業務を変えるkintoneユーザー事例 第193回
社会福祉法人の職員が実践したkintone普及までの二人三脚
自己満アプリは使ってもらえない 現場といっしょに作って業務効率化
2023年08月18日 09時00分更新
2023年6月7日、kintone hive nagoya vol.7が開催された。会場はZepp名古屋で、参加者は約500人と2階席まで埋まる活況ぶりだった。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出する。
今回は4番手、社会福祉法人ゆめネットのプレゼン「ITと福祉職員の歩み…」のレポートを紹介する。登壇は山川貢広氏と上原直人氏のお二人だ。
アプリ作れど、現場からの反応は厳しく ストレスで全身にじんましん
社会福祉事法人ゆめネットは、障害福祉サービスを提供する団体で、主に自閉症と呼ばれる方々が通所している事業所を運営している。理念として「幸せの創造」を掲げ、ひとりでも多くの、「いい人生だった…」に貢献するというミッションを持っている。名古屋市やあま市、岡崎市など18拠点に展開し、従業員数は150人となる。
kintoneの導入前は、利用者の情報が紙やエクセル、そしてベテランスタッフの頭の中で管理されていたそう。困ったことがあれば、ベテランスタッフに電話して聞くしかない状態だった。
「この状況を打破するために、たくさんのITツールを使っていたのですが、福祉業界にはITが得意という方はあまりいません。何かあった時にトラブル対応できないという状況が続いていました」と山川氏。
そこでkintoneを導入したが、すぐにはうまくいかなかったという。まずは、別のソフトで作っていた日報をkintoneアプリ化し、そのうえでワンクリックで請求を飛ばせるように効率化した。これまでは、月初に1日ずつクリックして打ち込んでいた情報を、kintoneアプリでまとめて移行できるようになったのでバックオフィス業務が改善されたのだ。
「みんなからいい反応があったので、自己満足期に突入してしまいました」(山川氏)
山川氏は勢いに乗って次々とアプリを作ったのだが、反応は好ましいものではなかった。
よかれと思って、見栄えにもこだわって作ったアプリだったが、現場からは「なぜやるのか?」「現状のままでもよくない?」「別にExcelでよくない?」「急いで新しいことやらなきゃだめなの?」といった声が寄せられたのだ。この時期、プレッシャーからのストレスで全身にじんましんができてしまうほどだったそう。kintoneの良さを現場に伝えきれていなかったのが原因だと言う。
「作り手の思いと使ってもらう方々のギャップが埋められないと感じました。しかも、それほどkintoneを使いこなせていなかったので、いざというときに対応できないということもありました。そんな時、転機が訪れました。部署異動があり、僕のパートナーがエヴァンジェリスト上原さんに変わりました」(山川氏)
異動してきたエバンジェリストがやった4つのこと
異動してきた上原氏は4つのことを行なった。一つ目が、活動方針と目的を明確にすること。現場がkintoneを触って、身近に感じてもらうため、山川氏と上原氏は脇役となり、現場を主役としたのだ。そのために、全部署にヒアリングを実施することにした。その時の山川氏は現場はITに対して苦手意識を持っている人が多いので、ヒアリングしても意見を引き出せるかどうか懐疑的だったという。
二つ目は、現場スタッフの声を聞き、一緒にアプリを作るために、全拠点すべてに足を運ぶこと。これも山川氏は18もの拠点に行けるわけがない、と考えていた。
三つ目が、現場に出向いて対面で聞いた要望をアプリに反映し、画面を直接見せること。実際にアプリを作るところを見せられれば、kintoneを身近に感じてもらえるからだ。とは言え、山川氏は要望に対応したアプリを1~2時間で作るなんてできるのか?と不安を抱えていた。
そして四つ目が、要望に対してネガティブな言葉を言わないこと。無理難題に対しても「目指します!」と前向きに返答したのだ。この四つのチャレンジを実践することで、状況が好転していった。
「(現場の人たちには)ITは何でもできると思われているので、「できない」と言ってしまうと、困り事が出てこなくなります。無理難題を言われた時は「目指しますね」とお伝えするようにしました。すると、現場の声が変わりました。(アプリを使ってもらった)現場から「保護者の皆様に説明しやすくなったよ」と言っていただけるなど、成果が表れはじめたのです」(上原氏)
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