連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第61回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 2022年12月10日~12月16日
DXで活用効果が高いデータ種別、ビジネス旅行の回復、インボイス制度の免税事業者への取引影響、ほか
2022年12月19日 14時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2022年12月10日~12月16日)は、DXに向けたデータ利活用とデータ流通の進捗、ビジネス旅行/出張の回復、インボイス制度への対応状況、データ成熟度、ブラックフライデーの売上、米国オンライン価格の下落についてのデータを紹介します。
■[DX][データ活用]DXのデータ利活用、効果が高いのは財務、人材など、外部データはGPSも多く挙がる(IDC Japan、12月16日)
・データ利活用の効果が高いデータは「財務」「人材」など
・4分の1が「データ運用基盤に関するスキル不足」
・「データ流通」の取り組みは、購入/取得、販売/提供とも10~15%
DXを目的にデータ利活用を進める企業30社を対象とした「2022年 データ利活用統括者調査」より。データ利活用の効果が高いデータ種別として、自社取得と外部取得/入手の双方で「財務」や「人材」に関するデータが上位に挙がった。外部から入手したデータでは「人やモノの位置情報/GPSデータ」も高い。データを販売/提供または購入/取得する「データ流通」の利用状況については、「すでに実施している」企業は10~15%、「計画進行中」を含めると約25%となっている。
データ利活用で効果が高いデータの種類として、自社で取得したデータ(左)は「財務/会計/金融サービス」は26.4%、外部組織から取得/購入したデータ(右)は「人材/能力/教育関連」が12.5%で最多だった(出典:IDC Japan)
■[ビジネス]フライトの提供座席数が2022年末には2019年比15%減まで回復、東京の客室単価は2019年比189ドル上昇(FCMトラベル ジャパン、12月15日)
・4月~5月の法人利用はエコノミーが2019年同期比40%増、ビジネスは同23%増
・2022年Q2の世界平均提供可能座席数は2019年対比87%まで戻す
・2022年Q2の客室単価は北米、アジア、オセアニアで2019年同期比28ドル増、東京は189ドル上昇
出張管理会社のFMCトラベルが、2022年第2四半期のビジネス旅行について自社データとCiriumの航空データから作成。コロナ禍で停止していたビジネス旅行の需要が戻りつつあり、上位30路線における4~5月の法人利用は、コロナ前の2019年同時期比でエコノミークラス40%増、ビジネスクラス23%増を記録。ただし円安、インフレ、燃料費高騰、労働力不足など、航空業界はさまざまな課題を抱えていることも指摘している。労働力不足の影響で空港の利用制限やフライトのキャンセルも発生しており、当面の間は人手不足、便数減、需要急増などの要素による混乱が続くと予想する。
■[インボイス]インボイス制度に向け具体的に動く企業は41%、免税事業者が対応しない場合「取引に影響ある」は7割(ウイングアーク1st、12月16日)
・インボイス制度対応に向け具体的に動いている企業は41%
・免税事業者の取引先に「課税事業者への移行を依頼した」企業は47%
・免税事業者が課税事業者への転換をしなかったら「今後の取引に影響する」は78%
年商100億円以上の企業の請求書業務に携わる500人を対象に、インボイス制度に向けた企業間取引の電子化対応について聞いた。調査期間は12月初旬。インボイス制度への対応に向けて41%が「具体的に動いている」と回答、前回(2022年9月)の35.8%から増加した。「適格請求書発行事業者」については、登録申請に向け「具体的に動いている」は35.6%、前回の27.7%から7.9ポイント増えた。インボイス制度が施行に入る2023年10月以降の経理業務の運用シミュレーションや資産を行っているという企業は61.5%だった。47.4%の企業が、免税事業者の取引先に「課税事業者への移行を依頼した」と回答、課税事業者に移行しない場合の取引への影響については、78.7%が「影響がある」と述べている。
■[データ]データ成熟度は5段階中「3」が最多、データから価値創出できず売上、イノベーション、顧客体験などに影響(ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)、12月13日)
・データ成熟度レベルのボリュームゾーンは「レベル3(データ洞察)」
・データから価値創出できないために阻害されているのは「売上拡大」(30%)、「イノベーション」(28%)など
・データ分析では「表計算ソフト」(29%)などに依存、機械学習などAIを用いず
日本を含む19カ国の企業・官公庁に勤務する8600人以上の意思決定者に、データ活用の実態について調べた。同社はデータ成熟度を5レベルで定義しており、「レベル1(データ無秩序)」は14%、「レベル2(データ報告)」は29%、「レベル3(データ洞察)」は37%、「レベル4(データ中心)」は17%、「レベル5(データ経済性)」は3%という分布だった。データから価値を創出することができないために「売上の拡大」(30%)、「イノベーション」(28%)、「顧客体験の向上」(24%)などが阻害されている。HPEでは、データから価値を創出するためには「戦略、組織、テクノロジーのギャップ解消が必要」と指摘している。
■[生活][EC]ブラックフライデー含むサイバーウイークの売上高は前年比2%増、ソーシャルメディアからの流入が過去最高の約10%に(セールスフォース・ジャパン、12月15日)
・2022年の世界オンライン売上高は過去最高の2810億ドル、前年比2%増
・ECトラフィックの76%がモバイル、販売に占めるソーシャルメディアからの流入は10%
・割引率が高いカテゴリは「一般衣料品」の34%
Salesforceが自社ツールから収集したショッピングデータなどから、2022年のブラックフライデーとサイバーマンデーを含むサイバーウイークの動向を割り出した。2022年のサイバーウイーク期間中、全世界のオンライン売上高は過去最高の2810億ドルで、2021年から2%増えた。米国では前年比9%増の680億ドル。ECトラフィックの76%はモバイル経由であり、ソーシャルメディアからの流入による販売比率は約10%(売上額は前年比22%増)だった。
■[生活][EC]米国オンライン価格は3ヶ月連続で前月比下回る、EC全体のインフレ減速か?(アドビ、12月14日)
・2022年11月のオンライン価格は前年同月比1.9%下落、前月比3.2%下落
・前年同月比ベースでは2020年5月以来最大の下落幅
・値上げカテゴリは「食料品」(前月比0.33%)など3種にとどまり、15種は値下げ
「Adobe Analytics」を使って割り出した米国のデジタル経済指標「Adobe Digital Price Index(DPI)」の最新版。ブラックフライデーとサイバーマンデーの影響もあり、2022年11月のオンライン価格は前年同月比1.9%、前月比3.2%下落した。18カテゴリ中15カテゴリが前月比で価格下落しており、中でも家電は前年同月比13.4%減、前月比4.5%減と、2019年12月の下落幅(前年同月比12.8%減)を更新した。価格が上昇したのは食料品、一般用医薬品、医療機器の3カテゴリにとどまった。

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