名古屋大学と物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究チームは、分子レベルの厚さ(1.5~3ナノメートル、1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)で高い誘電率と高い絶縁性を兼ね備えたナノシートを開発。ナノシートの積層素子で、現行の誘電体キャパシタ(蓄電器)の性能限界を突破する世界最高のエネルギー密度を実現した。
名古屋大学と物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究チームは、分子レベルの厚さ(1.5~3ナノメートル、1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)で高い誘電率と高い絶縁性を兼ね備えたナノシートを開発。ナノシートの積層素子で、現行の誘電体キャパシタ(蓄電器)の性能限界を突破する世界最高のエネルギー密度を実現した。 研究チームは、常誘電体ペロブスカイト・ナノシートは、強誘電体のようなヒステリシス特性のロスがなく、線形の分極特性を示し、巨大分極(高誘電率化)と高耐電圧化が同時に実現するというユニークな特性を持つことを発見。この特性を利用することにより、高い分極量(誘電率)を持つ誘電材料に、高い電界を印加し、ロスなく静電エネルギーに変換できるようになり、世界最高のエネルギー密度(174~272ジュール/立方センチメートル)を実現した。 研究チームによると、今回の成果は、誘電体キャパシタの開発に向けて新たな設計指針を与えると同時に、ナノシートが持つ高エネルギー密度、高出力密度、短い充電時間(数秒)、長寿命・高温安定性という特徴を利用した全固体蓄電デバイスへの応用展開が期待されるという。研究論文は、米国化学会材料科学誌ナノ・レターズ(Nano Letters)オンライン速報版に2023年5月2日付けで掲載された。(中條)