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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第63回

メタバース、クラウド、働き方、ランサムウェア、ヒット商品予測まで

今年のテック業界はどうなる? 各社「2023年動向予測」まとめ

2023年01月04日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 新年明けましておめでとうございます。本連載、今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、昨年2022年もたくさんの調査データをご紹介しました。それでは今年はテクノロジー業界にとってどのような年になるのでしょうか?

 2023年の初回を飾る今回は“スペシャル版”として、エンタープライズIT、サイバーセキュリティ、経済全体など、さまざまなカテゴリの企業が発表した「2023年の動向予測」をまとめて、ざっくりとご紹介したいと思います。

エンタープライズIT:「メタバース」が働く場所を変えていく

 まずはエンタープライズIT領域を中心とした予測を見てみましょう。

 調査会社のガートナーが発表した「2023年以降に向けた戦略的展望のトップ10」では、その1つとして「メタバース」が取り上げられています。

・完全仮想化のワークスペースが、メタバース・テクノロジーへの投資拡大の30%を占め、2027年末までにオフィス・エクスペリエンスを「描き直す」
●Gartner、IT部門およびユーザーに影響を与え得る、2023年以降に向けた重要な展望を発表(2022年11月2日)

「2023年以降に向けた戦略的展望のトップ10」(出典:ガートナー)

 昨年大きな注目を集めたキーワード「メタバース」ですが、ゲームやエンターテインメントの世界だけでなく「働く場所のバーチャル化」に少なくない影響を与えるという予測はほかにもあります。

 たとえば、リモート接続ソリューションのチームビューワーでは、産業用メタバースについて次のように予測しています。

・AR技術と産業用メタバースは、パンデミック後のリモートワークを支える
・デジタルに精通した人材が産業用メタバースの導入を加速させる
・自社に適した産業用メタバースの選択が進む
●産業用リモート接続ソリューションのチームビューワー、2023年の業界トレンド予測を発表(2022年12月16日)

 自動運転車に関する動向予測を発表したNVIDIAも、自動車の生産やプランニングの過程でメタバースが利用されると予測しています。

・自動車メーカーはメタバースの活用を進め、複数の工場にまたがる製造プロセスを統合的に把握し、業務の効率化を図る
●2023年と自動運転車: メタバースとクラウド技術へ向かう運輸産業(2022年12月20日)

メタバースのシミュレーション環境の中で走行する自律走行試験車(出典:NVIDIA)

 ネットワーク/データセンター事業者の英Coltでも、メタバースのテクノロジーが製造、農業、ヘルスケアなどで利用されるようになると予想しています。

・2023年には、企業はメタバースのユースケースの計画を拡張し、仮想テスト環境として新たな機会や創造性を試行する
●Colt、2023年のテクノロジー・トレンドを予測(2022年12月7日)

 このように、エンタープライズIT領域では今年もメタバースへの注目が続きそうです。

エンタープライズIT:クラウドバイデフォルト時代の新たな課題は

 前述したガートナーのレポートでは、クラウド市場に関して、今後数年間で「クラウドベンダーの淘汰」が進むことが予測されています。それに伴って、クラウド上にあるワークロードをどうするのかといった問題も起こりそうです。

・強力なクラウド・エコシステムにより、2025年末までにクラウドベンダーの30%が集約(淘汰)されるため、顧客の選択肢が少なくなり、ソフトウェアの行く末をコントロールできなくなる
●Gartner、IT部門およびユーザーに影響を与え得る、2023年以降に向けた重要な展望を発表(2022年11月2日)

 IDCは「ICT市場に関する10大動向予測」の中で、ITの“as-a-Service(aaS)”化が進むことに関していくつかの予測を挙げています。IDCでは、世界のIT市場における今後の重要トレンドとして「as-a-Service」と「テックバイワイヤー(自己完結型システム、Software-Defined機能、AIによるクラウドベース制御システム、データ駆動型の意思決定)」を挙げています。

・ as-a-Service支出の急増に伴う評価の厳格化
・ as-a-Serviceプロセスおよびスマートプロダクトの台頭
●IDC Japan、今後5年間に国内ICT市場で起きる重要な動向10項目を発表(2022年12月16日)

エンタープライズIT:働き方、テクノロジー専門人材の動向

 この数年間で大きく変化した「働き方」の動向や、これから求められるテクノロジー人材についても気になるところです。

 ガートナーでは「労働の不安定性」「男女間賃金格差」により生じるビジネス利益/損失を次のように予測しています。

・労働の不安定性は、2025年までに40%の組織において重大なビジネス損失を引き起こし、「獲得からレジリエンスへ」という人材戦略の転換を迫る
・男女間の賃金格差を是正する組織は、2025年までに女性の離職率を30%減らし、人材不足のプレッシャーを軽減する
●Gartner、IT部門およびユーザーに影響を与え得る、2023年以降に向けた重要な展望を発表(2022年11月2日)

 IDCは専門的なITスキルの供給元について次のとおり予測しています。従業員のスキルトレーニングに対する積極的な投資と同時に、システム運用の自動化促進や外部専門家の適切な起用も検討課題となりそうです。

・IT投資効果の最大化を阻む重要スキルの不足
・サービスプロバイダーの専門知識の提供能力が向上
・自動化への信頼確立が成功の重要条件
●IDC Japan、今後5年間に国内ICT市場で起きる重要な動向10項目を発表(2022年12月16日)

 TeamViewerでは、エンジニアのトレーニングについて次のように予測しています。社会の高齢化が進み熟練労働者不足が進む中で、若年層へのスキルトランスファー(技術移転)が必要となり、そのトレーニングではAR技術が活用されることになるという予測です。

・アジアでの人口動態の急激な変化が、技術者のトレーニング需要を高める ●産業用リモート接続ソリューションのチームビューワー、2023年の業界トレンド予測を発表(2022年12月16日)

 IT分野における人手不足は2023年も変わらず大きな課題であり、後述するとおりセキュリティ領域でも多くのベンダーが動向予測の中で触れています。

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