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駅の環境音を視覚化する「エキマトペ」、デジタルツインによる「災害レジリエンス」をデモ展示

富士通がモビリティショーに出展、社会課題ソリューションをアピール

2023年10月30日 07時30分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 2023年10月26日から11月5日まで、東京ビッグサイトで開催されている「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」(以下、モビリティショー)に、富士通が出展している。単独ブースを設けているわけではないが、「モビリティが変える未来の東京」をコンセプトに掲げたソリューション展示ゾーン「Tokyo Future Tour」において、駅の環境音をAIにより視覚化する「エキマトペ」と、デジタルツインで災害時のシミュレーションを行い最適な施策を検討する「災害レジリエンス」の展示を行っている。

「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」のソリューション展示で紹介されている富士通「エキマトペ」。電車の行き先アナウンスをテキストと手話動画に変換して表示

「デジタルツインによる災害レジリエンス」ソリューション展示では、ゴジラが東京に襲来したという設定でのデモが披露されている

ソリューションで「社会課題解決へ貢献」する姿をアピール

 富士通では、10月17日から20日まで開催されたデジタルイノベーションの総合展示会「CEATEC 2023」への出展を初めて見送り、CEATEC第1回目からの連続出展が途絶えたことで話題を集めていた。その翌週の開催であるモビリティショーには出展し、ソリューション展示を行っていることは注目される。

 現在の富士通は「サービスソリューション事業」を中核に据えており、ビジネスの変化にあわせて自社開催の年次イベントの内容や、出展する外部イベントを見直している。今回のモビリティショー出展については「サステナブルでウェルビーイングな暮らしの実現に向けて、富士通がどのように貢献していくのかを示した。『Fujitsu Uvance』を通じたクロスインダストリーでの取り組みで、社会課題の解決に貢献していく」(同社)としている。

 ツアー形式のソリューション展示「Tokyo Future Tour」は、モビリティショーの主催者である日本自動車工業会(JAMA)のプログラムとして実施されているもので、同エリア内には177社が出展。「東京モーターショー」から「JAPAN MOBILITY SHOW」へとイベント名を変更したことを象徴するように、自動車業界にとどまらずオールインダストリーによって実現するモビリティが生み出す“明るく、楽しく、ワクワクする未来”を表現するコンセプトとなっている。

主催者プログラムの「Tokyo Future Tour」には、業界の枠を超えた177社が出展

エキマトペ:駅ホームの音情報を視覚化、楽しさと安全・安心を提供

 富士通のエキマトペは、Tokyo Future Tourのテーマのひとつ「LIFE & Mobility」エリアで展示されている。

 エキマトペは、AIを使って駅の環境音をリアルタイムに視覚化するソリューション。マンガの吹き出し型にデザインされた55インチの大型ディスプレイに、ホームに流れるアナウンスや電車の発着音といった音情報が、文字や手話、擬音語/擬声語(オノマトペ)などで表現される。聴覚に障がいを持つ人や、その駅を初めて利用する人に快適な体験を提供し、安全・安心な鉄道利用を支援することを目指して開発されている。

 駅やホームではさまざまな重要情報が「音」としてもたらされるが、それを視覚情報に変換することで、聴覚障がい者をはじめとする幅広い人に役立つサービスを提供する。電車の行き先などホームに流れる定型アナウンスは、テキストとともに手話動画(事前収録)でも表示する。また電車の発着音、ドアの開閉音、そのほかの擬音語は、マンガのような表情豊かな手描き文字のアニメーションで表現される。

富士通「エキマトペ」。上野駅での実証実験(後述)では自動販売機の上、およそ2.8メートルの高さに設置された。今回は来場者が見やすいよう、自動販売機の高さを半分にして展示

 同ソリューションは、2021年7月に川崎市立聾(ろう)学校で開催された「未来の通学」をテーマとしたワークショップをきっかけに開発がスタートしたもの。聴覚障がいのある学生の通学を、安心・安全で楽しいものにしたいという発想から生まれている。プロジェクトにはDNPとJR東日本が参加し、聴覚障がいのある当事者も開発に参加している。

 昨年(2022年)6月~12月には、JR上野駅の京浜東北線/山手線ホームに設置して実証実験も行われた。その結果、聴覚障がい者がホームでどんな音が発生しているのかを理解できただけでなく、難聴者や高齢者にとっても周囲の状況がわかりやすくなったり、聞き逃したアナウンスを視覚的に確認できたりといったメリットがあったという。

周辺のさまざまな音情報を、楽しく視覚化して伝える

 富士通では今回の展示について、駅のホームだけでなく、公園や商店街などの街なか、空港やスタジアムへの設置も提案し、どんな貢献ができるのかを模索する狙いがあるという。来場者との意見交換を通じて、社会実装を目指すとしている。

 東京では2025年11月に、聴覚障がい者のためのオリンピックである「デフリンピック」が初めて開催される予定となっている。デフリンピック100周年の記念大会でもあり、多くの関係者が東京を訪れる機会に、エキマトペの実用化につなげる考えだ。

夕焼けチャイムの音も視覚化。街なかなどへの設置拡大を検討していく

災害レジリエンス:デジタルツイン上のリハーサルで最適な避難経路を導く

 もうひとつの「デジタルツインによる災害レジリエンス」は、Tokyo Future Tour内の「EMERGENCY & Mobility」エリアに展示されている。

 このエリア全体が11月3日公開の映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」とタイアップしており、「ゴジラによって破壊された街の復旧に、人とモビリティの協調で取り組む」というストーリー仕立てで未来のレスキューシーンを表現。富士通の展示もストーリーにあわせたものになっている。

(左)「EMERGENCY & Mobility」エリアは、ゴジラによって破壊された街並みを再現 (右)ゴジラの足跡も描かれている。かなり大きい

富士通「デジタルツインによる災害レジリエンス」のモニターデモ展示。今回のイベント用にデザインしたキャラクターがナビゲートする

 同ソリューションは、富士通研究所が開発している「デジタルリハーサル技術」を用いている。この技術は、都市のデジタルツイン上に人や社会のふるまいを再現することで、何らかの施策をとった場合の効果や影響を把握することができるというものだ。デジタルツインで施策の“リハーサル”を行い、最適な施策を探索できる「世界初の技術」(同社)と位置付けている。

 デジタルリハーサル技術は、人や社会がどう動くかを予測するために行動経済学とAIを組み合わせているのが特徴だ。実世界の人の行動に近いモデルをAIで生成し、天候や周辺環境といった条件変化に応じた行動変化も予測できるため、高精度な検証が可能だ。

 2023年4月~6月には、英国のシェラードモビリティサービス会社、Berylの協力のもと、同技術を使ってシェアードeスクーターサービスの運用改善施策を検討するための実証実験を行った。

 導入事例もすでにあり、国内保険会社が大雨発生時の浸水シミュレーションを行ったり、マレーシアの通信会社が洪水発生時の基地局への影響をシミュレーションしたりしている。過去に例のない事象、たとえば地球の温度上昇や大量の降水といったこともシミュレーションが可能であり、それに基づいて災害避難の物資をどこに配置するのが適切かという検討も行えるという。

 またHexagonとの協業では、都市におけるカーボンニュートラルの実現や、安全性向上、運用の最適化に向けて、都市モビリティや交通、物流、スマートシティといった点からのユースケースの構築にも取り組んでいる。

 今回の展示では、ゴジラの上陸によって堤防が破壊され、同時に大雨による洪水が重なるという状況を想定。その被害を予測して可視化するとともに、災害対策の判断を支援するデモンストレーションを見せている。来場者にクイズ形式で最適な避難場所を選ばせ、シミュレーションにより導いた最適な結果との答え合わせができるようになっていた。

ゴジラによって破壊された堤防、そして大雨による洪水のダブルパンチで災害被害が拡大している、というストーリー

徒歩移動できる3つの避難所から、どこに向かうのが最適と考えるかを回答する

シミュレーションの結果、「孤立しないために右上の避難所が最適」という答えが出た

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