キャッシュ容量の大型化とメモリーの高速化などで性能が向上
2つ目がキャッシュ容量の大型化とメモリーの高速化である。Raptor Lakeでは 以下の2次キャッシュを搭載しており、2次キャッシュだけで32MBもの大容量キャッシュになった。
- P-Coreあたり2MB
- E-Core Cluster(E-Core×4)あたり4MB(共有)
ちなみにAlder Lakeでは、以下のとおり合計14MBでしかない。
- P-Coreあたり1.25MB
- E-Core Clusterあたり2MB(共有)
3次キャッシュは引き続き、以下のとおりであるが、Raptor LakeではP-Core×8+E-Core Cluster×4になった関係で、3次キャッシュの合計は36MBに増量された(Alder Lakeは30MB)。
- P-Coreあたり3MB
- E-Core Clusterあたり3MB
ただ2次キャッシュと3次キャッシュの総容量がほとんど変わらなくなった関係で、3次キャッシュの扱い方を少し考えたらしい。
今回新たにDynamic INI(Inclusive/Non Inclusive)方式が採用されることになった。動的に2次/3次キャッシュのInclusive/Non-Inclusiveを切り替えられる、というものだ。Alder LakeはNon-Inclusive一択だったが、このあたりに若干の手が入った模様だ。
もう1つの違いは、メモリーである。1DPC(DIMM per Channel)なら最大5600MHz、2DPCでも4400MHzでの駆動が定格で可能になった。
Alder Lakeでは定格ではそれぞれ4800MHz、4000MHzだったから、これも性能に寄与することになる(効果は1~2%のオーダーであるが)。そしてメモリーの高速化に対応するため、内部のファブリックも最大5GHzまで動作周波数を引き上げられるように変更された。
最後のファクターがスレッドである。これはコアそのものではなく、Thread Directorの変更によるものだ。
大きな違いは、Thread Classの管理に、新たに機械学習を利用した仕組み(Perceptronベースという話であったが、詳細は公開されていない)を利用することで、よりE-Coreを積極的に利用できるようになった、というものだ。
もともとのThread Directorの仕組みは、システムの負荷が低い時にはP-Coreを休止させてE-Coreを活用することで消費電力を減らし、一方でシステムの負荷が上がった時にはP-Coreに切り替えて処理性能の向上(というか処理時間の短縮)を図るというものだった。
この原則はRaptor Lakeも変わらないが、これに加えて「さらに負荷が高いときは、P-CoreだけでなくE-Coreもフルにブン回す」というのがRaptor Lakeである。
下の画像はまだ負荷がそれほど高くないケースで、E-Coreは煩雑に負荷が0になる(P-Coreはかなり上に張り付いている)が、さらに高くなるとE-Coreも常時100%に張り付く格好になる。
要するにE-Coreも積極的に利用するようにしたのがRaptor Lakeの変更点で、これによりContents Creationなどの処理では30%以上の性能向上が見られる、というのがインテルの説明である。
説明会では他にもいくつか性能に関するスライドが出てきたが、間もなく実機でのベンチマーク結果も公開されるだろうことと、比較対象がZen 3ベースのRyzen 9 5950Xであり(まだRyzen 9 7950Xの発売前だったから当然だ)、すでにRyzen 9 7950Xが発売されている現時点では今ひとつおもしろくないことを考えて、今回は割愛する。
このあたりはKTU氏のレポートをお待ちいただきたい。全体として言えば、Zen 4とはまた別の方法で「内部構造は大きく変えずに実効性能を引き上げた」のがRaptor Lakeということになる。さて、Zen 4 vs Raptor Lake、どんな結果になるのだろうか?
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