Pictoria、人工知能で成長するAI VTuber「紡ネン」の描く未来社会
かーずSPが聞くデジタルコンテンツスタートアップの最前線 株式会社Pictoriaの代表取締役・明渡隼人氏インタビュー
未来SFの定番であるAI(人工知能)が、いよいよ現実味を帯びてきた。有名VTuber「斗和キセキ」が所属する株式会社Pictoria (ピクトリア)は、TwitterやYouTubeで受け取る言葉を学習して成長する人工知能VTuber「紡ネン」をプロデュースしており、今までのバーチャルYouTuberにはない新規性と独自性で話題になっています。
そこで株式会社Pictoriaの代表取締役 明渡隼人氏に紡ネンの運営や、人工知能を使ったVTuberが社会にどんな価値を提供できるのかなど、根掘り葉掘り質問をぶつけました。AI VTuberが人口減少の日本を救う存在になるのかもしれません。
「ワケが分からなさ」が魅力的なコンテンツを生む
――2020年11月にAIを使ったバーチャルYouTuber「紡ネン」がリリースされました。きっかけはなんだったのでしょうか?
明渡隼人氏(以下、敬称略):出発点としては弊社にAIエンジニアがいたことが大きいのですが、SF好きなら憧れる人間らしいアンドロイド(ロボット)的存在を、我々は作り出すことができるのか、という社会実験だと思っています。ドラえもんやターミネーターのような物質的存在ではなく、画面の向こうにいる「二次元」キャラクターであれば、いけるのではないかなって。
――ペッパー君や猫型の配膳ロボットではなくIPキャラクターなのは、御社がVTuberの運営会社だからでしょうか?
明渡:そうですね、「推し」の気持ちが発生するのが大事だと思っています。ペッパー君や犬型ロボットには投げ銭しないと思うのですよ。でもVTuberが成長していく様子には、応援したくなる気持ちが沸いてきます。「推し活」体験こそがポイントだと考えています。
――紡ネンのコンセプトが「粘菌」というのが、よくわからないのですが……いったいなぜですか?
明渡:粘菌の生態が、今後のAIやAIを取り巻くコミュニティに近しいメカニズムだと感じていて、紡ネンには、粘菌っぽい成長をしていってほしいのですよ。それと「ワケが分からない」という要素は、コンテンツには絶対に必要だと思っているのです。考察の余地というか、想像の余白を残しておく方が魅力に繋がります。
――「ワケが分からない」ことで、ちょっと脇道にそれるのですが、御社は斗和キセキの事務所としても有名です。斗和キセキのクラウドファンディングで「生首を作る」のが謎だったのですが(笑) あれはどういう事情だったのですか?
関連リンク:インスタをやるために斗和キセキのめちゃくちゃリアルな生首を作りたい! - CAMPFIRE (https://camp-fire.jp/projects/view/146052)
明渡:それは非常にシンプルで、プロデューサーが「そうだ、生首を作る!」って言ったので、もう僕としては口を挟むことがないですよね(笑) 斗和キセキのプロデューサーは時代の波を読むセンス、感性があるので、本当にVTuberが好きな彼だからこそGoサインを出しました。
――そうしたワケのわからなさが、コンテンツには大事ですね。話を戻しまして、「紡ネン」は2Dのドット絵として誕生しました。最初から3Dモデルにしなかったのはなぜでしょうか?
明渡:結論としては、3Dモデルを作るほどの開発費がなかったことがあります(笑) 3Dモデルをいくつも用意して成長を見せるにはコストがかかりますから。ただしもちろん、ドット絵の良さを理解した上で、ドットの方が成長過程を上手く見せやすいと判断したのもきっかけでした。
明渡:うちに優位性があると思っているのは、AIジャンルとVTuberのジャンル、両方のエキスパートであることです。AIの会社には、何がヒットするキャラクターなのか、3D的な可愛さって何なのか、そうしたものを見極める力はありません。逆に3Dデザインが得意な会社がAIジャンルに参入しても、AIのノウハウが足りないでしょう。この二つの能力を弊社はどちらも持っているからこそ、AI VTuberというチャレンジができています。これがうちの強みですし、うち以外では相当難しいと思います。ただ最終的には、この子を「推せるかどうか」が大事だと感じています。