タイトルの通り、来週開催される「AWS re:Invent 2023」に行ってきます。2018年以来5年ぶりになるのだが、コロナ禍もあったので海外自体も実は5年ぶり。先日、改めてパスポートも取り直してきた。50過ぎのIT記者としては情けない限りなのだが、久しぶり過ぎて、けっこう緊張しているので、コラムを書いて落ち着くことにした。
コロナ禍でずっと日本に籠もっていた記者が一念発起
AWS re:Inventは、クラウド市場をリードするAWS(Amazon Web Services)最大の年次イベントになる。毎年、年末に米国のラスベガスで開催され、数多くの新機能・新サービスが発表される。re:Inventと言えば、2019年には約6万5000人の参加者が来場するというIT業界でも屈指の規模を誇るイベントだったが、コロナ禍期間中は当然ながら縮小となった。2020年はオンライン、2021年はハイブリッド、昨年はようやくオフラインメインでのハイブリッドに戻り、今年はいよいよ元に戻っていきそうな予感がある。なお、イベントのイメージについては、2016年に書いた記事がいまだに読まれているので、「かみさん re:Invent」で検索していただきたい。
さて、2018年以降、参加していなかったこのAWS re:inventだが、久しぶりに参加できることになった。実は前回参加の2018年は会期の後半に体調を崩し、最終日はホテルで寝ているだけというふがいなさを発揮してしまった(こちらは「ふがいない re:Invent」で検索)。IT記者のくせに英語が全然得意でないこともあり、体力的にもきつくなってきて、海外出張にすっかり自信がなくなった。こうなると、「みんなDevelopers.IOのレポート読んで満足しているんだから、オレなんて行かなくていいじゃん」と完全にふて腐れモードである。
そして、コロナ禍が訪れ、イベントはすっかりオンライン化。「家にいながら、字幕が出る基調講演観られるし、これで全然いいじゃん」とすっかりこたつ記者になった。さらに残業の多いかみさんの代わりに家事メインにやるようになって、在宅傾向にますます拍車がかかった。昨年からは国内出張にも少しずつ出かけるようになったが、海外は同僚の大塚やライターさんにお任せ。オンライン手続きが可能になったニュースが流れた3月にはとうとうパスポートも切れてしまった。そんな中でのAWS re:Invent招待だったのだ。
一瞬迷ったが、今年は行かせてもらおうと思った。なにしろ今年の夏は一家でコロナウイルスにかかり、なかなか咳が抜けなかった。家に籠もるのは慣れていたが、圧倒的な閉塞感で、このままではホントに死んでしまうかと思った。こんな状況はもう耐えられない。次々と海外に出て行く知り合いをSNSで見ながら、オレもがんばってみるかと言うことで、参加させてもらうことにした。
いよいよあさって渡米なのだが、今年はフライトも自由選択とのことで、ぼっちでの渡米は不安しかない。「なにをおおげさな」と思われるかも知れないが、高価でランチが食べられなかったらどうしよう、チップが足りないと言われたらどうしよう、ホテルの部屋が予約されてなかったらどうしよう、冷房がキツすぎて風邪引いたらどうしよう。英語ペラペラで、旅慣れたライターさんが本当にうらやましい。と言いつつ、出張前のブラックフライデーで旅グッズのショッピングが楽しくてしようがない(笑)。場慣れとはほど遠いドキドキと楽しみで週末を迎えることになりそうだ。
今回のre:Inventは大きく注目すべき理由がある
ということで、ここまではre:Inventに再戦するめちゃくちゃパーソナルな理由を書いてきたが、密かにIT記者としての使命感も持っている。もはや当たり前の存在となったAWSを改めて見直す必要があるのではないかという使命感だ。
「IBM化 AWS」でググれば出てくるコラムでも書いたが、現段階でパブリッククラウドのサービスはけっこう出尽くしており、正直AWSも、Azureも、Google Cloudも似たり寄ったりになっている。ユーザーとしては、昔はAWSしかなかったが、今はいろいろな選択肢があるという状況だ。そのためサービス自体より、施策やアライアンス、事例などに注力されているように見える。
先日、電車内で流れていたGoogle Cloudの広告では、ちょっと前までAWSユーザーだった企業がGoogle Cloudのユーザーとして登場しており、なかなか攻撃的だなあと思った。実際、先日のGoogle Cloudのイベントでは金融でのAzureユーザーの代表格である北國銀行もGoogle Cloudの導入を発表していた。AWSじゃなくとも、AWSのようなことができるようになり、マルチクラウドという選択肢を採用する企業も出てきたという状況になっているのだ。
コロナ禍で多くの企業がクラウドを導入したが、果たして今のユーザーにとって「クラウド=AWS」なのだろうか?というのも素直な疑問だ。エンジニアや情シスからは「クラウド=AWS」なのかもしれないが、たぶん大多数のビジネスパーソンからしてみたら、たぶん目の前で動くTeamsであり、Boxであり、Salesforceなんだと思う。コロナ禍でクラウドはすっかりSaaSとなり、意味するレイヤーがグッと上がってしまったのだ。
スマートキャンプの「SaaS業界レポート」によると、業界向けのバーティカルSaaSを含め、対象となったSaaSの数は国内で1500を超えるという。ここまでSaaSが増え、サービス内容が深まってくると、だいたいの業種・業態でのニーズには応えられてしまう。先日アップした「カレー クラウド」でググれば出てくる記事でも述べたが、ビルダーの道具が揃ったIaaSで一からシステムを構築するよりも、課題にマッチしたSaaSを探す方が目的達成までの道は近い。
その点、AWSはMicrosoftやGoogle Cloudに比べてSaaSが弱い。SaaSを支えるという立場は十分理解するのだが、中途半端な自社サービスはもはや自らの足を引っ張っているような気がしてならない。AWSの発表会以外でAmazon Chimeを使っている会社は見たことないし、鳴り物入りのローコード開発ツールだったAmazon Honeycodeもサービス終了が予告されている。墓場入りの多いGoogle Cloudに比べても、AWSのサービスとしてはけっこう短命だったと言える。こうしたAWSのSaaSとの関わり方は、個人的にも興味オオアリクイだ。
そして、今年はなんといっても「AI」という負けられない戦いがある。年始からの生成AIへのコミットに加え、先日のOpenAIを巡る一連の騒動でまたしてもMicrosoftが存在感を高めているだけに、AWSはどのようにAIに取り組むのかは今回の大きなテーマと言える。データガバナンス、電力消費、AI倫理など、今のAIの課題を考えれば、単純にAIプロセッサーが30%高速化したとか、GPUの価格が安くなった程度では、メッセージとしては全然弱い。量子コンピューティングやブロックチェーンなど、過去に発表したサービスの「その後」も気になる。
このように今年のAWS re:Inventは例年以上に注目度が高いと踏んでいる。クラウド市場を長年独走し続けてきたAWSが今どんなメッセージを放つのか。クラウド業界での絶対的な王者でなくなったまさに今こそ、AWSがなにを考えているのか直接見てくる必要があるはずだ。そして、虫のいい話だが、長らく里帰りしていないJAWS-UGのみんなに自分の感想をフィードバックしてみたいと思う。
大谷イビサ

ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

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