2023年7月20日、LINE WORKSを展開するワークスモバイルジャパンはfreeeとの協業を発表。「freee勤怠管理Plus」と連携することで、LINE WORKS上で打刻から承認まで可能になる。LINE WORKSでワンストップで勤怠管理できる環境を実現し、業界的に勤怠管理が難しかった医療、建設、運輸などの分野で、人事・労務の負荷軽減を目指す。
freee勤怠管理Plusへの打刻や修正がLINE WORKSから可能に
今回の協業では、freeeが提供する勤怠管理サービスである「freee勤怠管理Plus」が、ビジネスチャットLINE WORKSのアプリ連携プラットフォーム「アプリディレクトリ」上で利用可能になる。これによりLINE WORKS上で打刻から承認まで行なえる「チャットで勤怠(freee勤怠管理)」が実現。勤怠管理ソフトや複数アプリを立ち上げなくとも、スマホやタブレットで打刻や修正が可能になるため、営業先や現場での直行直帰時の勤怠管理でも、打刻漏れが少なくなるという。
具体的には本日からチャット画面からワンタッチで「出勤」「退勤」の打刻ができる「リッチメニュー打刻」のほか、打刻漏れや二重打刻などの不備を30日分さかのぼって通知する「打刻エラー通知」、打刻不備を修正するためのログイン導線をLINE WORKSのリンクとして設置する「申請リンク」などが提供される。
時間外労働の上限規制が課される医療・建設・運輸業界で利用促進
今回、両社がこうした連携を進めるようになった背景は、現場で働く人たちの労務管理が大きな課題になっている点が挙げられる。ワークスモバイルジャパンの荒井琢氏は、LINE WORKSの導入が進む建設、運輸、介護などの労務管理の実態について説明した。
特に建設業の残業時間は全産業でもトップクラスで、所定外労働時間が45時間以上に上る人が半数以上に上る。深刻なのは残業や時間外労働がカウントされていない点。同社の調査によると「残業時間がきちんと数えられていないという方が4割もいる」(荒井氏)という。現場ではアナログなコミュニケーションがまだまだ多く、写真の整理や報告書、日報の作成、協力会社との作業調整にも多くの時間を費やしている。こうして残業時間が45時間以上を超えると、転職・離職の意向も10%上昇し、さらに人手不足に陥る悪循環だ。
また、2023年4月からは時間外労働での賃金の割り増しが引き上げとなり、2024年4月からは今まで猶予されていた医療・建設・運輸業界でも、時間外労働の上限規制が適用される。当然、人手不足や業務効率化への対応が急務となり、これまで以上の労務管理の徹底が必要になる。しかし、前述した医療、建設、運輸の業界は、業界特有の働き方があり、今まで勤怠管理が整っておらず、導入を図っても定着が難しいという課題があった。
また、中小企業では労務専任は少なく、別の業務との兼務が多い。freeeで人事労務領域のサービス開発を手がけている長澤拓馬氏は、「労務業務を回すだけで手一杯。法改正に対応したルール作りや従業員の説明、運用、定着の過程で挫折してしまう」と指摘する。当然ながら、働き方改革においては労務管理者の負担増が見込まれる。実際、freeeの調べによると労務管理に感じる負荷の1位は「勤怠管理」だ。打刻漏れをしてしまう従業員も86%に上り、自ら打刻修正する従業員は27%にとどまっている。
この原因の1つが従業員が使うツールが分散していること。長澤氏は、「freee勤怠管理Plusを入れても、打刻は専門のアプリ、通知はメール、打刻漏れは電話、システムを開いて申請を挙げる。使うツールがバラバラで、システムでの勤怠管理に慣れないという」と指摘する。これに対して、まずはツールをまとめるのが今回の協業の目的。LINE WORKSを介して日々の勤怠管理を実現することで、従業員に対しては統合的な体験を提供する。設定も管理者のみで、従業員側の作業も不要になるという。
実際にfreeeがユーザー企業と1ヶ月に渡って行なった検証では、LINE WORKSで毎日通知することで、打刻漏れが9割減少し、労務担当者の業務の効率化につながることがわかったという。
freeeは今回の連携を機にLINE WORKSの販売を手がけるほか、人事労務freeeとの連携も予定している。今後も機能強化が予定されている。7~8月下旬までをめどに、出勤・退勤予定時間前のリマインド、月間で決められた残業時刻の超過、有休取得、申請の承認や結果などの通知も可能になるという。