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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第292回

育ての親が違う双子「GRスープラ」と「BMW Z4」にクルマ文化と面白さをみた

2023年01月05日 12時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) 編集●ASCII

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収納はクローズドボディーのスープラに軍配だが……

GRスープラのラゲッジスペース

Z4のラゲッジスペース

 スポーツカーといえども、収納は重要な要素です。Z4の方が幌を収納することもあって、どうしても容積は少なくなるのは仕方のないところ。GRスープラは広いバックドアを開けて収納はとてもラク。ですがバックドアは結構な重さがあったりします。

 シート裏に仕切り板の有無も違いとして挙げられます。ドライバーが乗り込む際、カバンを助手席のシートバックに置こうとすると、Z4はアタッシュケース程度の薄さなら入りますが、ボストンバックを置くことは無理。GRスープラは荷物のサイズに制限はないものの、荷室に仕切り板がないため、運転中カバンが右にいったり、左に行ったり……。運転後にカバンを取って出る際に、バックドアを開かなければならない、ということになったりします。

スポーツカーを意識させるスープラ
グランドツアラーのZ4

 運転フィールは、否応なく常にスポーツカーを意識させるGRスープラに対して、スポーティーテイストで留めるZ4とまったくの別物。GRスープラのサスペンションは硬めで、フラットではない路面では、結構強めのショックをドライバーに伝えてきます。Z4も相応に硬いのですが、そのショックの角は丸みを帯びているといえそう。

 そしてアクセルやハンドルの操作に敏感に反応するGRスープラに対して、Z4は普通のクルマのような、操作系に遊びを感じるところも。それは挙動にも表れており、Z4は安定志向でリアに加重がしっかりかかっている印象で、GRスープラはサイズ感を忘れる機敏で軽快な反応です。スポーツカー好きにはたまらないフィールでしょう。

 視界は結構異なり、GRスープラは上下方向がかなり狭い印象。ですので、信号待ちで停止線に停めると、体をハンドルに近づけない限り信号を見ることができない時があります。ゆえに停止線のかなり前に車を止めることになることも。またルームミラーの位置が低いため、常にルームミラーが目に入ります。後方に白と黒のクラウンの有無を確認するにはとても便利。

 居住性に目をむけると、両車とも常に排気音が室内に聞こえるのですが、その音量はGRスープラの方が大きい雰囲気。音質は、乾いた感じのZ4に対して、どこか湿り気を帯びた低音を響かせるGRスープラという雰囲気。どちらも同じマフラーらしいのですが、かなり印象が異なります。GRスープラの場合、助手席の人の声が小さいと聞き直すこともありました。

 話を走りのことに戻しましょう。お楽しみのSPORTモードです。GRスープラは、もともと俊敏だった印象が、より研ぎ澄まされるといいますか、抑制されていた本能を開放したかのような暴れっぷりをみせます。ちょっと公道で使うのは怖いかも。Z4はGRスープラの標準状態に変わるという印象。それ以上に驚いたのは排気音がかなり太くなり、さらにアクセルオフ時にブリッピングをするなど、演出面でも耳を楽しませてくれます。街乗りでも使いたくなるSPORTモードといえるでしょう。

 さて、筆者ならZ4とGRスープラのどちらを選ぶか? 本音を言えば「両方欲しい」のですが、どちらかといえばZ4です。ですが20代や30代の血気盛んな時期なら、GRスープラを選択するでしょう。GRスープラの車内に轟く排気音にハードな乗り味は、スポーツカー好きの心をつかんで離さない魅力にあふれていて、「このクルマを作った人は、いい意味で変態だな」と思いますし、作り上げたトヨタには拍手喝采です。

 年を重ねると、ハードな演出のスポーツカーに長時間乗ることが辛くなるのです。BMWのZ4は、スポーツカーというよりも、スポーティーなグランドツーリングカーといった印象。このクルマに乗って知らない土地を、ルーフを開けて走ったら楽しいだろうなという夢を抱かせるのです。ここに、高級車を作り続けてきたBMWの教養を感じずにはいられません。

 GRスープラとZ4、生まれは同じでも、育て方の違いでここまでクルマは変わるのかと驚いた次第。そこには自動車メーカーの個性がきちんとあり、グローバル化が進んでもお国柄は出るものなのだなと、改めて感じました。

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