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誰も置き去りにしない、ベテラン・若手営業も巻き込んだSalesforce活用の歩み

もうあの頃には戻りたくないー昭和スタイルから脱却したポラスグループの営業改革

2023年10月26日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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初期ユーザーが「定着化の壁」の突破口を開く

 アクション4は、SSM(Success Selling Methodology)の導入だ。購入希望日や希望条件など、トップ営業が必ずヒアリングする「8つの項目」をSSMとして設定、営業手法を標準化した。マネージャーも口頭報告よりも、より具体的にアドバイスできるようになり、営業力の底上げが進んだ。

 アクション5は、現場の活用事例の共有だ。推進チームに所属する営業所長・Accont Engagement担当、さらには初期の活用ユーザーに、自身のSalesforce活用方法を共有してもらう。これにより、参考ユーザーがSalesforceファンに加わり、定着化の突破口となった。こうした活用事例はChatterにまとめて投稿し、いつでも振り返れるようにしているという。

Chatterに活用事例を投稿

再アプローチ可能な顧客の「リサイクルボード」で新入社員が活躍

 アクション6は顧客のリサイクル推進だ。アクション2・3で実施した顧客の仕分けと記録が進んだところで、失注顧客へのアプローチを強化。以前は、アンケートカードのコピーを使用して再アプローチしていたが、過去の商談内容が不透明で、顧客から信用を得られない場面もあったという。

 そこで、追客しないと仕分けた中で、再アプローチ可能な顧客を集めた「リサイクルボード」を新たに公開。「Salesforceは顧客ストックを抱える宝箱になった」と西澤氏は表現する。リサイクルボードの具体的な活用方法について勉強会も実施し、新入社員がこれを駆使して8件の受注を得る。デジタルネイティブな新人は、レポートの作り手としても優秀で、リサイクルボードは、良いサイクルを生み出した。
 

再アプローチ可能な顧客を集めたリサイクルボード

 アクション7は、成功商談事例やSalesforceの活用のコツなどのナレッジを共有する、営業の学校「ソリューションカレッジ【そるカレ】」の開校だ。部門を超えて幅広い知見を学べるように整備し、継続して営業力の標準化を進め、営業手法をブラッシュアップしていきたいという。

イノベーター理論と同様に進んだSalesforceの定着化

 これらの7つのアクションの実施により、新製品が普及する様子を表すマーケティング理論である「イノベーター理論」と同様な形でSalesforceが定着化していったと西澤氏。「最初は強制力、ユーザービリティの向上に心掛け、イノベーターとアーリーアダプターがSalesforce起点で営業活動を始めた。ところがキャズムに阻まれ、定着化が停滞。その後、活用事例の展開によりアーリーマジョリティがSalesforceファンに加わりキャズムを超えると、利便性の向上させる機能の追加をするレイトマジョリティが合流し、振り返ってみたときには風土改革が達成されておりSalesforceがなくてはならないツールになっていた」という。

イノベーター理論と同様に進んだSalesforceの定着

 結果的にSalesforceはコミュニケーションやマネジメントスタイルを変え、ホワイトボードからSalesforce起点の営業活動がスタンダードに、当初の目的だった働き方改革も実現しながら、過去最大業績を達成した。ユーザーアンケートにて、導入1期目ではSalesforceを営業活動に活かせていると回答したのは37%だった状態から、2期目は70%に増え、意識改革も進んでいる。

 定量的な結果としても、導入1期目と2期目を比較して、リサイクル契約棟数は124%、新人契約棟数は128%、成約率も0.9ポイントアップするなど、生産力の向上と営業教育の成果が表れた。今まで取れなかったデータもDXにより可視化でき、「日々の集客数すら分からなった、あの頃には戻りたくない」と西澤氏はいう。

導入1期目と2期目の比較

 西澤氏は、「最初から上手くいったわけではなく、導入当初は現場に受け入れてもらえず、プロジェクトメンバーにも業績に結び付くのか疑問だったと最近になって言われた」という。しかし、イノベーターが現れ、本当に必要な仕組みに進化したことで、行動変異が起こった。「誰も置き去りにしない(No One Left Behid)」というアメリカの海兵隊の信条を引き合いに出し、「アナログの現場の気質をよく知っていたからこそ、心配だった。しかし予想に反し、皆、戸惑いながらもSalesforceと向き合ってくれた」と、これまでの変革を振り返った。

 西澤氏は、「Salesforceは単なるシステムではない。営業改革である。どんなに良いシステムを導入したところで、ユーザーは腹落ちしてくれないと使ってくれない。それを乗り越えるには、どんな不満や意見にも真摯に向き合い、同じ未来を見据え、自分達の力で本当に必要な仕組みをつくるしかない」と締めくくった。

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