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サイボウズが2022年度の決算・事業説明会を開催

kintoneの売上髙がいよいよ100億円超え エコシステムに強み

2023年03月01日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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2022年度は戦略的に広告宣伝費を投入 kintoneの認知度も向上

 発表した2022年度(2022年1月~12月)決算を見ると、2022年度が戦略的な1年であったことがわかる。

 売上高は前年比19.4%増の220億6700万円、営業利益は57.5%減の6億1100万円、経常利益は32.8%減9億8700万円、当期純利益は12.0%減の6600万円となり、2桁増の増収に対して、営業利益は半減以上となる大幅な減益になった。

連結売上高・営業利益の推移

 この業績についてサイボウズの青野社長は、「2021年度および2022年度の全社スローガンは『BET!』。赤字を出してもいいから徹底的に投資をしようと考えた。市場拡大に向けて、テレビCMを中心に、広告宣伝投資を一気に増やした」とする。

 2022年度の広告宣伝費は64億5200万円。初めて正社員が1000人を超えて1115人となった人件費の78億5400万円と比べても、その規模の大きさがわかる。2020年と比較すると広告宣伝費は2.4倍の規模になっている。

 実は、サイボウズは、クラウド事業の立ち上げ時となった2014年度、2015年度にも、市場開拓を優先した投資を行った経緯がある。当時は、通期見通しでは赤字としていたが、結果として黒字化し、「黒字になってしまった」と異例のコメントが話題となった。やるときは徹底してやりきる青野社長らしいコメントだが、2022年度もそうした覚悟を持って広告宣伝投資を行なった。積極投資のために借入金による資金調達を実施し、借入金は前年比で24億8000万円増の46億8000万円となった。だが、これも2023年1月には、自己株式の一部をリコーに売却した払い込みがあり、約45億円のキャッシュを確保。すでに借入金の41億8000万円を返済しており、財務状況は傷んでいない。

 広告宣伝投資の成果も大きい。2020年度には19%だったkintoneの認知度は、2022年度には28%へと上昇。展示会やセミナーなどでも、kintoneの製品名を認知した来場者が増加し、商談でもプラス効果が生まれているという。

広告宣伝費の効果

パートナービジネスとグローバル展開も現状披露 青野社長のSNSリスクについても回答

 パートナービジネスの実績についても初めて公開した。

 2022年度は、110億300万円となり、国内クラウド関連売上高のうち、61.6%がパートナービジネスによるものであり、「パートナー販売の成長率が高い。約400社が国内で展開し、パートナーから提供される連携サービスは370以上となっている。エコシステム拡大のためのイベントも新たにスタートしている」とした。同社では、2021年にパートナープログラムを大幅にリニューアルし、「Cybozu Partner Network」を開始。パートナー戦略を加速している。

パートナービジネスの拡大

 グローバル展開では、中華圏では前年比9%増の1300社が導入。東南アジアでは16%増となる1090社が導入。米国では25%増の850サブドメインに導入。「2022年3月にはマレーシアに法人を設立し、アジア本社としての機能を持たせる。また米国はアクセルを踏んできたが、まだ苦戦している。リコーとの協業により、米国市場でのkintoneの拡販に取り組む。数年後には飛躍的に成長させることができる」と述べた。また、「グローバルでは匍匐前進(ほふくぜんしん)のようにして事業を進めてきた。日本と同じように強いエコシステムを構築することが大切である。リコーとの提携は大きな期待ができると考えている。日本のクラウドベンダーがグローバルで活躍している例はない。実績を出したい」と語った。

 2023年度(2023年1月~12月)の業績見通しは、売上高が前年比15.5%増の254億9700万円、営業利益は288.4%増の23億7600万円、経常利益は148.1%増の24億5000万円、当期純利益は15億4100万円としている。

 人件費を拡大する一方で、広告宣伝費を抑えることで、増益を目指すことになる。

 青野社長は、2023年度から2025年度までの3年間は、「25BT(2025 and go Beyond with Trust)」を全社スローガンに掲げることを示し、「3年先を見て、さらにその先の5年、10年先を見て事業を行なう。短期的な投資ではなく、先の事業拡大を見据えた投資や取り組みを行うことになる。そして、しっかりと信頼を積み上げていく」とし、「企業理念は株主総会で決議し、それを構成するパーパスは『チームワークあふれる社会を創る』である。そのためのプロダクト、エコシステム、メソッドを提供しつづけていく」と述べた。

全社スローガン(2023~2025年)

 なお、説明会では、視聴参加していた機関投資家や一般投資家などの質問にも回答。青野社長のSNSによる発言が炎上し、サイボウズにとってリスクになっているとの質問に対しては、「問題を起こしていることは認識している。なおすところはなおし、改善をしていく。(SNSによって発言に注目を集める)イーロン・マスクを目指しているわけではない。チームワークあふれる社会を創るためには、その相手が誰であっても、言うべきことは言う。言い方は洗練されたレベルの高いものにしていきたい」と発言。

 また、サイボウズ ビジネスマーケティング本部の林田保本部長は、「社内でもそうした声があり、2022年末に数10人の有志社員とともに話し合いを行った。表現をなおすべきところがあると指摘し、いまは以前とはトーンが違っている。ただし、個人の責任において発言することは社員にも禁止していない。問題が発生した際には、隠さずに社内で話し合いながら解決を図る」と述べた。

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