新横浜ラーメン博物館のウラ話 第25回

ラー博にまつわるエトセトラ Vol.20

あの銘店をもう一度第13弾 継ぎ足され続ける秘伝の"築炉窯出し"スープ 博多「元祖名島亭」

文●中野正博

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 みなさんこんにちは。2024年の3月に迎える30周年に向けて、これまで実施してきましたさまざまなプロジェクトが、どのように誕生したかというプロセスを、ご紹介していく「ラー博にまつわるエトセトラ」。

 2022年7月より、過去にご出店いただいた約40店舗の銘店を2年間かけて、3週間のリレー形式で出店していただく「あの銘店をもう一度“銘店シリーズ”」と、2022年11月7日より、1994(平成6)年のラー博開業時の8店舗(現在出店中の熊本「こむらさき」を除く)が、3ヶ月前後のリレー形式で出店する「あの銘店をもう一度“94年組”」がスタートしました。おかげさまで大変多くのお客様にお越しいただいております。

前回の記事はこちら: ラー博にまつわるエトセトラ Vol.19 あの銘店をもう一度第12弾 隠れ家的ご当地ラーメン岐阜・飛騨高山「やよいそば」

過去の連載はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 元祖名島亭さんの紹介をする前に2023年3月2日よりあの銘店をもう一度“94年組”の第2弾としてご出店いただきました環七「野方ホープ1994」さんについてご紹介させていただきます。

野方ホープ1994の醤油とんこつ

 環七「野方ホープ1994」は、1988(平成10)年、環七ラーメン戦争の真っ只中に創業。熾烈な競争が繰り広げられる日本有数の激戦区において、今年で35周年を迎え、今もなお愛され続ける銘店。そのラーメンは、背脂たっぷりの見た目でありながら、すっきりとした後味なのが特徴。

 豚骨、鶏、そして芋などの野菜類から抽出される甘みが、一般的な醤油とんこつとも背脂ラーメンとも異なる、複雑に調和した味わいを作り出します。

 今回の出店では、現在よりもワイルドだった1994年当時の味を再現し、今は亡き創業者の小栗冨美代氏に捧げます。出店期間は2023年3月2日(木)~7月17日(月)。当時の味が食べられるのはラー博だけです!

詳細はコチラをご覧ください。https://www.raumen.co.jp/information/news_001622.html

 さて、本題に戻りまして、3週間のリレー形式で行われる銘店シリーズの第13弾は、1987(昭和62)年創業、継ぎ足され続ける秘伝の"築炉釜出し"スープ、博多「元祖名島亭」さんです!出店期間は  2023年3月14日(火)から4月3日(月)。

元祖名島亭の「ラーメン」

 全国のご当地ラーメンで最も知名度があるのが札幌と博多です。

 元祖名島亭の創業は1987年。創業者の城戸 修氏(現在は引退)は長浜の銘店で修業し、独立にあたっては毎日食べても飽きない、味噌汁のような愛されるラーメンを目指しました。

創業者の城戸修さん

 「元祖 名島亭」は、博多の中心地から8kmも離れた住宅街に本店(現在は閉店)を構えているにもかかわらず、地元のみならず県外からも多くの人が訪れる、博多長浜ラーメンの銘店です。

 2008(平成20)年4月に放送されたFBS福岡放送「九州ラーメン総選挙2008」では、地元の支持を得て、見事1位に輝くなど、その実力は県内外のラーメン通をも唸らせています。

名島亭本店(現在は閉店)の行列

 「元祖 名島亭」の命はスープ作りにあります。

 通常、長浜ラーメンのスープはその日の分のみ仕込む『取り切り』が一般的ですが、木戸氏が試行錯誤の末にたどり着いたのが、スープ釜を空にせず、減った分のスープを継ぎ足す『呼び戻し』です。"本物"を求め、本場・久留米から鋳鉄製の羽釜「築炉釜(五右衛門釜)」を取り寄せました。

 火力が強く、良いスープがとれる反面、わずか10分でも目を離すと風味が失われてしまうほど取り扱いが困難。まるで生き物のように刻一刻と状態を変えていくスープを相手に、丁寧にアクを取り、とんこつのうま味をギュッと閉じこめます。

 こうして2日以上かけて丹念に炊き上げ、豚骨の旨みをあますところなく抽出したスープは、熟成されたコクと旨みがありながら、まろやかであっさりとしています。

命のスープを作り出す「築炉釜」

 そして引退された創業者の城戸さんですが、今回、出店期間の3週間だけラー博に来ていただけることとなりました。

 麺は博多・長浜地区特有のコシの強い極細ストレート麺(番手28/自家製麺)を使用。歯切れが良く、シコシコとした食感が愉しめます。

 スープは1987年の創業以来、築炉窯を空にすることなく継ぎ足し続け、コクと旨みを重ねてきた秘伝のスープ。豚頭、げんこつを使用し、丸2日以上かけて作られたスープは、深みのあるまろやかな味わいが特徴です。

 具材はチャーシュー、ネギ、キクラゲとシンプルですが、スープとの相性は抜群です。

 次回は銘店シリーズ第14弾は 函館「マメさん」について発表させていただきます。 お楽しみに!!

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文/中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。