「あきらめるか、進むか」 武内北九州市長が逆転劇を語る
その後、基調講演は「意思決定の最前線」というテーマでスペシャルゲストが次々と登壇する。最初に登壇したのは、ウイングアーク1stと連携協定を結んだ北九州市の武内和久市長だ。
九州最北端の北九州市は人口92万人の都市。武内氏は、モノづくりのまち、アジアにもっとも近いテックシティ、最初で最大のグリーン産業基地として、北九州の産業をもう一度よみがえらせると語る。「人口減少や高齢化の進んだ北九州でそんなことができるのか? でも、私は不可能を可能にする戦いを経験にしてきた。この経験を活かしてチャレンジしていく」と、武内氏は2月の市長選挙で行なった意思決定について語る。
2月の市長選挙では、ほぼすべての政党・団体が対立候補を支持した。1ヶ月前の調査では、トリプルスコアで負けていた。しかし、武内氏は「進む」という意思決定を行ない、「小さいから勝てる」「弱いから勝てる」と信じ、いくつかの戦略を練ったという。
まずは新しい支持者ではなく、支援を決めている人を大切にする戦略を固めた。「普通は外に7、うちに3という力の入れ方。でも、私が徹底的に支持者を大切に、中の人の熱量を上げるようにした」と武内氏は語る。その結果、中の人から情報が集まり、そこから戦略が得られた。そして、今の時代や体制にモヤモヤを抱えている若者たちが集まった。「北九州を立て直すという私の夢と若者の夢がオーバーラップして、大きな渦となり、勝利に結びついた」と武内市長は語る。
武内市長は「九州は今、沸騰しています。シリコンアイランドと呼ばれる半導体産業の進展、年間150万台を組み立てる自動車産業、高い熱量、中央に向けた反骨精神を蘇らせようと、みんな熱くなっています」と語る。八幡製鉄所以来、長らく培ってきた製造業に加え、ウイングアーク1stのようなIT企業まで合わせて、150社以上が集積する北九州。東京よりアジアに近いという地の利を活かしたテックシティにふさわしいという。
北九州市の再起動を掲げた初めての予算では、他の自治体との連携を前提とした「メガリージョン」を掲げる。「自治体の首長同士は仲が悪い。でも、私は当選してすぐに福岡市長に会いに行って、12年ぶりにトップ会談をしてきました。サービス業の福岡市、ものづくりの北九州市と連携し、スタートアップもいっしょにやっていこうとお話した」と武内市長。海を挟んだ下関市、観光資源豊かな大分市とも関係を深め、近隣の自治体がメガリージョンとして連携してという構想だという。
また、過去100年で震度4以上の地震が3回しか起こったことないという地盤の強さを活かしたバックアップ都市構想のほか、半導体や自動車、グリーン産業など未来産業を集積していく。武内市長は、「1750億円を投資産業が洋上風力発電が着工している。900億円をかけた環境産業も日本最大の集積を持っている。はからずとも北九州市で、テクノロジーとグリーンの両翼を持っている。次の日本を切り拓く、そういう北九州市にこれからしていきたい」と抱負を述べる。
最後出てきたのはド派手衣装をまとった武内市長のスライド。北九州市の成人式で有名なド派手衣装だが、ファッションとして評価されつつある。「私はアートだと思っている」と語る武内市長も、ピンチをチャンスに変える、ネガをポジに変える衣装として自らまとっているという。最後、武内氏は北九州のポテンシャルを高い熱量で説明し、「北九州市から再起動の狼煙をあげる」と会場にアピール。「Make Things Happen」をかなえるための仲間を募った。
SDGsを経営の中心に据えるSMFLとウイングアーク1stの共創
続いて登壇したのは、三井住友ファイナンス&リース(SMFL) 常務執行役員/ICT各部・事務各部担当の並木洋一氏。SDGsを会社の中核戦略に取り入れていた意思決定、そしてウイングアーク1stとの共創の取り組みについて説明した。
三井住友フィナンシャルグループと住友商事が出資するSMFLは、リース会社としては国内最大規模。扱う営業資産残高は8.1兆円、取引先は約33.8万社に上る。航空機のリースでは、世界で第2位となっており、保有数は705機におよぶ。また、環境ビジネスにも注力しており、再エネ実績は1563MWになっている。国内リースが3割、不動産とトランスポーテーションが6割を締め、成長領域にシフトしているという。
SMFLは経営理念に「SDGsで未来に選ばれる企業」を謳っており、具体的にはSDGsの8つの領域に注力している。「SDGs経営が会社の戦略そのものであるという認識を持っている。SDGsをど真ん中に置いた経営と覚悟を示しています」と並木氏は語る。なぜSDGsを経営の中心に置くのか? これに対して並木氏は「『社会の困りごとリスト』であるSDGsからは、新しいビジネスを作り出せるから」と答える。そして、別の側面では人材の確保にも役立つという。「最近の新入社員は学生時代にSDGsや社会課題を学んでいるため、高い関心を持っている。SDGsネイティブな彼ら・彼女らにとって、会社がSDGsに真摯に向き合っている姿勢というのは、やりがいにつながる。今の時代、事業に共感しない会社には学生は来ません」と並木氏は指摘する。
具体的な取り組みとして、並木氏は「SDGsリース」を披露する。業界に先駆けて投入したSDGsリースは、リース料の0.1%をSMFLから寄付するというもので、現在700社が導入済みだという。また、クラウドサインを用いた電子契約も進めている。「今までどうしてもなくせなかった契約書の押印・捺印をコロナを契機に一気に電子化した」とのこと。2023年度の目標として、電子契約件数4.2万件を目指している。ユニークな取り組みとしては、SDGsについて学べるコミックマガジンを出している。「コミックSMFL」として6名の著名な漫画家によるSDGsに関する作品が掲載されているという(無料でダウンロード可能)。
ウイングアーク1stとの取り組みについては、帳票の電子化が挙げられる。ウイングアーク1stの「invoice Agent」とSMFLシステムとの連携で、顧客との帳票のやりとりを電子化しており、1万社を超える企業が利用している。今まで印刷していた約55万枚の紙がなくなり、郵送費もなくなり、事務の労力も減ったため、大きなコスト削減が図られたという。
さらにSMFLが考えたのは、「削減されたコストの一部でも社会に還元できないかな?」という。そこで生まれたSMFLとウイングアーク1stとの共同プログラムでは、SMFLは電子化された帳票1枚あたり10円、ウイングアーク1stは1円を寄付に回す。さらにウイングアーク1stは、SMFLとの共同寄付モデルを希望する他のユーザーにも展開する。
最後、並木氏は「そもそもリースという商品はモノの循環利用で貢献してきた。今後はさらに発展させ、日本のサーキュラーエコノミーのメインプレイヤーになりたい」と抱負を述べ、多くの企業に共創を呼びかけた。