業務を変えるkintoneユーザー事例 第190回
伴奏者がくれた「理想と現実の間をkintoneで埋める」のフレーズ
kintoneを家具職人に使ってもらいたい! 新入社員の熱意とアプリが現場を変えた
2023年07月27日 11時00分更新
大阪で開催されたkintoneのユーザー事例イベント「kintone hive osaka 2023」の5組目は、有限会社アートワークスの宗政伊織氏が登壇。小さな家具工房の新入社員が、kintoneによる業務改革に奮闘した日々の記録を披露した。
「スーパーアナログ仕事」の職場をkintoneで変えたい
同社は神戸市三宮の近くにある家具工房で、店舗向けを中心にオーダーメイド家具を製作している。技術には定評があり、G7広島サミットの会議で使われた大きなテーブルも、同社の製作物だったという。
宗政氏は建築系高専を卒業後、2022年4月に新卒で同社に入社。現在2年目の21歳である。同社のことを紹介する「工房ブログ」も担当している。
社員数は7名。うち5名は職人で、宗政氏が所属する営業設計部は、先輩と2名の体制で依頼主との打ち合わせから図面の作成までを行なう。できた図面を職人に依頼して実際に木材を加工し、組み立てて納品する。
宗政氏は、同社の従来の仕事のスタイルを「SUPERアナログ会社」だったと話す。案件はすべて紙のメモに書いて管理。それを職人と共有するために、ホワイトボードにマグネットで貼り付けていた。貼り出されるまで、職人は何が動いているのかがわからず、準備もできなかった。職人にとってこれはストレスだったのではないかと宗政氏は話す。
案件の属人化も問題だった。ホワイトボードに貼り出される前の案件は、営業設計部員が管理するファイルの中に綴じられていた。「わざわざ他人のファイルは見ないので、職人だけでなく、営業設計の2人の間でも、どういう案件が進んでいるのか情報共有ができていなかった」(宗政氏)
そんなアナログスタイルを変えたかった同社の社長は、地域のDX人材育成研修でkintoneに出会う。ちょうどそのタイミングで同社に内定していた宗政氏は、入社前の2021年10月から、kintoneの研修を受けることになった。
kintone研修のモチベーションは「お菓子」
宗政氏は、入社後の試用期間から本採用になってからも、毎月1回のkintone研修を受け続けた。研修メンバーは、社長と宗政氏、その先輩、そして講師である外部の伴走者の4名で、基礎からアプリの作り方を学んだ。宗政氏は、「研修のときに、伴走者が毎回、大量のお菓子を持ってきてくれたのが楽しみだった」と笑って話す。
研修の時間でアプリの基本的な部分を作り、それを現場で使ってみて改善点を修正し、次回の研修で確認する作業を繰り返した。
最初に作ったのは、懸案になっていた案件を管理するアプリだった。色分けやタブ付けなどを行い、見やすくなるよう工夫した。
あっけなく課題解決? しかし苦労はこれから
kintoneで案件管理アプリを作っただけで、営業設計の部門では案件のスムーズな共有ができるようになり、「問題はほとんど解決!」と宗政氏は思った。
だが、そんなことはなかった。案件管理アプリは職人たちにもぜひチャックしてほしかったが、反応はゼロ。もともと多少の不自由さはあっても、大きな問題を感じていなかった職人たちは、kintoneアプリの利用にはまったく乗ってこなかったのだ。
「なぜ使ってくれないのか。」宗政氏は職人たちに迫った。答えは「なんとなく苦手」「使い方がわからない」「今までのやり方を変えたくない」「めんどうくさい」など、散々だった。
宗政氏は、せっかく作ったアプリを使ってくれない職人たちに、少しむっとしながらも、粘り強く対応した。
アプリを手直しし、その都度直した箇所を職人の目の前で見せた。加えて、週に一度アプリを使うメリットを説明する会議も設定し、繰り返し丁寧に説明した。ときには、納期や納品先の問い合わせに対して「それkintoneに入っているから」と突き放すことも織り交ぜ、あの手この手でkintoneの利用を促した。
それでも、なかなか職人たちは腰を上げようとはしなかった。そこで宗政氏は、「誰もが絶対に触らなければいけないアプリを作ればいい」と考え、「タイムカードアプリ」を開発することにした。
このアプリは、基本的に「出勤」「退勤」の2色のボタンがついているだけの超シンプルな画面構成だ。それぞれ押せば、出勤時間、退勤時間が記録される。スマートフォンでも使えるので、誰でも簡単に勤怠を記録できる。狙いどおりのアプリができた。
「このアプリに打刻すれば、自分の残業時間が表示されるので、今月の残業時間が何時間なのかわかる点が好評だった」(宗政氏)。一覧表示の機能や、それを印刷する機能も矢継ぎ早に追加した。
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