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Salesforce Platform上でテラスカイ、チームスピリット、シナプスイノベーションが各社製品を統合・連携

中堅企業向け統合クラウドERP「ERP Cloud 360」、業務アプリベンダー3社が連携し提供開始

2024年09月30日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 テラスカイ、シナプスイノベーション、チームスピリットの3社が2024年9月26日、中堅企業(従業員100~1000名規模)市場におけるクラウドERPの普及促進を図る一般社団法人「ERP Cloud 360(サンロクマル)コンソーシアム」を設立した。3社が理事会員となり、セールスフォース・ジャパンも特別賛助会員として参画する。

 同日より、各社が持つ業務特化型のSalesforce AppExchangeアプリケーションを連携・統合させて、中堅企業向けのクラウドERPソリューション「ERP Cloud 360」として提供する。コンソーシアムのパートナー会員が、中堅企業向けに同ソリューションの販売や導入、開発、サポートを行う仕組み。

(左から)発表会に出席したシナプスイノベーション 代表取締役 常務の鈴木孝信氏、テラスカイ 取締役 専務執行役員 製品事業ユニット長の山田誠氏、チームスピリット 代表取締役 CEOの道下和良氏

「ERP Cloud 360(サンロクマル)」の概要。Salesforce Platformを通じて3社のアプリを統合・連携させて、中堅企業向けのクラウドERPを提供する

3社の業務アプリを連携・統合、中堅企業向け統合クラウドERPとして提供

 ERP Cloud 360コンソーシアムで理事会員を務める3社は、テラスカイが「mitoco」、シナプスイノベーションが「UM SaaS Cloud」、チームスピリットが「TeamSpirit」と、Salesforce Platform上でそれぞれ業務特化型アプリを開発・提供するSaaSベンダーだ。

 テラスカイの山田誠氏は、日本国内に1万社ほどある中堅企業では、「新たな変化への対応力」「収益の改善」「新規事業の立ち上げ」「人材不足」といった経営課題に直面しており、ここに統合ERPのテクノロジーを提供することで経営基盤の強化を支援していきたいと、今回のコンソーシアムの目的を説明する。

 山田氏は、ERP市場ではこれからオールインワン型(統合型)のクラウドERPによる“全体最適化”のニーズが高まっていく予測の一方で、「オールインワンで提供するクラウド型のERPは、中堅企業向け市場ではまだまだ少ない」ことも指摘する。この“市場の空白”を埋めるかたちでERP Cloud 360を展開していく狙いだ。

クラウドERPの競合比較表(同コンソーシアム調べ)。同一プラットフォームでSalesforce(水色部分)と連携する点も大きな強みのひとつとなる

 今回は、3社のSalesforce AppExchangeアプリおよびSalesforceのSFA/CRMアプリを連携・統合して、中堅企業向けのクラウドERPソリューションとして提供する。具体的には、各社のアプリ間でマスターデータを共通化し、さらにはUIも統一化を図って、ユーザーが単一の統合ERPのようにシームレスに使える環境を提供する。

ERP Cloud 360の全体像。各社の業種特化型アプリを連携・統合させて、同一ブランドのクラウドERPとして展開する

各社の業務アプリは独立しているが、マスターデータを共通化させることでシームレスなERP環境を実現する

 シナプスイノベーションの鈴木孝信氏は、ERP Cloud 360が提供する価値について、マスターデータの共通化のみならず、業務ごとに分断されていた社内の情報を統合できる「クラウド上の単一プラットフォームであること」に加えて、入力画面から外部システムとのAPI連携までをユーザー側でカスタマイズできる「ノーコード開発ができること」、最新の法制度改正への対応や生成AIアシスタント機能なども含む「Salesforce Platformの永続的なイノベーションが享受できること」を挙げた。

これまでは業務アプリごとに“分断”されていた社内の情報を一元化することで、将来的なAI活用にもメリットをもたらすと説明した

 なおERP Cloud 360は、すべての業務機能を一度に導入する形だけでなく、機能ごとに導入していく段階的な導入も可能だ。また、各社がこれまで提供してきた業務アプリ(mitoco、UM SaaS Cloud、TeamSpirit)は、各社ブランドでも引き続き開発、提供される。

 「ERP Cloud 360の各製品は、基本的には各社が開発、提供しているアプリと同じもの。ただしブランドの統一、アプリ間の連携インタフェース構築、マスターデータの共通化、データの一元化などを、このコンソーシアムとして行っている部分が違いとなる」(テラスカイ 山田氏)

Salesforcceが新たに発表した自律型エージェントAI(Agentforce)についても、今後積極的に機能を取り入れていく方針としている

ユーザー企業との窓口になるSI/販売パートナーへの支援も

 上で説明したとおり、ERP Cloud 360は各社の業務特化型アプリをSalesforce Platform上で連携させた統合ERPである。ただしそれだけであれば、あえてコンソーシアム組織を立ち上げる必要はなかったはずだ。

 その点について質問したところ、チームスピリットの道下和良氏は、コンソーシアム形式をとったのは「まさにパートナーを重視していることの表れ」だと説明した。

 「ERP Cloud 360コンソーシアムの目的は『日本の中堅企業が元気になるお手伝いをしたい』ということ。この目的に賛同いただき、クラウドERPの導入を広げていくということを(会員企業の)みんなでやっていこうと考えている。この点が、単なる製品間の連携とは違うところだ」(チームスピリット 道下氏)

 同コンソーシアムのパートナー会員は「プレミアムパートナー」「サービスパートナー」「リファラルパートナー」の3つがあり、ERP Cloud 360はパートナー会員経由でユーザー企業に提供される。コンソーシアムの発足時点では、合計20社がパートナー会員に名を連ねている。

ERP Cloud 360コンソーシアムの組織体制、および発足時点のパートナー会員

 コンソーシアムの活動としても、理事会員3社間での連携活動(技術課題検討、ビジネスルール整備、共同市場調査、マーケティングなど)だけでなく、パートナーへのサポート(学習、営業、その他のサポート)も行うとしている。

 道下氏は、活動開始当初はまず3社がコンソーシアムとしてマーケティング活動などを主導し、将来的に「パートナーが喜んでクラウドERPを売ってくれる」ような環境を作っていきたいと述べた。また3社それぞれでも、自社製品ではなくERP Cloud 360のセールスに主軸を置いて活動する担当者を配置していく方針だとしている。

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