「Google Cloud Next 2023」レポート

LLM「PaLM 2」やコード生成/補完モデル「Codey」、画像生成モデルの「Imagen」ほか

「Vertex AI」の生成AI向け機能を強化、「AIを作る」発表まとめ

文●末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 Google Cloudが2023年8月末に開催した年次イベント「Google Cloud Next 2023」。前回記事で触れたとおり、初日基調講演では、「AIを作る」「AIを使う」「AIエコシステム」という3つの柱でGoogle CloudのAI戦略を進めることが明かされた。

 前回に引き続き今回も「AIを作る」、特に「Vertex AI」と生成AIに関連する新サービスや新機能についての発表をまとめる。

Google Cloud CEOのトーマス・クリアン(Thomas Kurian)氏

「生成AIモデル向けの構築ツール」としてのVertex AIを強化

 「AIを作る」の中心となるGoogle Cloudのサービスは「Vertex AI」。2021年の「Google I/O」で一般提供開始(GA)となった、マネージド型の機械学習プラットフォームだ。

 今年3月にはVertex AIでの生成AIサポートを発表しており、今回のGoogle Cloud Nextでは「生成AIモデル向けの構築ツール」という側面を強調した。Google CloudのCEO、トーマス・クリアン氏は「開発者はVertex AIの生成AIモデルやエンタープライズサーチ、会話などの新しいサービスを使って、AIモデルの発見、トレーニング、チューニング、テスト、評価、管理、実装ができる」と説明する。

 クリアン氏によると、すでにBox、DocuSign、Estée Lauder、Vodafoneなどの企業が、Vertex AIを利用して生成AIのプロジェクトを進めているという。たとえばEstée Lauderでは、ソーシャルメディアとレビューのデータを活用したセンチメント分析(感情分析)を行うことで、コンシューマーグループが持つ懸念などの理解を深めているという。

 会期中、Vertex AIではLLM(大規模言語モデル)「PaLM 2」のアップグレード(GA)を発表した。アップグレードにより、インプットのトークンの長さが4倍になり、38の新しい言語もサポートした。論文や法的な文書など、長いドキュメントの処理も容易になったという。

 またプログラムコード生成/補完モデルの「Codey」では、コード生成とチャットの品質が25%改善するという。画像生成モデルの「Imagen」もアップデートし、生成イメージの品質を改善した。

Imagenでは「Style Tuning」として、ブランドイメージに合わせたイメージを生成できる機能も加わった。

画像にデジタルウォーターマーク(電子透かし)を追加。Google CEOのスンダー・ピチャイ氏は「Google Cloudは、生成した画像にデジタルウォーターマークを付与できる最初のクラウドプロバイダー」だと述べた。

 そのほか、業界特化型のモデルとしてサイバーセキュリティ向けの「Sec-PaLM」、ヘルスケア向けの「Med-PaLM」も発表されている。

 合わせて、Anthropicの「Claude 2」、Metaの「Llama 2」、Technology Innovation Institute(TII)の「Falcon」といったLLM群も新たにサポートすることを発表した。これらを含め、Vertex AIではパートナーやオープンソースのモデルを100以上提供するという。

VertexAIのライブラリ「Model Garden」では100以上のLLMを利用できる

 顧客データの安全性についてクリアン氏は、Vertex AIを使って自社のドキュメント、SaaSにあるデータ、プロプライエタリデータでトレーニングやファインチューニングを行った場合でも、そのデータが汎用の基盤モデルに取り込まれることはないと説明する。「データ、コード、知的所有権を分離してコントロールできる。データの漏洩はゼロだ」と強調した。

 検索/会話機能を提供する「Vertex AI Search and Conversation」(GA)では、検索結果に対して追加の質問ができる「Multi-turn Search(マルチターン検索)」、複数のリポジトリやアプリケーションからさまざまなフォーマットでサマリを作成できる機能などが加わった。

 ベクトル検索を用いるグラウンディング(Grounding)も新しくなり、自社データとカスタムモデル、検索、会話を組み合わせることで、より精度の高い回答を得ることができると言う。基盤モデルの学習データで補完するかどうかを決定でき、ハルシネーションを削減できると言う。

 Google Cloudはすでに、製品や顧客情報などのデータを自社データベースからエクスポートするための「Vertex AI Embeddings」を発表している。

 また、プロプライエタリデータ、MongoDB、Redisなどのサードパーティのデータとモデルを接続するエクステンション開発ツール「Vertex AI Extensions」も発表した。モデルをAPIに接続し、リアルタイムのデータを得ることができる。Google CloudのデータやBigQuery、さらにはConfluent、Salesforceなどのサードパーティのアプリケーションとのコネクタ「Vertex AI Data Connectors」も紹介した。

■関連サイト

過去記事アーカイブ

2024年
04月
2023年
01月
02月
03月
05月
06月
07月
09月
12月
2022年
03月
04月
05月
06月
07月
08月
12月
2021年
02月
04月
05月
06月
08月
09月
10月
11月
2020年
05月
06月
2019年
04月
11月
2018年
07月
09月
10月
2017年
06月
2014年
07月