、MIXIはSNSからスタートした企業ということもあり、コミュニティーの形成においては確かな知見と実績がある。一方、伊藤忠はインフラ、アパレル、小売りなど、さまざまな分野でのノウハウを持っている総合企業だ。そのため、お互いに得意な分野で支え合うことで、より良いサービスを生み出すことが可能だ。
例えば、「アスリートのファンクラブの特別なグッズを作ってほしい」という声があれば、伊藤忠が持つアパレルブランドを活用する。オフラインイベントを行ないたいのなら、MIXIが提携する英国風パブ「HUB」を利用するなど、提供できるサービスの幅が広がる。「お互いの良いところを掛け合わせて新しい取り組みを提案し、ユーザーを驚かせるようなサービスを生み出したい」と武本氏は抱負を語った。
また、代表的なスポーツコミュニティーサービスを展開する2社の提携は、業界全体への大きな刺激になるだろう。例えば、他の企業が提携や協力を申し出る可能性も考えられる。武本氏は「スポーツコミュニティーサービスを行う中で、この事業には可能性があると手応えを感じている。われわれができることであれば協力したい。スポーツコミュニティーサービスにおいて何かしたいと考えている企業があれば、ぜひお声掛けいただきたい」と話しており、業界全体でスポーツコミュニティーサービスを盛り上げるチャンスだといえる。
ファンエンゲージメントビジネスが盛り上がれば、アスリートも活動しやすくなり、結果的にスポーツ産業の底上げにつながる。今回の提携が日本のスポーツ業界に何をもたらすのか、ファンがもたらす新たなサービス誕生に期待したい。