マイクロンメモリジャパン株式会社
先進プロセス技術を採用したLPDDR5Xをモバイルエコシステムにサンプル出荷開始
2022年11月1日、アイダホ州ボイシ発 — Micron Technology, Inc.(NASDAQ:MU、マイクロンテクノロジー)は本日、特定のスマートフォンメーカーとチップセット製造パートナー向けに1β(1ベータ) DRAMテクノロジーの認定サンプルを出荷するとともに、世界最先端の1β ノードDRAMの量産体制が整ったと発表しました。マイクロンはこの独自の次世代プロセステクノロジーを低消費電力ダブルデータレートの5X(LPDDR5X)モバイルメモリに実装する予定です。このモバイルメモリは1秒当たり8.5ギガビット(Gbps)の最高スピードグレードを実現します。1βノードはパフォーマンスからビット密度、電力効率にわたり大幅な進展を遂げ、市場に多大なメリットをもたらします。1β DRAMはモバイル領域に限らず、その低レイテンシー、低消費電力、高パフォーマンスの特長により、自動運転のインテリジェント・ビークルからデータセンターまで、極めて高い応答性が要求されるアプリケーションやリアルタイムのサービス、パーソナライズ、コンテキストベースの体験の提供に不可欠なコンポーネントになります。
マイクロンは、2021年に量産を開始した1α(1アルファ)製品により、市場リーダーシップを確立しましたが、世界最先端のDRAMテクノロジーとなる1βプロセスノードにより、そのリーダーシップがさらに堅固になものになります。この1βノードは、電力効率が約15%向上し、ビット密度は35%以上増加し*1、ダイ当たりの容量で16Gbを実現します。
マイクロンのテクノロジー&製品担当エグゼクティブバイスプレジデントのスコット・デボアは「1β DRAMの発表は、メモリイノベーションのさらなる前進を示しています。マイクロン独自のマルチパターニング・リソグラフィに先進プロセステクノロジーと最先端の材料を組み合わせ、新たな息吹を吹き込みました。この1βノードは、かつてない水準のメモリウエハ当たりビット数を有する世界最先端のDRAMテクノロジーとなり、エッジからクラウドまで、データリッチ、インテリジェントかつ消費電力効率の高いテクノロジーを次世代へと導く基盤を築きます」と述べています。
今回の発表は、マイクロンが今年7月に発表した世界初の232層NANDの出荷開始に続き、パフォーマンスと面積当たりの容量密度を従来にない水準へと引き上げるアーキテクチャー上の重要なマイルストーンです。マイクロンはこれらの新たな「世界初」をもとに、メモリとストレージの全体にわたり市場でイノベーションをけん引していきます。これらのイノベーションはともにマイクロンの先進の研究開発(R&D)と製造プロセステクノロジーに根ざしています。
モバイルエコシステムは、LPDDR5Xのサンプル出荷により、次世代のモバイルイノベーションの可能性を拓き、最先端のスマートフォン体験を可能にする、1β DRAMの大幅な進展によるメリットを最初に享受すると同時に消費電力を低減することができ、ます。1βの高速化と高密度化により、広帯域幅のユースケースでは応答性が高まり、大量のデータ処理が求められる5GやAIのアプリケーションを同時併用する場合でも、よりスムーズな起動やダウンロードが可能になります。加えて、1βベースのLPDDR5Xはスマートフォンのカメラの起動を高速化し、ナイトモードやポートレートモードでの撮影を鮮明にするだけでなく、手ブレのない高解像度4Kビデオの録画や、スマートフォンでの直感的な動画編集も可能にします。
1βプロセステクノロジーはビット当たりの消費電力が低く、スマートフォン市場で最も電力効率の高いメモリテクノロジーで、スマートフォンメーカーは優れたバッテリー効率を備えたデバイスを設計できます。この利点は、電力消費とデータ負荷の高いアプリを楽しみつつ、バッテリーを長持ちさせたいユーザーにとって特に重要です。
この省電力設計は、JEDECの新たな仕様である動的電圧・周波数スケーリング拡張コア(eDVFSC) という手法を1βベースのLPDDR5Xに実装することで実現しました。従来の倍増となる最大3,200Mbps*2までサポートする周波数ティアのeDVFSCの追加により、省電力制御が改善され、エンドユーザー個々の使用パターンに応じた、より効率の高い電源使用が可能になります。
微細リソグラフィとナノ製造で物理の法則に挑むマイクロン
マイクロンが実現した業界初の1βノードは、フットプリントの縮小とメモリ容量の拡大を両立させ、データのビット当たりコストを低減します。DRAMの微細化の成否はこの能力に起因し、半導体面積の1ミリメートル四方程度に可能な限り高速で容量の大きいメモリを実装するには、指の爪とほぼ同じサイズのチップ上に数十億のメモリセルが収まるように回路を縮小させなければなりません。プロセスノードの進化とともに、半導体業界はこの数十年の間1~2年ごとにデバイスの小型化を図ってきましたが、チップ自体の小型化が進むにつれて、物理の法則に従いウエハ上に回路パターンを形成していくことは困難になっています。
このような技術的な課題の解決策として、業界では極紫外線(EUV)光を使用する新たな手法への転換もみられる一方、マイクロンはこの新興技術は採用せず、実証済みの先進ナノ製造とリソグラフィ技術の利用に注力しました。そしてマイクロンは独自の先進マルチパターニング手法と液浸技術を適用し、微細な特性を最高レベルの精度でパターン形成する手法を取り入れました。この縮小化により大容量化が実現し、小型フォームファクターのデバイス設計が可能になり、スマートフォンやIoTデバイスでの省スペースのフットプリントにより大容量のメモリを実装できます。
マイクロンは1βと1αで競争優位性を維持するため、この数年間で独自の卓越した製造技術とエンジニアリング能力を積極的に進化させ、R&Dもけん引してきました。このようなイノベーションの加速化によりマイクロンは競合他社よりも1年早く独自の1αノードを実現し、マイクロンの歴史上初めて、DRAMとNANDの両方でリーダーシップを確立しました*3。 マイクロンは、最新の高度なオートメーション機能やAIを活用できるだけでなくサステナブルな製造施設を目指して、自社製造施設のトランスフォーメーションにこの数年間で数十億ドルの追加投資を続けてきました。これには広島工場への投資も含まれ、1βベースのDRAMは同工場で量産が予定されています。
1βがユビキタスな基盤を築き、相互接続のサステナブルな世界を推進
M2M通信やAI、マシンラーニング(機械学習)のような電力消費の大きいユースケースの普及に伴い、電力効率の高いテクノロジーの重要性が増し、特に高いサステナビリティ目標を掲げ、運用コストの削減を迫られている企業にはこの消費電力が喫緊の課題となっています。ある研究チームが公開しているレポートによると、単一のAIモデルの学習に伴い排出されるCO2の量は、米国の乗用車1台のライフタイムに排出されるCO2の量の5倍に達するとされています。また情報通信テクノロジーが消費する電力量は2030年までに世界全体の電力の20%になると予測されています。
マイクロンの1β DRAMノードは、高速、ユビキタスかつ消費電力効率の高いメモリによりコネクテッドな世界の進化を推進する多用途な基盤となり、デジタル化や最適化、自動化の原動力になります。1βノードで製造されるこの高密度で低消費電力のメモリは、エッジからクラウドにいたるインテリジェント化の普及とともに、大量のデータを消費するスマート機器やシステム、アプリケーション間でより消費電力効率の高いデータフローを実現します。マイクロンは今後1年の間に、1β製品のポートフォリオ拡大を図り、組込み、データセンター、クライアント、コンシューマー向けの全体にわたり、また産業用途から自動車産業向けまで幅広く、グラフィックスメモリや広帯域幅メモリを含め展開していく予定です。
注記:
*1: 前世代1αとの比較
*2: 1αのDVFSCで実現した1,600Mbsとの比較
*3: 2020年11月に発表した業界初となる176層NANDの量産出荷に続く発表
Micron Technology, Inc.について
マイクロンは、情報活用のあり方を変革し、すべての人々の生活を豊かにするために、革新的なメモリおよびストレージ・ソリューションを提供するリーディングカンパニーです。顧客第一主義を貫き、テクノロジーの最前線でリーダーシップを発揮し続け、洗練された製造技術と事業運営を妥協なく追求するマイクロンの製品ポートフォリオは、DRAM、NAND、NORの各種メモリからストレージ製品まで多岐にわたり、Micron(R)またはCrucial(R)のブランドを冠した高性能な製品を多数展開しています。マイクロンで生まれた数々のイノベーションは、データの活用を加速すると同時に、人工知能や5Gといった最先端分野の進歩の基盤として、データセンターからインテリジェント・エッジ、さらにはクライアントコンピューターとモバイルをまたいだユーザーエクスペリエンスまで、さまざまな事業機会を新たに生み出し続けています。Micron Technology, Inc.(Nasdaq: MU)に関する詳細は、micron.comをご覧ください。(英語)