「投資額を増やしてもいい」デジタルヘルスが多数。ヘルスケア領域スタートアップがピッチを繰り広げた HVC KYOTO 2023
「HVC KYOTO 2023」レポート
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日本最大級のヘルスケア分野特化型ピッチイベント「HVC KYOTO 2023」が、2023年7月6日から7日にかけて京都リサーチパーク(KRP)で開催された。
本イベントでは、世界を舞台にヘルスケア分野で活躍するスタートアップを輩出するために、海外展開を目指すヘルスケア領域のスタートアップや起業志向の高い研究者を採択し、全編英語によるピッチを行う。日本貿易振興機構(JETRO)、京都府、京都市、京都リサーチパーク株式会社が主催し、国内外の大学やVC、インキュベータらとも連携している。
開催から8年目を迎えた今年は、「Biotech(バイオテック)」と「Medtech(メドテック)」の2部門から合計22件が採択され、7月7日に開催されたデモデイではピッチイベントに両部門から7者ずつ、計14者がファイナリストとして登壇した。ここではその模様について企業賞を受賞したスタートアップの3者を中心に紹介する。
スマートフォンに接続できる眼底カメラなどが企業賞を受賞
「HVC Kyoto」は2016年に開催され、今回を含めると類型162件のピッチが行われている。ピッチイベントだけでなく、事業アドバイスやビジネスコラボレーション、ネットワーキング、新しい知識を得る機会を提供している。創薬をはじめ医療機器、再生医療、デジタルヘルス、ヘルスケアなどで取り組むさまざまなスタートアップや研究者が採択されており、採択スタートアップのピッチ登壇後の累計資金調達額は約300億円にのぼるという。
今年も創薬やバイオ、再生医療などの事業を対象にする「バイオテック部門」で7件、デジタルヘルスや医療機器などの事業を対象とした「メドテック部門」で15件の計22件が採択された。プログラムでは各部門の専門家をアドバイザーに迎えたメンタリングや、アドバイザー・パートナーとして参画するグローバル製薬企業などによる個別商談も行われ、ピッチイベントに登壇した14者の中から3者が企業賞に選ばれている。
JETRO賞:広島大学病院[メドテック部門]
JETRO賞を獲得したのは、既存製品と比べて安価に失明リスクを早期発見するスマートフォン接続眼底カメラを開発している広島大学病院。診断だけでなく眼科医による診断と治療を行うシステムも提供しており、将来的には自宅で患者自身が撮影するなど手軽に使えるようにすることで、世界で10億人といわれる視覚障害予備群を救う狙いをもつ。2023年に最初の治験をスタートし、その結果をもとに医療機器申請を行う計画だ。
ビジネスモデルはデバイスの販売とあわせて、診断と治療を行う病院からの広告収入を計画しており、眼底疾患の未検出患者数が最も多い国のひとつであるインドネシアで実用化を進めた後に日本で展開する。現時点ではまだプロトタイプということで、財政的な支援と共同開発パートナーを探しており、審査員からは製品化に関する質問や具体的なアドバイスなどがあった。
KRP賞:モルミル株式会社[バイオテック部門]
KRP賞は奈良県立医科大学、産業技術総合研究所、徳島大学認定ベンチャーのモルミル。同社は分子に着目し、抗体医薬、タンパク質間相互作用創薬に続くといわれる相分離創薬による、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの難病の治療法を開発している。AIがアシストする科学分析からタンパク質の反応を識別できる「CHEmir」と、NMR(核磁気共鳴法)をベースにしたタンパク質の構造を原子レベルで解析できる「MAGmir」という2つのコアテクノロジーがあり、それらを組み合わせた新しい創薬基盤技術の提供を目指す。
ビジネスとしては製薬の前に科学技術の人材プラットフォームを目指しており、新しい治療アプローチ方法やバイオテクノロジー企業との協業を求めている。審査員からは技術力の高さが称賛される一方で、ビジネスの方向性をより具体的にするようアドバイスがあった。
KSII賞:株式会社ノベルジェン[バイオテック部門]
KSII賞は、手術で使用できる医療用のバイオ接着剤を開発しているノベルジェンが受賞。医療用接着剤は二次感染のリスクが少なく、縫合よりも組織の損傷が少ないという特徴がある一方で、強度が弱い課題もあるという。同社が開発する接着剤は、既存製品の16倍の接着力があり、安全性が高いことから書面による手術での使用同意を不要にする。プロトタイプによるいくつかのバイオロジカルテストを終了しており、刺激性や感染症、細胞毒性試験もクリアし、製造特許、機能特許を出願中だ。
GLP(Good Laboratory Practice:優良試験所基準)での製造を検討しており、医学部と新しい治療法の開発も進めている。外科手術では難しい手術も可能になり、口腔内でも使用できるようになるためマーケットは大きいが、価格が高いためハイクラス市場から開拓を進める。美容産業などへの拡大も目指しており、製造ラインを確立するメーカーなどのパートナーシップを求めている。審査員からは技術力の高さと明確なビジネスモデルが評価されていた。
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