ITインフラを知ってもらいたい 企画元のエーピーコミュニケーションズの野望
エーピーコミュニケーションズは都内の独立系システムインテグレーターで、以前は常駐型のSESを提供していたが、最近は自社サービスとプライム案件にこだわった展開を進めている。
もともと同社はインパクトのある採用活動のために「インフラエンジニア川柳」という活動を2020年から展開してきたが、より認知度を上げるための企画としてネットワーク機器のカプセルトイが社内から挙がってきたという。とはいえ、自社の認知度向上だけが目的ではない。企画を担当したエーピーコミュニケーションズの小松千恵氏は、「世の中の人はインフラを意識しない。だから、まずはITインフラを知ってもらって、ITインフラにエンジニアに共感してもらいたいと考えました」と振り返る。
最初にやったのはカプセルトイメーカーへの声がけ。コラボ先となったのは「ネギ袋」や「手のひらPC&サプライ」などのカプセルトイを手がけたことのあるターリン・インターナショナルだ。「ニッチな方がお客さまに刺さるという経験則をお持ちでしたし、手のひらPC&サプライの企画でカプセルトイ同士の配線もやっていたので、(ネットワーク機器のカプセルトイ化も)イメージしやすかったようです」(小松氏)とのこと。ターリンと意気投合した結果、エーピーコミュニケーションズが企画と運営を手がけ、ネットワーク機器メーカーに監修してもらうというスキームが整った。
カプセルトイが作れるめどが立ったところで、昨年のInteropに出展していた名だたるネットワーク機器メーカーに企画書を渡したところ、企画に前向きだったのが今回の3社だ。個人的に驚いたのはネットワーク機器最大手のシスコがよく企画にのったなという点。グローバル企業ということで、この手の企画に及び腰なイメージがあるが、シスコが入ってくると本物のデータセンター感が俄然高くなる。
エーピーコミュニケーションズ自身も独立系のSIerなので、商流やパートナー関係なく、幅広く声がけした結果、A10、シスコ、古河電工の3社になったわけだ。具体的にはロゴ、意匠の利用権を得て、監修を依頼したとのこと。ちなみに取材時には声がけしたメーカーリストを見せてもらったが、私が知っているネットワーク機器メーカーはほぼ声がけされていた。ここまで話題になるのであれば、「企画乗っておけばよかったー」というメーカーもいるかもしれない。
機器の「耳」まで別パーツで付ける話があったくらい
さて、ネットワーク機器の製作はエーピーコミュニケーションズがハブとなり、ターリンとメーカーと調整する形で進めたが、大きな手戻りはなかったという。「写真だけで3Dプリンタのモックを作って着色したサンプルを送ってくれましたが、すごいプロだなと思いました。色味でちょっと戻しが発生したくらいで、基本はスムーズでした」と小松氏は振り返る。先ほど見ていただいたとおり、タイポ印刷により、細かい部分も精密に作り上がっている。
ラックに関してはエーピーコミュニケーションズがこだわった。「私がもともとエンジニアで、ラックの設計に関わったこともあるので、けっこうこだわりました」(小松氏)とのこと。ケーブルホルダーや冷却ファンはもとより、当初は機器をラッキングする際に使ういわゆる「耳」と呼ばれる部分も別パーツで付けようという話もあったくらい。どこまでリアルにできるか、ターリンが果敢に挑戦してくれたという。
発表後の反応は、「想像以上で若干ビビった(笑)」(小松氏)とのこと。現時点ではエンジニアからの好意的な反応が多いが、発売後はより一般層への認知を拡げていきたいという。ラッキングしてデータセンターに思いをはせたり、手持ちのフィギュアと組み合わせたり、楽しみ方はさまざま。次の展開は現時点では未定だが、「最大手のサーバーメーカーから連絡が来た」(小松氏)とのことだ。
「カプセルトイ 手のひらネットワーク機器」は1個500円(税込)で、6月15日から順次販売される。入手可能な店舗については、ターリンからアナウンスされるほか、Interop 2023で配布するメーカーもあるという。エンジニアのみなさんはいち早く入手して、ワークスペースをテッキーに彩っていただきたい。