このページの本文へ

ビジネス戦略説明会を開催、データ人材育成の支援を受けるKDDIもゲスト出席

Snowflake、2023年は「インダストリー」「データコラボレーション」など4つの注力テーマ

2023年05月31日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 Snowflakeは2023年5月30日、日本市場における2023年のビジネス戦略説明会を開催した。社長の東條英俊氏は今年度の成長戦略として、業界特化したデータセット提供やデータ活用提案を行う「インダストリー」、ユーザー企業が外部データも組み合わせて活用する「データコラボレーションの加速」、Snowflakeプラットフォーム上でのアプリ開発を支援する「データクラウド」、幅広い層を対象とした「次世代のデータ人材育成」の4つを挙げ、それぞれを詳しく説明した。

 また、Snowflakeのユーザー企業であるKDDIもゲスト出席し、「データクリーンルーム」を活用しKDDIグループ全体のデータ共有基盤として活用を進める方針を紹介した。

2023年の日本市場におけるSnowflake成長戦略

Snowflake 社長執行役員の東條英俊氏、ゲスト出席したKDDI 執行役員常務 兼 UQコミュニケーションズ 代表取締役社長の竹澤浩氏

昨年度はグローバルで70%成長、日本市場はエコシステムが拡大

 東條氏はまず昨年度(同社 2023会計年度)のグローバルでの業績から紹介した。製品売上はおよそ19億3880万ドルで、前年度から70%の成長を遂げた。「Snowflakeのビジネスはサブスクリプションではなくコンサンプションベースなので、この売上はユーザーが実際にSnowflakeを使い、消費したクレジットの量に相当する」(東條氏)。

 さらに、データプロバイダーが「Snowflake Marketplace」で提供/販売しているデータセット数が1838(対前年度比で8%増)になったこと、顧客満足度を示すNPSスコアが72に達していることも強調した。

Snowflakeの2023会計年度(2022年2月~2023年1月期)グローバル業績

 日本市場においては「パートナーエコシステムが非常に拡大したことが1つの成果だと言える」と東條氏は振り返る。国内/グローバルのSIパートナー、Snowflake連携製品を持つテクノロジーパートナー、パブリッククラウドパートナー、そしてマーケットプレイスでデータを提要するデータプロバイダーパートナーのいずれもが、Snowflakeの成長にとっては重要な役割を持つ。

 「この大きなエコシステムを拡大させていき、お客様の利便性をどんどん高めていく努力をしている」「日本国内においても、パートナーと共にマーケティングやGo to marketの活動、お客様のサポート、提案といった活動を強化している。さらには相互運用性をしっかり確認して、お客様がすぐにSnowflakeを使っていただける環境作りも推進している」(東條氏)

Snowflakeの国内ユーザーの例

8つの「重点インダストリー」を定め、営業体制や提供データセットを整備

 Snowflakeでは、8つのコアバリューの1つとして「カスタマーファースト」を掲げている。日本市場における成長戦略についても、まずは大前提として「カスタマーファーストの姿勢でお客様に寄り添い、お客様のミッションとビジネスの成長を支援していく」と語る。

 そのうえで、今年度は特に「インダストリー」「データコラボレーション」「データクラウド」「次世代のデータ人材育成」という4つの軸に注力していくとした。

 まず「インダストリー」の取り組みとしては、グローバルのSnowflakeと同様に8つの重点業種(インダストリー)を定め、それぞれの業種に適したデータセットの提供、データ活用の提案を進める。そのために、Snowflake Japanでも8つの営業本部を編成し、SIパートナーのインダストリー担当チームとの連携も図っているという。

 「やはりお客様の業務をしっかりと理解して、業種ごとの言葉も使いながらSnowflakeを提案していく。インダストリーごとにどんなユースケースや事例があるのか、国内国外を含めて紹介していき、お客様のミッションにしっかりアラインした(沿った)提案を行うことが非常に重要だと考えている」(東條氏)

 加えて、各業種向けラウンドテーブルの開催などインダストリーごとのマーケティングアプローチ、インテージ(小売)、QUICK(金融)といった特定業界向けデータプロバイダーとの協業の促進なども行っている。

8つのインダストリー(業種)ごとに営業組織を構え、業種特化したデータセット提供やユースケース提案などを強化していく

 ユーザーが外部データセットも組み合わせて活用する「データコラボレーションの加速」については、「セキュアで」「簡単に」「早く/早く」「低コストで」実現することが要件だと説明し、単一のプラットフォーム上でセキュアにデータ共有(データシェアリング)ができるSnowflakeの優位性を強調した。

 「やはり安全にデータコラボレーションができなければ、データの利用は進まないと考えている。これまでは、FTPなどの技術を使ってコピーしたデータを受け渡す必要があったが、それは時間もコストもかかり、ガバナンスの問題もあった。簡単に素早く、コスト効率良く、データコラボレーションができる環境が求められており、Snowflakeはそれをデータシェアリングの機能で提供している」(東條氏)

 またSnowflake Marketplaceで提供するデータセットのさらなる拡大にも努めていく。現在は、14社の国内データプロバイダーが35種類のデータセットを提供している。今後の拡大方針については次のようにコメントしている。

 「具体的な目標数値は言えないが、今後はお客様がどんなデータが欲しいのかをヒアリングしながら、優先度を付けてデータプロバイダーのオンボーディングを進めていきたい。またデータプロバイダーのマーケットプレイス参入だけでなく、業種ユースケースに沿ったプロバイダーとの結びつきをサポートし、データクリーンルームを通じたダイレクトシェア(※ユーザー企業とプロバイダー企業の直接データ共有)によるコラボレーションなど、全方位でサポートできる体制も整えていく」(東條氏)

データコラボレーションの例として、Brazeのマーケティング施策データとTangerineの来店データを突合し、キャンペーン効果(来店貢献)を分析するユースケースを紹介した

KDDIグループの「データ人材育成」と「データ民主化」を支援

 Snowflakeプラットフォーム上でのアプリケーション開発を促す「データクラウド」の取り組みについては、データのサイロ化を解消する取り組みが国内でも進むなかで、次の課題として「アプリのサイロ化」が顕在化してくるために必要だと説明した。

 具体的には、JavaやPython、JavaScriptなど多言語に対応するアプリ開発環境「Snowpark」や、UI付きアプリを開発できるPythonフレームワーク「Streamlit」などを提供している。さらに、開発したアプリはマーケットプレイスで共有、流通させることもできる。

 また「次世代のデータ人材育成」については、ビジネスユーザーからデータサイエンティストまで、ロールに応じた認定プログラム「SnowPro認定プログラム」とラーニングパスを用意していること、“実践的な学びの場”としてデータコラボレーションのコンテスト「RISING 未来のデータサイエンスコンテスト」を実施していること、国内コミュニティの充実化やデータドリブンなリーダー企業/個人を表彰する制度(Data Drivers Awards、Data Superheroes)を設けていることなどを紹介した。

Snowflakeではロールに応じた「SnowPro認定プログラム」やラーニングパスを提供している

 「冒頭でも触れたが、Snowflakeのバリューは『カスタマーファースト』。製品開発からGo to marketまでお客様を第一に置いて、お客様のミッションとともに歩む、これが重要だと考えている。お客様が本当にやりたいこと、やりたいビジネスを実現するためにわれわれは存在していると考えているので、テクノロジーの提供から人材育成支援、データコラボレーションまで、さまざまなかたちでお客様のサポートを続けていきたい」(東條氏)

* * *

 ゲスト出席したKDDIの竹澤氏は、同社とグループ会社における「データ人材育成」や「データ民主化」の取り組みと課題、それを解消するためにSnowflakeと進める新たな施策について紹介した。

 KDDIでは全社的なデータ人材育成の取り組みを進めてきたが、その中では「事業領域ごとに差が出始めている」「リードする部門についてはもう一歩先を行った人材育成が必要である」といった課題にも直面している。そこでSnowflakeと共に、各担当領域におけるデータ人材の要求レベルを設定し、それに合わせた独自の研修プログラムを構築していく計画だ。さらに今後は、グループ会社16社にもデータ人材育成の動きを広げていく。

 こうしてグループ全体にデータ人材が揃った次の段階では、データの民主化を実現していく予定だと竹澤氏は語る。まずはSnowflakeをKDDIグループ内の単一データ基盤として活用し、2023年度中にデータのサイロ化を解消する。さらに、グループ外のパートナーとのデータシェアリングも念頭に入れており、ここではデータクリーンルームの機能を用いて、匿名化したデータを共有する方針だと紹介した。

 「データ人材育成の枠組みをグループ会社にも広げて、グループ横断でDXを推進する。これによって今後、外部環境がいろいろと変化していくが、それにも柔軟に対応していける基盤を作っていきたい。その実現においては、Snowflakeとのさらなるパートナーシップ強化に強く期待している」(竹澤氏)

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード