生成AIがGoogle Workspaceからアプリ開発/運用、BigQuery、AlloyDBまで幅広く支援
Google「Duet AI」がアプリ開発や分析も支援、「AIを使う」発表まとめ
Google Cloudが8月末に米国で開催した年次イベント「Google Next 2023」を開催した。初日基調講演では、「AIを作る」「AIを使う」「AIエコシステム」という3つの柱で、Google CloudのAI戦略を説明した。レポート3回目となる本稿では「AIを使う」領域の新発表にスポットを当てる。
Duet AIによる生成AIの支援機能が幅広いサービスに追加される
Google Cloud CEOのトーマス・クリアン氏は、「Vertex AI(前回記事)はわれわれのAIインフラとプラットフォームを使ってAIの構築を支援するもの、Duet AIはさまざまなタスクを生成AIが支援するもの」と整理する。これにより、生成AI時代に向けたGoogleの取り組みが2つのブランドに集約され、わかりやすくなったと言える。
本稿のテーマ「AIを使う」の中核をなすDuet AIは、Googleが5月に開催した「Google I/O」で発表された、生成AIによる支援機能だ。「Google検索は、すべてのユーザーにシンプルな検索ボックスを提供することでインターネットの複雑性を簡素化した。これと同じように、Duet AIでは統合されたチャット体験を提供することで、高度な生成AIモデルを簡素化する」(クリアン氏)。
Google Workspace:Web会議やチャットのサマライズ、自動翻訳など
今回のイベントでは「Duet AI in Google Workspace」の英語版が一般提供開始(GA)となり、現在プレビューリリースの「Duet AI in Google Cloud」も機能を拡大している(2023年中にGAの予定)。
Duet AI in Google Workspaceを紹介した同社VPのアパルナ・パップ(Aparna Pappu)氏は、Google Workspaceにはこの1年間で300以上の新機能が加わり、有料版ユーザーは1000万人を超えること、そして「Duet AIの利用者はすでに100万人を超えている」と紹介した。
イベントでは、Duet AIを使ったGoogle Meetの支援機能として、リアルタイムでのメモやミーティングのサマリ作成などが疲労された。自動翻訳キャプションも18言語をサポートしている。またGoogle Chatでは、Duet AIを使って直接コンテンツについて質問したり、ドキュメントのサマリを作成したり、見逃した会話のサマリを作成できるという。
Duet AI in Google Workspaceの価格は1ユーザー月額30ドルとなる。パップ氏は、「Duet AIでは、企業のデータは企業自身が所有する。そのデータを使ってGoogleのモデルをトレーニングすることはない。厳格なパーミッションコントロールにより、ユーザー、部門、企業の間でデータが漏洩することもない」と約束した。
Google Cloud:アプリ開発、分析、データベース、セキュリティを生成AIが支援
Duet AI in Google Cloudでは、開発と運用、アナリティクス、データベース、セキュリティの4分野で、Duet AIがソフトウェア開発ライフサイクルを支援する。
開発と運用では、コード生成、ソース引用、テスト、APIパブリッシュなどでDuet AIが利用できるが、全体の特徴としては「Google Cloud固有のコンテンツでトレーニングされていることから、コンテキストを認識したアシスタントが可能」であることだという。Googleの提供するSDKやコードベースを理解しているため、トレーニング時間などのリソースを節約しつつ品質を維持できると説明する。
アナリティクス分野では「Duet AI in BigQuery」を紹介した。データ分析を行う際に必要となるSQLクエリやPythonコードの作成を、Duet AIが支援してくれる。同様に、Duet AIがLookerの利用を支援する「Duet AI in Looker」も提供する。また、自社のデータで生成AIの利用が高速かつ容易になるよう、Vertex AIの基盤モデルをBigQueryにあるデータに統合する機能も発表している。
これらを盛り込んだのが最新の「BigQuery Studio」(プレビュー)となり、データアナリティクスとサーバーレス・ノートブックを統合したインターフェイスで利用できると言う。「データエンジニアリング、機械学習、アナリティクスの各作業をシームレスに行うことができる」と説明した。
データベース分野では、PostgreSQL互換の高速データベース「AlloyDB」にAIを組み合わせる「AlloyDB AI」が、プレビューリリースとして発表された。これは、AlloyDB上のデータを利用するAIを開発できるサービスで、「標準的なPostgreSQLと比較してpgvector互換の検索を10倍高速に行うことができ、データベース内でEmbeddingを容易に生成できる」と説明している。
マンディアントCEOも登壇、セキュリティ強化をさらに推進
基調講演ではセキュリティ対策の重要性と、Google Cloudの最新セキュリティについても強調した。ここでは、2022年に買収したMandiantのCEO、ケビン・マンディア(Kevin Mandia)氏が登場し、Google Cloudとの統合により、フロントラインのインテリジェンスと専門知識、モダンなセキュリティオペレーションプラットフォーム、セキュアなクラウドプラットフォームの3つをもたらすとした。
「攻撃は増加しており、われわれが調査した件数は前年比35%で増えている。DXでセキュリティは重要な部分を占めている」(マンディア氏)。
イベントでは、セキュリティオペレーションで、セキュリティチームが脅威の検出、調査、レスポンスを行うセキュリティオペレーションプラットフォーム「Chonicle」に、政府のサイバー防衛を支援する「Chronicle CyberShield」を加えることが発表された(GA)。また、Mandiantの専門家が脅威ハンティングを行うマネージドサービス「Mandiant Hunt for Chronicle」もプレビューとして発表した。「数千人ものセキュリティ専門家を自社のチームに補強できる」(マンディア氏)。
クリアン氏は、「将来のサイバーセキュリティは、最高レベルの脅威インテリジェンスと新しい脅威の理解にAIモデルを組み合わせて、保護とレスポンスをする」と述べ、Mandiantの統合によりこれを実現していく方向性を示した。
AIの3つめの柱「AIエコシステム」については、基盤モデルのプロバイダ、SaaS/アプリケーション、インフラ/プラットフォーム、システムインテグレーター/コンサルティング企業など、世界10万社以上のパートナーと提携していることを強調した。
その1社として紹介されたのがWorkdayだ。Workdayは2011年からGoogle Workspaceを採用、また2012年にはGoogleがWorkdayのHR/HCM SaaSを採用するなど相互の提携関係にある。そして今年、WorkdayのFinancialとHRのSaaSがGoogle Cloud上で稼働を開始した。ステージに立ったWorkday 共同創業者兼共同CEOのアニール・ブースリ(Aneel Bhusri)氏は、「Googleの生成AI機能を、ジョブディスクリプションの強化などに役立てている」と述べた。
最後にクリアン氏はイベントのテーマである「new way to cloud」を使って、「一緒にクラウドへの新しい道を作っていこう」と呼びかけた。