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krew誕生秘話、ユーザー事例、ロードマップまで盛りだくさん

導入2000社を突破したkrewシリーズ 初のユーザー会「Ship」が船出

2023年05月23日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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非IT人材がkintoneとkrewを主導したエン・ジャパン

 続く事例セッションでは、エン・ジャパン 事業推進統括部 DX推進グループ グループマネージャー 高橋淳也氏は「営業改革を加速させるkrewシリーズの活用」というタイトルで、krewの活用と社内浸透について説明した。

エン・ジャパン 事業推進統括部 DX推進グループ グループマネージャー ⾼橋淳也⽒

 高橋氏は2006年に新卒でエン・ジャパンに入社し、コピーライターからキャリアをスタート。「大学が理系だったため」という理由から、IT/Web業界の求人を数多く担当してきたという。 現在は事業推進統括部 DX推進グループのグループマネージャーとして、転職⽀援サービスの「エン転職」、採用プラットフォームサービスの「engage」、営業支援サービス「エンSX」などの業務改善やDX推進を担っている。高橋氏は、「まとめると現場のたたき上げの非IT人材ですし、リスキリングを通じてDXを推進してきた人」と自身のキャリアをまとめる。

 同社では2017年に事業部単位でkintoneを導入し、高橋氏と専任1名から開発を開始し、kintoneやクラウドサインを用いた業務変革を推進。2020年には年間削減時間2万6000時間という実績をたたき出す。あとから入ったメンバーも事務や営業のメンバーなど非IT人材で。育成ノウハウが整ってきたため、今では未経験者もウェルカムという状態だ。

 現在、同社では営業部門、企画部門、制作部門のほか、情報システムや管理部までkintoneが使われており、高橋氏も「サイボウズの社員か?(笑)」と言われるくらいになった。業務改善のためにkintoneを使っていたら、今や現場主導のDXのプラットフォームに成⻑したというのが現状だ。関連ツールとしては、トヨクモのFormBridgeやkMailer、kViewer、PrintCreator、アールスリーインスティテュートのgusuku Customine に加え、グレープシティのkrewSheet、krewDashboardを使っている。「krewDataは導入しないのですか? と言われますが、まだ使っていません」(高橋氏)という。

エン・ジャパンでのkintoneでの利用状況

 続いてkrewシリーズ導入の経緯だ。もともと高橋氏が所属していた制作部門ではExcelからkintoneへ移⾏したが、営業部門では内製のSFAを用いており、「新しいツールは覚えたくない」という声があったという。そこで「Webフォームですよ」という謳いでトヨクモのFormBridgeやkViewerをまず導⼊し、kintone本体へのログインが増えたタイミングでユーザーインターフェイスとしてkrewSheetとkrewDashboardを⼊れることにした。今回の事例も、この営業部門でのkintone、krewの導⼊と活用、浸透がテーマだ。

営業経験がないのに営業改革 高橋氏がとった手段は︖

 エン・ジャパンは2000年に設立され、社員数は3000人弱。求人サイト、人材紹介などの採用のみならず、教育、評価などをサイクルとして回せるよう、30以上の事業を展開している。このうち高橋氏は主⼒事業のエン転職を担当しており、会社の売上もこのエン転職に比例しているという。

 創業以来成⻑を続けてきた同社だが、2010年のリーマンショックで低迷期を迎える。その後、エン転職のリニューアルを経て再び成⻑軌道に載った同社は、5年で売上高を4倍に拡大するというチャレンジングな事業計画を⽴てる。「今で言うところのDXです。なぜ営業改⾰やDXが必要になったかというと、経済危機で低迷し、競合環境が激化し、変化が必須だったからです」と高橋氏は語る。

 こうした中、2017年に導入されたのがkintoneだ。エン転職のサイトやサービス拡充のためにエンジニアは多忙を極め、セキュリティ対応や基幹システムのリプレースで情シスも⼿が空かない。事業部で進めたい営業の⽣産性向上や管理業務の効率化は誰もやってくれない。「意地悪しているわけでなく、この成長角度で売上を上げるために、みんな精⼀杯やっている。『だったら、現場でやるしかない』と覚悟を決めて、ノーコードツールに踏み込んで行きました」と高橋氏は振り返る。

 制作部でkintone導⼊を進めていた当時の高橋氏だが、企画部に移って営業改革に挑むことになった。しかし、高橋氏に営業経験はない。では、どうしたかというと自らの原点に立ち返った。具体的には転職サイトの原稿を書くため、経営者にヒアリング していた『求人広告の取材』に立ち戻ることにしたのだ。

 求人広告の取材では経営者が「人が増えると、こんなことができる」と夢を語り出す。コピーライターからすると、まさにニーズになるわけだが、ここで「パックンチョ」してはいけない。「これだと『あると便利』という浅いニーズでしかない。採用できないとどんな悪影響が事業に出るかを聞く。ここまで聞くと真のニーズを掴める」と高橋氏は語る。

顧客の真のニーズを掘り起こす社内営業へ

 社内の営業改革においても、いわば『社内営業』を始め、課題の抽出を始める。 「こういうのあると便利なんだよねではなく、ないと不便なものを探る。ここをつかまないと結局現場が使わなくなってしまう」と高橋氏は指摘する。

 ヒアリングの結果、営業部は顧客接点を重視し、商談時間を最大化することが願いだった。営業活動では数値管理を重視、オペレーションを研ぎ澄ますことに注⼒。そして、商談にフォーカスするため、いくら便利でも新しいツールは覚えたくないというのが現場のニーズだった。そこでフル活用していた内製のSFAには手をつけず、Excelや旧システムで担っていた部分でkintoneを使い、内製SFAを補完することに方針を固めたという。

krewSheetで入力が容易に krewDashboardで現場がリアルタイムに

 最初に手をつけたのは、顧客の定期メンテナンスだ。「内製のSFAは⼀括で顧客情報をクリーニングするのがUI上、難しかった。そのためCRMからデータを抜き出し、Excelで更新し、またインポートというあまり美しくないやり方だった」(高橋氏)。もちろん「Excelのリプレースならkintoneでしょ」と思うが、前述したように新しいツールは覚えたくないというニーズがあった。

 ここで高橋氏は⼀度ニーズの裏側にあるものを探る。「入力を楽にしたい」「進捗管理を楽にしたい」という営業部門の声に対して、「なぜか?」と深掘りをした。裏側にあったのは「『入力が大変だから入力しない』という言い訳をなくしたい」「進捗をリアルタイムで把握して指示出したい」という部長職、つまり決裁者のニーズだった。「だったら、いいのがありますよ」ということで、満を持して導⼊されたのがExcelライクな入力や操作を可能にするkrewSheet、集計を⾃動化してくれるkrewDashboardだ。

 krewSheetの導入で、現場の営業は慣れたExcelライクな画面で顧客情報を更新できるようになった。これにより、現場は1257時間も工数を削減。また、krewDashboardでリアルタイムに状況を把握できるようになったため、営業部⻑は部下に的確に指⽰出しできるようになった。営業企画はデータ加⼯の作業から解放され、進捗管理にフォーカス。「進捗がよいグループを称賛し、逆に遅延しているグループにはアラートを出すことができる」(高橋氏)とのこと。

マネジメントの意志をもって推進

 利用が拡大し、活用がうまく回り出すと、あちこちから声がかかるようになる。「Excelみたいに入力できるんですよね」「集計が自動化できるんですよね」といった声だ。「エン転職の過去のキャッチコピーで『感動を語るとき、人は最⾼のセールスになる』というのがありましたが、本当だなあと。いいものを作ると、勝⼿に口コミで拡がります」と高橋氏。

 その後は転職サイトの効果進捗レポートや戦略部門の顧客管理、基幹システムからのレポート作成などで、このkintone+krewSheet/krewDashboardを展開。「10種類以上の営業レポートをkrewDashboardに移すときは、Excelマスターの企画職を巻き込んだ。krewSheetを⾒せたら、Excelといっしょですねと⾔って、ガリガリ作ってくれました」(高橋氏)。今では溜まったデータを元にしたダッシュボードを作れる専用のスペースとダッシュボード専用アプリを構築した。「弊社ではkintoneはDXに必須なデータの基盤になりつつあります」と高橋氏は語る。

 高橋氏は今回の発表を「社内浸透=マーケティング発想」「ペインを探り『Must Have』を目指す」「成功事例をパッケージにして横展開」とまとめる。2023年1月からは、自社の業務改善や人材育成ナレッジを外販。「エンSX(Sales Transformation)リスキリング」というDX人材育成サービスを展開している。「私たちも最初のkintone導入でジョイゾーさんにお世話になり、krewなどの関連サービスに助けられた。恩を返すのはマーケットを拡げること」と高橋氏は語る。

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