連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第108回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 11月4日~11月10日
情シスへの役割期待「変化を感じる」64%、職場の「心の病」10~20代が急増、ほか
2023年11月13日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2023年11月4日~11月10日)は、成長する国内のSASE運用監視サービス市場、日本の労働生産性の改善、情報システム(情シス)部門の人員方針や給与実態、国内企業の従業員エンゲージメント(EX)の取り組み、職場のメンタルヘルスについてのデータを紹介します。
■[セキュリティ]SASE運用監視サービス市場は2022年度37%増、2023年も38%で成長を予想(アイ・ティ・アール、11月7日)
・2022年度のSASE運用監視サービスの売上金額は20.8億円、前年度比37%増
・2023年度は38%増で成長を予想
・CASBやZTNAの導入進むが人手不足、運用監視サービスが成長
国内のSASE運用監視サービス市場規模推移および予測。SASEの概念の浸透と提供ベンダーの増加により、2022年度は前年比37.7%増の20億8000万円を売り上げた。SASEを構成するCASB(Cloud Access Security Broker)、ZTNA(Zero Trust Network Access)などの導入は進んでいるが、人とスキルの不足によって使いこなせない企業も多く、これらを販売/実装するベンダーが運用監視サービスをメニュー化する動きが見られるという。同市場は2023年度も前年度比38.5%増で成長を見込む。2022年~27年のCAGRは19.3%、2070年度には50億円に達する見込み。
■[生産性]2022年度の日本の名目労働生産性は時間あたり5110円、1人あたり836万円(日本生産性本部 、11月7日)
・2022年度、時間当たり名目労働生産性は5110円、1995年以降では最高水準
・実質の生産性上昇率は前年度比0.7%プラス、2年連続で上昇率がプラス成長
・1人当たりの名目労働生産性(就業者1人当たり付加価値額)は836万円
「日本の労働生産性の動向2023」より。2022年度の時間あたり名目労働生産性(就業1時間あたりの付加価値額)は5110円。実質労働生産性の上昇率は+0.7%と2年連続のプラスとなり、経済正常化に伴う付加価値拡大が生産性上昇の最も大きな要因としている。一方で、四半期ベースでは2022年4~6月期が-0.5%、同7~9月期が+0.1%、同10~12月期が+1%、2023年1~3月が+0.3%、同4~6月が-0.3%と、不安定に推移していることも指摘している。2022年度の1人あたりの名目労働生産性(就業者1人当たりの付加価値額)は836万円で、前年度比+1%と2年連続のプラスとなった。
■[情報システム]情シス実態調査、人員は「増やす」が37%、基本給は46%が「増えた」(インターネットイニシアティブ、11月9日)
・情報システム部門の今後の人員は「増加」(28%)、前年から6ポイント増
・基本給が「増えた」は46%、「変わらない」は38%
・年収は「400万~500万円」が最多、「1000万円以上」は12%で前年から1ポイント増
国内企業の情報システム部門の実態調査。8月~9月に調査を実施し、359件の回答を得た。今後1年の人員方針については「増やす」が37.6%。30%を切っていた前年を上回った。「現状維持」は36.49%。課題は「人材(できる人)が足りない」が最多、続いて「人員(人数)不足」などが挙がった。業務内容への満足度は、「非常に満足」「満足」は約45%。待遇面については「満足」は約32%。情シスに求める役割や期待が変化していると「感じる」「非常に感じる」は合計で64%だった。
■[従業員体験]EXの重要性の認知は浸透、だがEXやタレントマネジメントのためのシステムは40%が未導入(IDC Japan、11月9日)
・「人的資本開示に向けて具体的に取り組む」企業は30%以下
・タレントマネジメントなどのシステム導入状況は「未導入」が約40%
・EX関連投資の注力領域、日本は「物理オフィスの再考」が相対的に高い
「2023年 国内従業員エクスペリエンス(EX)動向分析:EXイニシアティブの確立に向けた国内企業の現状調査」より。EXが自社の成長や社外への価値提供に関して正の相関があるという認識は浸透しているが、人的資本開示の取り組み状況を見ると「指標開示にむけ具体的に取り組んでいる」企業の割合は30%以下。さらにタレントマネジメント、EXなどのシステムの導入状況は「未導入」が約40%となった。IDCでは、日本企業の人的資本経営における取り組みは「初期段階」としている。
■[働き方]「心の病」が最も多い年齢層は10~20代に、「心の病が増加傾向」は45%で最多(日本生産性本部 、11月9日)
・「心の病」は10~20代が急増、最も多い世代に
・従業員エンゲージメントが高い企業では、「心の病」の増加傾向という回答比率が10ポイント低い
・ストレスチェック制度の目的は「法制義務化への対応」が84%で最多
2002年から隔年で実施している「メンタルヘルスの取り組み」の11回目となる調査結果。調査期間は7月~9月、約170社が回答した。直近3年間で「心の病」は増加傾向にあり、「増加傾向」「横ばい」はともに45%。中でも「増加傾向」は過去最高だった前回(2021年)の22.9%をさらに上回った。「心の病」が最も多い年齢層としては、「10~20代」が43.9%となり、初めて「30代」(26.8%)を上回る結果に。コロナ禍で入社した若手層が、テレワークなどで対人関係やスキルを積み上げられないまま出社回帰となり、ストレスにつながっているのではと分析している。
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