「Salesforce World Tour Tokyo」開催、新プラットフォームで「AIの信頼性担保」を約束
マーク・ベニオフ氏、6年ぶりの来日で語った「AI革命の次の波」
2023年11月30日 07時00分更新
セールスフォース・ジャパンは2023年11月28日と29日、東京で「Salesforce World Tour Tokyo」を開催した。28日の基調講演には米国本社から共同創業者兼CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏、共同創業者兼CTOのPaker Harris(パーカー・ハリス)氏が登壇して、AIを中心にSalesforceの戦略を語った。
セールスフォース・ジャパンは日本で第2位のソフトウェア企業に成長
Salesforce World Tourは、同社が世界の複数都市で開催する年次イベントだ。今年の東京会場には1万1000人が詰めかけ、オンラインでも8000人が聴講するなど、過去最大規模になった。
6年ぶりに来日したベニオフ氏はまず、Salesforceが創業24周年を迎えたこと、そしてセールスフォース・ジャパンの売上が2000億円を突破し、日本市場で第2位のソフトウェア企業になったことを紹介する。さらに「われわれは日本市場でナンバーワンのAI CRM企業であり、ナンバーワンのエンタープライズアプリ企業だ」と続けた。
Oracleの従業員だったベニオフ氏らが、「Amazonで買い物をするように業務ソフトウェアも簡単に購入、利用できないか」と1999年に創業したSalesforceは、「No Software」というスローガンと共に、クラウドモデルをソフトウェアに持ち込んだ。それだけでなく「1-1-1モデル」(製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を活用してコミュニティに貢献する)という社会貢献モデルも、同社のオリジナルだ。現在では、世界で2万社が1-1-1モデルを取り入れており、Googleもその1社だとベニオフ氏は誇る。
こうして業界に革新を起こしてきたSalesforceが目指すものは何なのか? それは「ナンバーワンのCRM企業になることだ」とベニオフ氏は語る。
CRMにおけるビジョンは、同社のSales Cloud、Service Cloud、Commerce Cloud、さらに買収したSlack、Mule Softなど、すべての技術を活用して顧客をあらゆる角度から理解する「Customer 360」である。このCustomer 360を実現するための技術革新のひとつが「Salesforce Data Cloud」だ。2022年のグローバル年次イベント「Dreamforce」で発表し、日本でも提供を開始した。
AI革命の「次の波」に対応するためのプラットフォームとは
ベニオフ氏は、AIはクラウド、モバイル、ソーシャルメディア、データに続く大きな技術トレンドであり、「時代を超えた最大の技術だ」と語る。
Salesforceでは以前から「Einstein(アインシュタイン)」という名称で製品にAI機能を組み込み、セールス担当に次に取るべきアクションを提案するなどの予測的インテリジェンスを中心に提供してきた。そして現在では、予測AIから生成AIへと機能領域を拡大している。
ベニオフ氏は生成AI技術によって「次のレベルのインテリジェンスが可能になる」と述べ、この技術をプラットフォームに深く統合していく戦略だと語る。これにより、次の波(第3の波)となる自律型エージェント、そしてAGI(汎用人工知能)の時代にもつながると話す。
一方で、AIには課題もある。信頼性だ。「Salesforceの顧客の多くが、AIの安全性を疑問に感じている。信頼性がなければAIを業務に活用できないと感じている」(ベニオフ氏)。
データやアプリ、API、さらにはベンダーも混在する複雑な状況の中で、安全に、信頼性のある形でAIを活用するには――。その課題に応えるべく、Salesforceが9月に開催したDreamForceで新たに発表したのが「Einstein 1 Platform」だ。今回は、まもなく日本語でも利用できるようになることが発表された。
これは信頼性レイヤーの「Einstein Trust Layer」を備えたAIプラットフォームであり、Salesforce Data Cloudとネイティブに連携できる。同社が創業時から実装するメタデータフレームワークを活用し、生産性を改善するだけでなく、ローコード/ノーコードでのカスタマイズも可能だという。