新横浜ラーメン博物館のウラ話 第26回

ラー博にまつわるエトセトラ Vol.21

あの銘店をもう一度第14弾 1968年創業、幻の塩ラーメンがラー博に復活 函館「マメさん」

文●中野正博

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。 

 2022年7月より、過去にご出店いただいた約40店舗の銘店を2年間かけて、3週間のリレー形式で出店していただく「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」と、2022年11月7日より、1994年のラー博開業時の8店舗(現在出店中の熊本「こむらさき」を除く)が、3ヶ月前後のリレー形式で出店する「あの銘店をもう一度“94年組”」がスタートしました。おかげさまで大変多くのお客様にお越しいただいております。

前回の記事はこちら:
ラー博にまつわるエトセトラ Vol.20 あの銘店をもう一度第13弾 継ぎ足され続ける秘伝の"築炉窯出し"スープ 博多「元祖名島亭」

過去の連載はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 あの銘店をもう一度の第14弾は、1985(昭和60)年に惜しまれつつ閉店し、2000年にラー博で復活を果たした函館「マメさん」です。出店期間は2023年4月4日(火)から4月24日(月)です。

マメさんの「塩ラーメン」

 マメさんとの出会いはドラマティックでした。1999(平成11)年、函館の塩ラーメンを調査している頃、「昔大繁盛した幻の塩ラーメンがある」という情報を入手し、聞き込みを続けたところ、そのお店をやっていたのが、函館の老舗製麺会社「岡田製麺」の代表取締役であった岡田芳也氏だということが分かりました。

 早速、岡田氏を訪ね、「マメさん」復活の話を切り出すも、岡田製麺の社長という立場があること、そして閉店から15年も経っていることから断られてしまいました。その後も交渉を重ねたものの、首を縦には振ってくれることはありませんでした。しかしある日、岡田氏から函館に来てほしいという連絡が入りました。

 岡田氏は従業員に内緒で、昔の「マメさん」の味を再現していたのです。

 「実は私が一番マメさんの復活を望んでいました。しかし私も経営者ですので、従業員の前でそんな簡単にやりますとは言えませんでした」とのことです。こうして15年の月日を経て、ラー博に「マメさん」が復活することとなりました。

マメさん創業者の岡田芳也さん

 そのマメさんはいかにして誕生したのか?

 「マメさん」の創業者 故・岡田芳也氏は、高校生の頃、たまたま立ち寄った屋台のラーメン店「龍鳳」の味に感動し、通い続けていました。

 時は流れ、実家の製麺所「岡田製麺」に勤めていた岡田氏は、交通事故で閉店・療養中だった「龍鳳」の店主と偶然に出会いました。その後、愛してやまないあの味への想いを伝え、ついには作り方を伝授されることとなりました。

 そして1968(昭和43)年、岡田氏は函館駅前のビルに「マメさん」をオープン。

 「龍鳳」の味をグレードアップさせた塩ラーメンは瞬く間に大人気となり、わずか11席の小さな店ながら、1日400杯を売る大繁盛店となりました。しかしオープンから3年後、岡田氏は家業を継ぐため「岡田製麺」に戻ることとなりました。その後、「マメさん」は後継者不在のため、1985(昭和60)年、大人気のまま閉店。かつて岡田氏が惚れ込んだ味は、またしても幻の味となってしまいました。

 復活の詳細はマメさんのHPでご確認いただけます。
 https://www.hakodate.ne.jp/okadamen/road/index.html

 「マメさん」は当館の企画「新横浜着 全国ラーメン紀行」の第8弾として期間限定で出店していただきました。復活したマメさんの味は、元々の「マメさん」の味をベースに新たな郷土のエッセンスを加えた温故知新のラーメンであることから「新・函館ラーメン マメさん」という屋号になりました。

 2001(平成13)年2月25日にラー博の営業を終え、その年の4月、地元函館に帰郷オープンしました。

函館に帰郷オープンした本店(現在は移転)

 地元からの期待も高く、多くのお客様、そしてメディアに紹介され、行列店となりました。2013(平成25)年に函館市末広町から函館市宝来町に移転。2017(平成29)年に「マメさん」創業者の岡田芳也氏はご逝去され、現在はご子息が厨房に立たれています。

 タレは昆布や帆立、カニ等、魚介の旨味を凝縮。スープには「比内鶏」、「山水地鶏」の丸鶏をはじめ、豚、節類、野菜をふんだんに使用。弱火で長時間煮だし濁らせないスープはサッパリとしていながらコクも充分。「マメさん」ゆかりの焦がし背脂の香ばしさがアクセントとなっております。

マメさんゆかりの焦がし背脂

 製麺所の社長でもあった岡田氏だからこそ、麺には特にこだわりました。麺にはうどん用の中力粉などをブレンド。つなぎとしてフノリが練りこまれており、函館ならではの潮の香りを表現するとともに、しなやかでソフトな麺に仕上げました。手間を惜しまず包丁切りにして、食感を損なうことなくご提供いたします。

フノリ入りの麺

 具材はシンプルにチャーシュー、メンマ、ネギ、そして函館ラーメンでは定番のお麩。

函館ラーメンの定番お麩

 次回は、銘店シリーズ第15弾 「支那そばや」さん。鵠沼時代のラーメンを復刻します。

 お楽しみに!!

 新横浜ラーメン博物館公式HP
 https://www.raumen.co.jp/

 ・Twitter:https://twitter.com/ramenmuseum
 ・Instagram:https://www.instagram.com/ramenmuseum/
 ・Facebook:https://www.facebook.com/raumenmuseum
 ・LINE:https://lin.ee/k9AJTKt
 ・YouTube:https://www.youtube.com/rahakutv

文/中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。