知財がカギ スタートアップと大企業の共創事業のポイント
「初めての共創ビジネスに効く、スタートアップ・新規事業担当者向け知財セミナー by IP BASE in大阪」レポート
提供: IP BASE/特許庁
パネルディスカッション「大企業とスタートアップの共創のポイント」
パネルディスカッションでは、瑛彩知的財産事務所の竹本如洋氏、NTTコミュニケーションズ株式会社の木付健太氏と松岡和氏があらためて登壇し、大企業とスタートアップの共創をテーマについて議論した。モデレーターは特許庁の大塚美咲氏が務めた。
Q. 大企業とスタートアップが共創するメリットは?
木付氏は、「大企業側のメリットは、自社にない技術を最大限に共創に生かせること。スタートアップ側のメリットは、大企業のアセットを活用できること。特に、NTTコミュニケーションズは法人営業に特化しているので、一緒にサービスを作ったあとの展開もメリットを感じていただけると思っています」と述べた。
松岡氏は、「弊社単独で考えるアイデアには限界があると思っているので、スタートアップの先鋭的な技術やアイデアと組み合わせて知財化することで、我々にとってもスタートアップにとってもメリットになると思います」と知財面での双方の利点を挙げた。
竹本氏は、「スタートアップ側のメリットのひとつはファンディング。大企業から開発費用などの出資を受けられ、持っている技術を世に出せる機会が増えます。もうひとつは知名度の向上。スタートアップが大きな企業と組んで技術を開発したり実証実験などを行ったりすることで、世の中の目につく機会が増え、投資やほかの協業が進むといったメリットが考えられます」と説明した。
Q. 共創のメリットを最大化するための大企業とスタートアップのあるべき関係とは?
木付氏は、「受発注の関係ではなく、お互いに寄り添いながら、双方が持つものを最大限に出し合いながら歩んでいくことが大事。大企業側から指示して、スタートアップ側に作ってもらう形になりがちですが、最初に、どのようなものを一緒に作っていきたいのかゴールをすり合わせた上で、お互いのリソースを出し合いながら進めていくことが重要です」と、「ExTorch」での経験も踏まえて語った。
松岡氏は、「マインドの面が大事だと思います。大企業側の担当者は気が大きくなりやすいので、そこは改めるべき。他方で、スタートアップは先鋭的な技術だけで事業ができるわけでなく、営業力などさまざまなアセットも活用してはじめてビジネスになる。お互いにWin-Winになる知財の条件があるはずなので、しっかりとコミュニケーションをとり、契約に落とし込むことでお互いにメリットのあるビジネスにつなげられるのでは」とコミュニケーションと契約の重要性について述べた。
スタートアップ側から相談を受けることが多いという竹本氏も「お互いが権利を主張しすぎるとうまくいきません。最終的に世の中にモノを生み出すことをゴールとするならば、大企業がすべての権利を吸い上げるのはもちろんよくありませんが、スタートアップも権利を主張しすぎるのはよくないでしょう。お互いが歩み寄ることが大事だとアドバイスしています」と同意した。
Q. スタートアップに好まれる大企業になるためには? 大企業が協業したいスタートアップとは?
木付氏は、「大企業側が意識すべきことはスピード感。PoC(概念実証)などを行う際の予算ひとつにしても、大企業ではけっこうな時間がかかります。既存の業務フローは変えづらい場合もあるので、『ExTorch』ではPoCの予算を事務局が支援して、決裁のフローをなるべく簡略化するといったお手伝いをしています」とスピード感を上げるための取り組みを紹介した。また、どのようなスタートアップと協業したいかについては、「NTTグループのこのアセットを活用してこんなことをやりたい、という具体的なアイデアがあると組みやすい」と話した。
松岡氏は、「まずは大企業として知財支援の活動は大事だと思っています。次にマインド。いかにフラットな関係性を築くかが大事。スタートアップが共創したい企業のランキングでも、知財支援の活動に力を入れている企業が上位に来ています。知財支援の活動によってスタートアップが集まり、そこからどんどんイノベーションが生まれ、さらに企業価値を高めているように思います。こうした活動を我々も参考にさせていただいています」と述べた。
竹本氏は、「大企業はスピード感が大事ですね。逆に、スタートアップは技術は持っているが具体的な製品やソリューションなどアウトプットのイメージがないケースが多い。大企業は製品としてモノを出すという力がすごくあるので、スタートアップは最終的に世に出るまでを大企業と全力で並走することで企業価値を高めてほしい」と語った。
Q.今後共創を進める大企業やスタートアップへのアドバイス
木付氏は、「こうした場に大企業もスタートアップもどんどん参加して、つながりを持つことも重要かと思います。私たちもこのようなリアルなイベントに出て、スタートアップのみなさまとお話ししながらつながりを持つことを続けていきたいと思っています」と述べた。
松岡氏は、「スタートアップのみなさまには自社の強みや差別化になる要素について、しっかり知財を獲得して競争優位を確立していただければと思います。それを世の中にアピールして資金調達などにつなげていただきたい」とあらためて今回のポイントを踏まえて語った。
竹本氏は、「政府もスタートアップ推進政策を打ち出していますから、今まで以上に資金調達をしやすく、助成金も受けやすくなっていくだろうと思います。そうして今後ユニコーンが100社、1000社と生まれていくように動いていってほしい。国内だけでなくグローバルでのビジネスチャンスも広がっています。大企業もスタートアップと組むことでより大きく成長し、日本全体が発展していってもらえれば」と期待を語り、パネルディスカッションを締めくくった。