この春、メルセデス・ベンツの人気SUV「GLC」の最新モデルが発売開始となりました。参加した試乗会でのインプレッションを紹介します。
上位モデルの最新技術を詰め込んだミッドサイズSUV
3月16日より、メルセデス・ベンツの新型「GLC」が発売開始となりました。「GLC」は、メルセデス・ベンツのSUVラインナップを意味する「GL」と、ミッドクラス相当である「C」の名前が与えられたモデル。世界的にも最も数多く販売されているミッドサイズのSUVとなります。初代モデルが2015年に登場し、2020年と2021年はメルセデス・ベンツSUVの中で、世界で最も数多く売れたモデルとなりました。
その人気モデルのフルモデルチェンジ版が、今回の新型車となります。日本に導入されたのは2リッターのディーゼル・エンジンの4WDモデルとなる「GLC 220d 4MATIC」のみで、車両価格は820万円です。
エクステリア・デザインは、最近のメルセデス・ベンツと同じ「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋)」をコンセプトにしています。これはラインやエッジを減らし、優美な曲面でボディー全体を構成しているのが特徴です。車両サイズは、全長4725×全幅1890×全高1635mm。先代と比べると、全長が50mm伸びただけで、幅はそのまま、高さは5mmだけ下がっています。ほとんど先代そのままの寸法と言っていいでしょう。日本車と比べると、トヨタの「RAV4」よりも微妙に大きいという程度です。
ちなみに全長が伸びただけ荷室が広くなっており、先代比では70Lも容量が拡大しています。通常ポジションで620L、後席を倒すと1680Lにもなります。実用度は十分あります。
また、「GLC」には上位モデルにも採用されている「リア・アクセルステアリング」という後輪操舵機能がオプションで用意されています。そのため最小回転半径は通常モデルで5.5m、リア・アクセルステアリング装着車では5.1mまで小さくなります。日本での取り回しに苦労することはないでしょう。
ひと味違う高級感を感じさせるインテリア
今回、試乗したのはAMGランパッケージというオプション装着車でした。そこで、驚いたのはインテリアの斬新さです。試乗車には「ブラックオープンボアウッドインテリアトリム」というオプションが装着されていました。なんと、ウッドパネルに縦じまが入っています。こんなの初めて見ました。また、縦型11.9インチのセンターディスプレイを中心に置いたインテリア・デザインは非常にモダンなもの。アンビエントライトの演出もあり、非常に高級感を感じられます。
インテリアの基本デザインは、上位モデルである「Sクラス」や「Eクラス」と同じテイストになっているのもうれしいところ。こうした分かりやすい高級感は、日本メーカーにはなかなかマネできない部分ではないでしょうか。
さらにナビゲーションには上位モデルから採用が始まった「ARナビゲーション」(前方を撮影した映像に、矢印などを上乗せして表示する機能)や、「トランスペアレントボンネット」機能(クルマのフロント部分の床下の路面をディスプレイに表示)など、最新の機能も数多く採用されています。こうした最新の機能を積極的に採用していることもメルセデス・ベンツの高級さを裏付けるポイントと言えるでしょう。
走り出しはスムーズなのに上ではダイレクト
新型「GLC」のパワートレインは、マイルドハイブリッドの2リッターの「OM654M」ディーゼル・ターボ・エンジンが搭載されています。これは最高出力145kW(197PS)/最大トルク440Nmのエンジンに、17kW(23PS)/205Nmのモーター、そして9速のATが組み合わされています。先代よりも排気量が42cc大きくなり、燃費性能が19%改善され、18km/L(WLTCモード)を実現しています。
試乗して思ったのは、音とノイズが非常に上手に抑え込まれているということです。ボリュームが小さくなっているだけでなく、音質も角が取れて耳に優しくなっていました。また、回転を上げてゆくと、小気味よくビートが揃っているのも好印象です。
そして、加速感が上品であることも気に入りました。最初はゆったりとスムーズに加速してゆき、ある程度のスピードに乗るとダイレクト感が増してゆきます。9速もあるATの変速は滑らかそのもの。マイルドハイブリッドのモーターの存在が、滑らか感をより強めているのでしょう。こうした特性は、同乗する家族や友人、恋人にもきっと気に入られることでしょう。
試乗車はオプションのAIRMATICサスペンションが装着されていました。ダンパーの伸び側と縮側それぞれに可変ダンピングシステムを備えており、路面や運転状況、乗車人員にあわせた減衰値を保ちます。あたりの柔らかさが印象に残りました。個人的には、しなやかな足回りを活かして、もう少し軽いアルミホイール&タイヤに交換して、もっと快適性を高くして乗りたいなと思ったほどです。
【まとめ】上品にまとめられたSUV
走りも実用性もいい先代以上の仕上がり
試乗車はAMGパッケージを装着しているため、ちょっといかつい顔つきになっていますが、基本的に「GLC」は上品なクルマであると感じました。スムーズな加速に、あたりの柔らかい足まわり。高速道路を遠くまでドライブするにはぴったりの走り味です。
また、インテリアは、モダンで高機能、そしてゴージャス。これだけでも買う価値は十分に感じられるでしょう。しかも、荷室が広くて実用性も十分。日本で使うにも困らない適度な寸法というのも美点です。
こうした内容であれば、この新型も先代に負けないベストセラーになるのではないでしょうか。そんな納得感いっぱいの試乗となりました。
この連載の記事
-
第491回
自動車
ボルボの電動SUV「EX30」は価格と性能のバランス良し! 乗って実感したオススメポイント5つ -
第489回
自動車
サーキット向けのアルピーヌ「A110S」はフランスらしいデザインと上質さで街乗りも楽しい -
第489回
自動車
アストンマーティン「DB12」はラグジュアリーと最高性能を両立させて究めた1台 -
第487回
自動車
Hondaのセダン「アコード」はすべてが適度でちょうどいい! 5つの魅力を紐解く -
第486回
自動車
これぞ王道! これぞ本流! BMWの魅力を凝縮したSUV「X5」は最高の1台と断言する -
第485回
自動車
1000万円対決! ポルシェ「マカンT」とアウディ「SQ5」似て非なる2台をあらた唯と徹底比較 -
第484回
自動車
日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞のHonda「FREED」の魅力と買いのグレードはコレだ! -
第483回
自動車
【ミニバン売れ筋対決】ホンダ「フリード」とトヨタ「シエンタ」の良いところと微妙なところ -
第482回
自動車
これがBMWの未来! フラッグシップEVの「iX」は乗り心地良すぎで動くファーストクラス -
第481回
自動車
アルファ・ロメオのハイブリッドSUV「トナーレ」はキビキビ走って良い意味で「らしく」ない -
第480回
自動車
独特なデザインが目立つルノーのクーペSUV「アルカナ E-TECH エンジニアード」はアイドルも納得の走り - この連載の一覧へ