大阪大学と北海道大学の研究チームは、導電性ポリマー(絶縁体であるポリマーにドーピング処理を施し、高導電性を付与したもの)の分子細線を用いることで、学習可能な脳型コンピューターを実現し得ることを明らかにした。さらに、溶液中で分子細線が伸長・配線されることで回路が学習し、その結果得られたネットワークに連想記憶を付与できることも示した。
大阪大学と北海道大学の研究チームは、導電性ポリマー(絶縁体であるポリマーにドーピング処理を施し、高導電性を付与したもの)の分子細線を用いることで、学習可能な脳型コンピューターを実現し得ることを明らかにした。さらに、溶液中で分子細線が伸長・配線されることで回路が学習し、その結果得られたネットワークに連想記憶を付与できることも示した。 研究チームは今回、溶液中で電極に電圧を加えると重合成長し、電極間を配線可能な導電性ポリマー細線を立体配線材料として用いることで、脳内の3次元的な局所結合を忠実に再現できることを発見。溶液中に配置された複数の立体電極間へ重合電圧を印加することで、導電性ポリマー細線が3次元的に成長する様子を世界で初めて観測した。 さらに、電圧印加時間を制御することで配線本数を制御でき、これを用いて各電極間抵抗値を所望の値へと高精度で制御し得ることも実証。脳内ネットワーク形成過程と脳の学習過程に対応づけることで、ネットワークに連想記憶を与えられることを示した。 人間の脳は高度なリアルタイム処理を省電力で実行できており、これは脳の構成単位である神経細胞(ニューロン)とそれらを繋ぐシナプスが織りなす高密度な3次元ネットワークがもたらすダイナミクスによるものと考えられている。近年、次世代ハードウェアとして、脳の仕組みを物理的に模倣したアナログ脳型コンピュータが注目されているが、実際の脳が持つ3次元構造から乖離しており、性能向上が困難であった。 今回の研究成果は、米国科学誌「アドバンスト・ファンクショナル・マテリアルズ(Advanced Functional Materials)」に、2023年6月30日付けで公開された。(中條)