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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第84回

【第3回】「少年ジャンプ+」編集長細野修平氏による大学特別講義

少年ジャンプ+細野編集長「令和の大ヒットは『ライブ感の醸成』で決まる」

2023年04月02日 15時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII

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今回は、大ヒット戦略の核となるキーワード「ライブ感」について解説

第1回はこちら

ライブ感とは「同時代性・共有・愛着」

 まつもとあつしが担当する大学講義にて2022年に開催された、少年ジャンプ+」編集長・細野修平氏による特別講義もクライマックス。週刊少年ジャンプを超えるための戦略、最後の1つにあたる「ライブ感」の意味とその効用などについて語っていただきました。

「少年ジャンプ+」は自社のオリジナル作品のみで勝負するマンガアプリだが、それでも強く支持されている理由はランキングを見れば一目瞭然だろう。このラインナップの最新話を無料で読めるというアドバンテージは極めて大きい

細野 3つ目が「ライブ感の醸成」。ライブ感とは同時代性、共有、愛着の3つがポイントかなと思っています。

戦略3:ライブ感の醸成

 もうちょっと詳しく説明しますと、ライブ感とは「同時に体験し共有でき、一体感を強化し、作品・IPへの愛着を高めるもの/こと」と定義してみました。これだけだとわからないと思うので、事例を挙げていこうと思います。

ライブ感とは?

 バルス祭りってみなさん聞いたことありますか? 最近、ジブリ作品が若者に観られなくなっているのでは、という記事を読んだので、どうかなと思ったのですが。

 これは『天空の城ラピュタ』という作品のクライマックスに出てくる「バルス」という合言葉を叫ぶタイミングでTwitterでも「バルス」と書き込むというもので、調べると2011年に当時のツイート量の世界新記録を叩き出しているようです。

 それ以降、金曜ロードショーで放送されるたびに「バルス祭り」というかたちで盛り上がりました。2022年8月にもこのバルス祭りが実施されましたが、サーバーも落ちずに保ったということで、Twitter Japanは「今回も耐えられた」とツイートしています。

 このバルス祭りの動きを見ながら私は『「ラピュタ」なんか、みんなもう何十回も見てるじゃん』と思っていたのですが、同じタイミングで体験する、そして共有するということがすごく大事なのだなと実感できた出来事でした。

 これに関連することで、最近は結構TVの復権があるのかなと思っていまして。直近だと大河ドラマの『鎌倉殿の13人』や『水星の魔女』といった作品が、TVで放送されるたびにトレンドに上がっています。奇しくも同じ日曜日に放送されているのですが、この2作品がトレンドの取り合いみたいなことをやっているわけです。

 「同時に体験して(同時代性)、それをみんなでシェアして(共有)、さらに作品への愛につながっていく(愛着)」という、これはまさに先ほど挙げたキーワードを体現していると感じています。

 TVって一時期オワコンだとか「誰も見てないよ」なんてことも言われて、メディア界ではかなり「終わったもの」みたいな流れもあったのですが、じつは「みんなが持っているインフラで同じものを体験できる」という意味では、非常に貴重というか、まだまだパワーを持っていますし、今後もすごく大事なのでは。

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