「Salesforce World Tour Tokyo」開催、統合で「Digital HQ」ビジョンを加速させるSlack
新機能「Slack canvas」もお披露目、進化するSalesforce+Slack統合
2022年12月07日 08時00分更新
Salesforceによる買収から1年超が経過し、Slackが「Digital HQ」ビジョンを加速させている。2022年11月29日と30日、ハイブリッド開催となったSalesforceの年次イベント「Salesforce World Tour Tokyo」では、SlackがDigital HQで実現する新しい働き方が紹介された。
本記事ではSalesforceとSlackの緊密なインテグレーション(機能連携)によって生まれる価値、両社統合の成果となる新機能「Slack canvas」(2023年に一般提供開始)の紹介、またSalesforceとSlackの連携を活用している顧客企業の評価などをまとめてお伝えしたい。
1年間でSalesforceと15のインテグレーションを実現
Slackが取り組む機能強化の方向性のひとつが「Salesforceとの統合」だ。1日目の基調講演の中で、Salesforce 共同創業者兼CTOのパーカー・ハリス氏は、「Digital HQはSlack単体で実現できるわけではない。Salesforceの『Customer 360』もそこにつながる」と両サービス統合のメリットをアピールし、買収以後のおよそ1年で「15の新しいインテグレーション(連携機能)を実現した」と紹介した。
たとえば「Sales Cloud for Slack」では、ある商談の社内関係者が参加するSlackチャンネルに「Salesforce Sales Cloud」を連携させて、商談に関するアップデート情報を共有したり、Slack側からService Cloudに情報を入力したりすることができる。
「オフィスの課題克服」だけでなく「オフィスの長所再現」も
2日目に行われたSlack+Salesforceの統合/連携に関するセッションでは、セールスフォース・ジャパン Slack事業統括の伊藤哲志氏が、詳細を説明した。
伊藤氏はまず、Digital HQとは「デジタル上の職場」という意味だと説明する。「ITやクラウドを活用して仕事をすることがDigital HQ」であり、そのためのツールとしてSlackが優れる点として「オフィスの課題を克服する」「オフィスの長所を再現する」「Digital HQならではの価値を創出する」の3つの特徴を挙げた。
1つ目の「オフィスの課題克服」には、個々人でサイロ化していた従来のメールボックスと異なりトピックごとに情報を整理/共有できる「チャンネル」、動画や音声のメッセージを使って非同期コミュニケーションができる「クリップ」、定型化した業務プロセスを自動化する「ワークフロー」、組織外のSlackユーザーとセキュアかつ効率的につながる「Slack コネクト」といった機能群が有効だ。
2つ目の「オフィスの長所を再現する」機能として伊藤氏が紹介したのは、2021年に発表した「Slack ハドルミーティング」だ。この機能では、チーム内の会話をクイックに行えるため、オフィスで「いまちょっといい?」と気軽に話しかけていた感覚をデジタルで再現できる。音声による会話に加えて、2022年のアップデートではビデオ通話にも対応、画面共有やリアクションといった機能を拡充している。
「Slackの良いところは非同期でのコミュニケーションだが、ハドルミーティングにより同期型のコミュニケーションも追加された。同期と非同期の両方のコミュニケーションがあることにより、Digital HQ上でより生産性の高いコラボレーションが実現できる」(伊藤氏)
Slackチャンネルのあらゆる情報を整理/共有できる「Slack canvas」
それでは、3つ目に挙げた「Digital HQならではの価値」とはどのようなものか? それは、Salesforceをはじめとするさまざまな業務アプリケーション間の統合と連携、それによる大幅な効率化や生産性の向上だ。
伊藤氏はまず、Slackと連携できるアプリは2500種類以上あり、Salesforceと15の機能連携を新たに実現したことを紹介した。このような統合の成果はすでに出ている。伊藤氏の紹介した事例によると、Slackとの連携によって開発部門の市場投入までのスピードが16%改善した、案件解決までの時間を26%改善できた、といった成果が出ているという。
そして「Salesforceとの統合の際たる例」と伊藤氏が紹介したのが、Slack canvasである。Salesforceが9月に米国で開催した年次イベント「Dreamforce 2022」では、Salesforceが提供してきた「Quip」をSlackに吸収/統合し、Slack canvasとして提供することが発表された。
「Quipは便利。そのQuipの良さをSlackと連携させたらすごくいいに違いない――。実はここがSalesforceがSlackを買収した原点だ」(伊藤氏)
Slack canvasは、テキストや画像、動画、添付ファイル、外部リンクなどあらゆる情報を一カ所に集めたドキュメント=“canvas(キャンバス)”を作ることで、Slackチャンネル内の情報整理や共有が簡単にできるというコンセプトのツールだ。Slackに統合したことで、canvasにメッセージやチャンネル、ワークフロー、連携アプリのデータもまとめられるようになったほか、canvasへのコメントで「@メンション」を使ってSlack内に通知することもできる。
「Slackを使っていて困るのは『情報の流れが速すぎる』こと。どんどんメッセージが流れてしまい、結局スレッドをすべてさかのぼらないと、いまどうなっているのかがわからないこともある。誰かが(議論の中で決まった事柄を)canvasにまとめて整理し、Slackで共有すれば解決できる」(伊藤氏)
ライブデモのパートでは、新しいチームメンバーへの業務引き継ぎを、Slackの各種機能を使って効率的に行う一連のプロセスが披露された。
まずはSlack コネクトだ。引き継ぎを行う先輩メンバーは、取引先とSlackコネクトでつながっているチャンネルに新メンバーを招待し、取引先にも紹介する。新メンバーはチャンネル内で過去のやり取りや添付ファイルを参照し、気になるキーワードは検索することもできる。つまり自分自身で能動的に情報をキャッチアップすることが可能だ。
さらに先輩社員は、引き継ぎに関する情報をSlack canvasでまとめ、新メンバーへの引継書として共有する。引き継ぎでやるべき項目をチェックリストにまとめ、そのステータスを管理することも可能だ。
テキストでのやり取りでは伝わりにくい内容については、画面共有付きのハドルミーティングを行って会話し、新メンバーの疑問も解消できる。
さらにSales Cloudとの統合により、Salesforce側のレコード更新や案件クローズの情報がリアルタイムにSlackチャンネルへ通知され、上司や同僚がリアクションするといった様子も披露された。
LIFULL:「コードを1行も書かずに統合でき、感動した」
現在では20万以上のブランドが「Digital HQ」としてSlackを採用しており、その多くがSalesforceとの組み合わせでさらなるメリットを得ているという。同セッションではそんな1社として、不動産情報サービスのLIFULL テクノロジー本部の薮田綾一氏が登壇し、具体的な活用の内容や評価を語った。
LIFULLでは8年前にSalesforceを導入して、営業業務などに活用してきた。また「デジタルワークプレイス構想」の下で、Slackも導入している。しかし、Slackを業務連絡の中心に据えたことで、メールを見ない、Salesforceの「Chatter」も使わないようになり、Salesforceから届く連絡メールのチェックと管理が課題になっていたという。
「SalesforceとSlackの連携は(以前から)可能だったものの、開発の必要があり、ハードルが高かった。積極的には(連携は)できなかった」(藪田氏)
そんな課題があったところに、SalesforceとSlackの連携が容易になったという案内があった。半信半疑で試した結果、「正直なところ、めちゃめちゃ感動しました」(藪田氏)。コードを1行も書くことなくノーコードで連携することができ、さらにフローを使うことで「思い描いたような使い方ができている」と藪田氏は高く評価する。
今後はSalesforceからのメール通知を新規実装せず、Slackでの通知に切り替えていく方針だ。「本当に簡単に連携できるので、まだの方はぜひ試していただきたいと思っている」(藪田氏)。
(提供:Slack)