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Streamlit共同創業者が来日、同社の歴史を振り返る

ビジネス課題を解決するデータアプリ構築を促す「Streamlit in Snowflake」

2023年12月26日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 2023年12月19日、Streamlit(2022年3月にSnowflakeが買収)のCo-Fonder兼COOであるアマンダ・ケリー氏が来日し、2023年12月から一般公開を開始した「Streamlit in Snowflake」をはじめとする同社の最新状況について説明した。

 ケリー氏は、「Streamlitは、オープンソースのPythonライブラリであり、Streamlit in Snowflakeによって、データアプリケーションを容易に構築できる。データセキュリティやガバナンス、アプリケーションの共有などは、すべてSnowflakeが行ってくれる。イテレーションを迅速に繰り返すことができ、データプロが、ビジネスチームの課題を解決するカスタマイズしたアプリケーションをすぐに構築できる」と説明した。

Streamlit Co-Fonder兼COO アマンダ・ケリー(Amanda Kelly)氏

 Streamlitは、データとモデルをPythonで構築されたアプリに変換することで、洞察を得るまでの時間を縮めるほか、エディターと同一画面上で変更のプレビューや実行ができ、迅速なイテレーションを実現。Snowflakeが持つ安全で信頼性の高いインフラにワンクリックで展開でき、開発から実稼働までの期間を短縮できる。Streamlit in Snowflakeを活用することで、データやアプリケーションコードを外部システムに移動させることなく、Snowflake内のデータを活用したアプリケーションを構築できる。

 「Streamlitを利用することで、50行のコードが必要であった場合でも、1行のコードで済み、容易に、素早く構築できる。これは、カスタマイズしたツールやアプリケーションを多く生み出すことにつながり、すべてのチームがデータ主導型の働き方に移行できる」とケリー氏。

Streamlit in Snowflakeの特徴

機械学習のための独自ツール構築から始まったStreamlit

 ケリー氏は、これまでの同社の歴史を振り返りながら、Streamlitの特徴について説明した。

 Streamlitは、2018年11月に創業。2019年10月に、データサイエンティスト向けのオープンソースのデータアプリケーションフレームワークとしてStreamlitを発表した。

 創業の発端となったのは、2013年にGoogle Xにおいて、自然言語処理プロジェクトをスタートし、機械学習のための独自ツールの構築を開始したことだ。ケリー氏は、「機械学習を使っていると、必ず同じ課題に突き当たっていた。データを活用する際に、視覚化したり、説明したりするためのツールが必要であったが、これらのツールやアプリケーションを整えるのが困難だった」とそのきっかけを語る。

 そこで、自動運転車のスタートアップ企業に在籍しながら、その会社でも同様に問題になっていた機械学習のための独自ツールの開発を継続したという。

Streamlitの歩み、Google XでMLのための独自ツールを作ったところから始まった

 2018年1月には、のちにStreamlitとなる製品の最初のコードを書き、11月に創業。機械学習プロジェクトにおいて、データの視覚化とインタラクションを、より優れた方法で実現するというアイデアをもとに、シードラウンドを実施した。ケリー氏は「Streamlitの創業日は、私の一番下の娘の誕生日と同じなので忘れない」と笑いながら、「ここまで短期間に普及するとは思っていなかった」と、創業からの5年間を振り返った。

 企業においては、日常の業務の中で抱える課題の9割が、データに起因したものだという。データをもとに、意思決定し、アクションにつなげることが困難な最大の理由は、実現するまでに多くの時間を要することだという。「最終的に必要なのは表形式で並んだデータではなく、ビジネスの問題を解決するデータ。そのために、アプリケーションを開発するには、データを整備し、視覚化し、理解できる場所に置く必要がある」とケリー氏は強調する。

 そこまできても、開発者やITチームと協力し、セキュリティを実装し、アプリケーションをデプロイし、拡張させるといった作業も必要になる。新たなニーズが出てくると、これを最初から繰り返さなくてはならない。時間がかかるほど、得られるメリットも小さくなり、ビジネスにとって悪い状況を生む。Streamlitがたどり着いた唯一の解決法は、実際に使う人がアプリケーションを作れるようにすることだ。

Streamlitでデータ活用を変革する

 Streamlitは、開発者がPythonさえ理解していれば、フロントエンドの言語は知らなくても、アプリケーションを構築し、すぐに改善できるようにした。必要とされるシンプルなコマンドはすべてオープンソースライブラリとして提供する。さらに、世界中の10万人の開発者が参加するコミュニティを通じて、数千のコンポーネントも提供される。日本のコミュニティが開発したコンポーネントも含まれており、生成AIに関するコンポーネントも増えているという。

 また、「Streamlitが提供する重要な価値を3つ挙げるとすれば、速い、速い、速いの3つ」だとジョークを交えながら、データアプリケーション開発の速さを強調した。

 そして、2022年3月に、SnowflakeがStreamlitを買収。「Snowflakeから、Streamlitが一緒になることで、大きな改善が図れるという提案があった。Snowflakeは、様々なデータプラットフォームのなかで、最善のものであり、そこにStreamlitを統合させていくことは、開発者にとって、よりパワフルなものが提供できると判断した」とケリー氏。2023年12月に、Streamlit in Snowflakeの一般公開を開始した。

 ケリー氏は、「Snowflakeは、Streamlitをオープンソースのプロジェクトとして継続し、さらに成長させていくことにコミットしている」と補足する。

 現在、Streamlitのライブラリのダウンロード数は4000万を超えており、フォーチュンの上位50社のうち、8割の企業が採用。全世界で数百万のアプリケーションが開発されているという。また、公開されているアプリケーションは、月間500万人が利用している。

 ケリー氏は、今回の来日の狙いについて、「顧客と話をするためにやってきた。日本には、Streamlitで開発された先進的なアプリケーションが多い」とコメント。Snowflakeの執行役員 セールスエンジニアリング統括本部長の井口和弘氏は、「もともと日本のSnowflakeユーザーの多くが、Streamlitを活用しているという状況があった。2024年には、日本において公表できる事例が出てくるだろう」と語った。

Snowflake 執行役員 セールスエンジニアリング統括本部長 井口和弘氏

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