11ヶ月でリーテルバンクを立ち上げた銀行もある
大谷:歴史を持つ金融機関はレガシーシステムからの移行に苦労しているようです。クラウド移行に関しては進みましたか?
マリンズ:金融業界のクラウド移行に関しては、すでにセカンドディケイド(二回り目)に突入していると考えています。
実際に金融機関でのクラウド導入事例は、さまざまな分野に渡っています。コアバンキングはもちろん、保険、リスク分析、アクチュアリー、金融取引、クリアリング、決済など、すべてがクラウドで実現されています。ミッションクリティカルな基幹システムも例外ではありません。
また、リテールのコアバンキングのトップ3はすべてAWSを採用しています。また、クラウドネイティブなバンキングサービスも増えていますし、保険や取引市場もクラウドでサービスを提供するようになっています。
大谷:具体例を教えてください。
マリンズ:たとえば、大手金融機関のゴールドマン・サックスはこれまでほとんどリテール向けのサービスをやってきませんでしたが、今はコンシューマー向け銀行として「マーカス」を展開しています。マーカスはAWSをプラットフォームとして用いており、クラウドならではのスケールや柔軟性を活かし、これまで難しく新たな事業領域に進出できたと思います。ある国でたった11ヶ月でリテールバンクを立ち上げた銀行もあります。
大谷:日本ではいかがですか?
マリンズ:日本の金融機関での導入は、グローバルに比べてワンサイクル遅れているのが正直なところ。米国の金融機関をリファレンスとして活用して、さまざまな領域でクラウドを試しつつ、まさにミッションクリティカルな領域での適応をまさに始めようとしているところです。
AWSを選択する理由は選択肢
大谷:マリンズさんから見て、今の金融機関がAWSに期待していることはなんですか?
マリンズ:日本に限らず、世界の金融機関はやりたいと考えていることが大きく2つあります。AWSを使って新たなサービス、プロダクトを作り、お客さまに満足してもらうイノベーションを推進することです。
もう1つはモダナイズです。先ほど歴史の古い金融機関は多くのレガシーシステムを持っているとおっしゃいましたが、昨日のイノベーションは今日のレガシーなんです。だから、モダナイズにより、レガシーアプリのコストを下げ、運用の効率化やレジリエンシーを高め、スケール化やエラスティック化を実現し、ビジネスそのものを改善していくというのが、多くの金融機関がAWSに期待していることです。
大谷:変化の激しい時代、イノベーションはあっという間にレガシーになってしまうんですね。
マリンズ:単にアプリケーションのポートフォリオを組み替えることだけが目的ではない。というのも、クラウド化を行なうことで、オペレーションや従業員そのものも変えてしまうことができるのです。日本は、今までITやオペレーションをアウトソーシングする文化があったと思うのですが、クラウドを用いることで、お客さま自体がオペレーションや人材のスキルを変化させていくことが可能になるはずです。
大谷:最後はシンプルな質問です。昔はクラウド自体が珍しいものでした。AWSしかなかったとすら言えます。でも、今は選択肢があります。金融機関がAWSを選択する理由を教えてください。
マリンズ:まさにその選択肢がAWSが最大の強みだと思っています。
最初にお話ししたとおり、われわれは世界で31のリージョンを持ち、来年には5つのリージョンが増える予定です。世界のどこであっても、一番早くサービスを立ち上げることが強みです。
また、サービスも幅と深さも最大です。新規事業やイノベーションを起こしたい企業にとっても、レガシーアプリケーションをモダナイズしたいという企業にとっても、AWSであれば適切なサービスを選択できます。そして、これらのサービスの運用も比類ないレベルです。これらフットプリント、サービス、運用という点で、選択肢が得られる点がわれわれの強みだと考えています。