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krew誕生秘話、ユーザー事例、ロードマップまで盛りだくさん

導入2000社を突破したkrewシリーズ 初のユーザー会「Ship」が船出

2023年05月23日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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業務の流れをkintoneとkrewDataで作った八代製薬

 2番手として登壇したのは八代製薬の喜田晃大(きたこうだい)氏。「きったん」で知られる喜田氏のkintone歴は約3年で、kintone Cafe大阪やkintone×製造業コミニティを運営している。

八代製薬 喜田晃大氏

 喜田氏が所属する八代製薬は、東大阪市にある医薬品原料の製造メーカー。原料を仕入れて、加工を経て、次の製薬会社に引き渡す中間加工業者で、喜田氏は2011年に入社。1年の製造部の経験を経て以降は総務部でIT関連を差配する。「結局、この一年の現場経験があったからこそ、今のkintone開発で現場の欲しいアプリや業務改善を進めることができた」と喜田氏は振り返る。

 業務改善に取り組んできてすでに10年以上が経つ。異動したとき総務部にはパソコンがなく、ひたすら電卓を叩いて経理業務をやっていたが、「今は在宅勤務とオフィスのハイブリッド勤務ができるようになった」と喜田氏は語る。在宅勤務のために導入したkintoneだったが、その過程で業務の流れが可視化でき、業務改善も加速したという。

 まずは八代製薬の従来の業務の流れを披露した。FAXで来た注文は確定した段階で、総務担当の喜田氏にそのまま渡され、ノートに書き込む。出荷が近づくと、同じ内容の出荷指図書を2枚書き、1枚は総務で出荷の手配に利用し、もう1枚は製造部で商品準備に使われる。製造部の出荷指示書はもう一度総務に戻って来て、出荷の指示と在庫の消し込み処理を行なう。

既存の八代製薬での業務の流れ

 課題は営業側に注文情報がないこと。「営業は注文情報をそのまま総務に渡してしまうので、なにを、いつ、どこに、いくらで売ったのかを知らない。ストックしていないので、毎回総務に聞かれる」と喜田氏はコメントする。また、出荷指図に関しても、製造部門から差し戻しが来たり、責任の所在があいまいだったところに違和感があった。「ストックの概念を持ってもらいkintoneで業務の流れを可視化し、改善していきたかった」とのことだ。

 続いて現在の業務の流れ。まず受注管理に関しては、総務部から営業部に人を送りこんで、注文をkintoneアプリに入力してもらった。注文情報がストックされるため、営業はセルフで知りたいことを調べられるようになり、総務に質問されることもなくなった。また、製造部にも出荷担当者を置いてもらい、明確な出荷指示が出せるようになったほか、kintoneのプロセス管理により、ステータスまで把握できるようになった。

やろうと思えばどこまでできる 要はどこまでやるか?

 八代製薬で最初に手がけたkintone化は売上集計と在庫表の作成だった。kintoneもExcelと同じようにできるだろうと考えていたが、できずに途方に暮れていたところ、出会ったのがkrewDataだ。

 krewDataで作った業務フローとして紹介されたのは勤怠の締め管理業務だ。経費精算から振り込みデータ、会計データを作成するフロー、そして宿日直日報、作業報告、弁当管理、打刻データなどから、出勤簿と給与計算ソフトにインポートするデータを作成するフローの2種類があり、喜田氏は後者のkrewDataのフロー図を披露する。

勤怠の締め管理を行なうkrewDataのフロー図

 アイコンが数多く並ぶ壮大な曼荼羅とも呼べるフロー図に会場からは笑いとため息が漏れる。喜田氏がフロー図を元にいろいろこだわりポイントを説明してくれるのだが、なにしろ全体が巨大すぎる。「やっていることはたいしたことではないんだけど、複雑になってしまった。そこは改善の余地はあるかなと思います」と喜田氏は語る。

 また、会計処理に関しても披露した。販売に関しては売上管理から売掛管理、入金管理、仕入れに関しては、買掛管理、支払管理を経て、最後は債権管理を経て、会計データへとうな流れ。ここでのポイントは、製造会社と販売会社の2つに分かれている都合上、会計処理も2系統が必要になっている点。「取引があるたびに二社間でやりとりをしていたのですが、今は月末にkrewDataを実行するだけなのでだいぶ楽になりました」(喜田氏)とのことだ。

 現在は在庫管理に手をつけ始めたところ。喜田氏は、「krewDataを使えば、やろうと思えば人事、請求、給与、会計、販売までできてしまうが、どこまでやるかというところが重要。これからもkrewDataを使い込んで事例を発信していきたい」とまとめた。

2000社突破し、成長を加速させるkrewシリーズの次とは?

 Ship本編の最後に登壇したのは、山崎氏から4年前にkrewのプロダクトマネージャーを引き継いだ加賀谷耕平氏。頭の中の半分は週末のキャンプのことを考えているという加賀谷氏は、krewのこれまでの変遷を振り返りつつ、今後の進化のヒントを披露した。

グレープシティ krewプロダクトマネージャー 加賀谷耕平氏

 冒頭のセッションの通り、krewSheetがリリースされたのは2017年12月。1年後に2018年11月にkrewDataとkrewDashboardがリリースされ、その1年後には導入500社を突破している。当時はまだ成長もゆるやかだったが、CYBOZU AWARDのアライアンス賞を受けた2020年の4月以降、リアルタイム実行、外部ファイル入出力、Xrossモードなど次々と大型の機能強化を図り、2022年5月にはCYBOZU AWARDのプロダクト部門を獲った。

 導入も2022年5月に1500社を突破。「最初の2年は500社だったが、次の2年で1000社増え、成長のカーブはよりプラスαになった。2023年4月には2000社を突破した。1年かからず500社増えたので、成長はさらに加速している」と加賀谷氏はアピールした。

2020年から今日に至るまでのkrewの躍進

 社外に初披露されたkrewのビジョンは「kintoneでできるシゴトを広げる」、ミッションは「誰もが業務システムをカンタンに構築できるプラグインを提供する」だという。kintoneが得意とするワークエキスペリエンス領域に加え、経理や人事、管理部門によるバックオフィス領域、経営マネージャーのマネージメント領域までを幅広くカバーする。

 2022年のリリースを振り返ると、krewSheetは5回、krewDataは7回、krewDashboardは2回となっている。krewSheetのアップデートとしては、kintone一覧のレコードをクロス集計できるXrossモードが大きい。「現場の人の入力を楽にしつつ、現場のマネージャーはXrossモードでパフォーマンスなどを集計できる」と加賀谷氏は語る。とはいえ、反響が大きかったのはXrossモードの行列変換機能を用いたシフト管理機能。「インパクトを持たせたアップデートだった」と加賀谷氏は振り返る(関連記事:krewSheetの新機能「Xrossモード」のすごさをkintoneのプロに聞いた)。

 krewDataの新機能としては、サードパーティであるCData Connect Cloudとの連携が大きかったという。CData Connect CloudはSaaSやDBを相互接続するデータコネクティビティを提供する。今回の連携ではPCAクラウドのマスターをCData Connect Cloudで取得し、krewDataで二次加工を行なった後に、顧客管理DBに入れたり、また複数のECサイトからのデータをCData Connect Cloudで収集し、予算管理とあわせて予実管理を行なうことができる。

CData連携でさまざまなクラウドのデータを取り込める

 krewDashboardは2回のリリースだったが、レコード詳細画面表示を使うことで、より直感的にデータを次のアクションにつなげることができるという。さらにkrewSheetとの連携も進め、krewSheetとDashboardを一画面で見られるという。

 続いて各製品にまつわる数字(2023年3月時点)も公開された。krewSheetの「2万5000以上」は利用アプリ数で、krewDataの「4785万以上」と披露されたのは1ヶ月での入出力レコード数。「これが増えれば増えるほど、負荷につながってしまうのであまりサイボウズさんには聞かれたくない(笑)」と加賀谷氏は語る。そして、最後のkrewDashboardの「6万8000以上」はアクセス数。すべての数値が1年前からアップしており、業務改善につながるデータ活用がここまで進んでいるという1つの指標かもしれない。

krewシリーズにまつわる数字

 2023年の注力ポイントとしては、「kintoneのさらなる発展に貢献する」「現場が使いやすい製品の追求」「krewDashboardのシンプルな地力強化」「krewシリーズだからこその価値提供」の4つを挙げた。「もっと具体的な話を聞きたかったと思うかもしれませんが(笑)、今回はこれくらいでご容赦いただきたい」(加賀谷氏)と締めた。

 本編終了後は懇親会も開催され、krewユーザーによるLT大会などが大いに盛り上がった(関連ページ:【2023.4.21 ユーザー会Ship イベントレポート】 熱気に溢れた1日でした!)。次回開催は未定だが、Shipの今後の展開も楽しみだ。

最後は参加者と関係者で全体写真

■関連サイト

(提供:グレープシティ)

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