実現の課題は組織と人材 DXを進めるべく、今なにをすべきか?
LINE AI、ヤンマー、東芝が考えるDXの形 updataDX22の基調講演レポート
2022年12月02日 09時00分更新
ライブアナリスティックのThoughtSpotと協業
壇上に戻った田中氏はDXを阻害する人材の課題について、「他国ではデジタル人材は専門の知識が必要だと考えられているが、日本では意識を持っていれば、誰でもデジタル人材になれる素晴らしい国」と語る。とはいえ、デジタルスキルは後から身につける必要があるため、いわゆるリスキリングも必要になる。しかし、トップからのかけ声に、果たして従業員はついてくるのか?会社への忠誠心や働きがいにあたるエンゲージメントが田中氏の問題意識だ。
田中氏は従業員エンゲージメントの国際比較のデータを披露し、日本は非常に低い点を指摘する。「100社あったら、エンゲージメントが高いのは5社しかない。残りの95社はあまり高くない。経営が一生懸命やっても、従業員に火がつかない。言われたことはやってくれるけど、自発的にやってくれることはないですかね」と聴衆に問いかける。DXを進めるためのそもそもの土壌が育っていないという指摘だ。
経営層の意識改革だけではなく、従業員に対するエンゲージメントが今こそ必要。でも、従業員が喜ぶことを施策として盛り込めばいいわけではない。「各個人が成長を実感できる方が絶対にいい。それを実現できるのは経営者やマネジメントのみなさんなんです」とアピールする。
では、ウイングアーク1stはDXをどう捉えて、どう支援しているか? 田中氏はDXは、従来の「企業内DX」だけではなく「企業間DX」「人材DX」の3つ、そしてDXによって何がもたらされるのかという企業のビジョンが必要だとアピールする。その上で、企業内DXにおいてはMotionBoardを代表とするデータ活用ツール、企業間DXにおいてはinvoiceAgent のような取引のデジタル化などを提供する。
今回はアライアンスのアップデートとして、北米のユニコーン企業であるThoughtSpotとの協業が発表され、セルフサービスBI「ThoghtSpot」とデータ分析基盤「Dr.Sum Cloud」との連携が可能になった。
ビデオメッセージで登壇したThoughtSpot Inc. CEO スディーシュ・ナイア氏は、「顧客はサービス購入より前に自分のことを知ってほしがっている」とハイパーパーソナライズの世界を予見。顧客の嗜好が日々変化する中、スナップショットでのデータ分析はすでに限界で、ライブでのアナリスティックが重要になるとアピールした。その上で、今回の協業については、「日本の高品質な考え方とわれわれのイノベーションが革新性をもたらす」と説明し、世界をターゲットにしていきたいと抱負を語った。
LINE AIはDXにどのように貢献できるのか?
後半の1時間は3人のゲストが登壇した。一人目はLINE AIカンパニーの道下和良氏がAIの活用について講演した。
国内9200万ものMAUを抱えるLINEは、「Closing the Distance」を掲げて事業を展開している。最近はLife on LINEのビジョンの元、プラットフォームとしての展開を進めており、ゲームやエンタメ、ショッピング、決済などさまざまなサービスを提供している。そして、LINEのAI技術も生活に根付くこうしたLINEの利用シーンから培われている。画像認識1つとっても、撮影して、共有するというLINEの操作を便利にするために研究開発されたものだ。
そんなLINEが提供するAIソリューションとしては、AI OCRの「CLOVA OCR」、対話業務を効率化する「LINE AiCall」、開発中の「HyperCLOVA」を用いたレポーティング機能など。共通しているのは、日本語習得への積極的な投資だ。「日本語の認識、理解、発話に関してはグローバルプレイヤーに比べても絶対的な自信を持っている」と道下氏はアピールする。
ウイングアーク1stの製品とも連携するCLOVA OCRは、昭和以前の資料にも対応するOCRモデルを開発することで、国立国際図書館の資料の全文デジタル化を実現した。また、LINE AiCallはヤマト運輸の「すぐつながるコールセンター」で採用されており、今まで有人で対応していた月100万件を超える集荷の入電の7割をAIオペレーターがさばいている。その他、AiCallは保険会社の傷害保険や事故保険の契約窓口のほか、ステーキハウスのピータールーガーの予約受付、自治体ではコロナ患者の症状確認にも用いられているという。
そして、「次世代大規模汎用言語AI」を謳うHyper CLOVA。認識から生成へということで、特定の文章から要約文を自動生成したり、箇条書きからビジネス文書として違和感のないメール本文を生成することが可能になる。また、こうした基礎技術の応用として、自然言語でオンラインのアバターに指示を出す「Text to Action」も実現できそう。道下氏は、「今、業務アプリケーションを利用するのにキーボードを使うと思いますが、キーボードって150年前に作られたもの。つまり、ユーザーインターフェイスの分野って、150年間イノベーションがない。でも、声である人格に対して指示をするという世界はそう遠くない」は語る。
ウイングアーク1stとは、invoiceAgentとの連携を強めている。今まではinvoiceAgentからCLOVA OCRをAPI経由で呼び出す形で利用してきたが、今後はCLOVA OCRで読み取った内容を電帳法の要件にのっとってinvoiceAgentに登録するといった双方向のやりとりも実現できるという。「デジタルの体験価値はどんどん進化していく。そういったところをみなさまにお届けしてまいりたい」と道下氏はアピールする。