2022年9月16日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS ジャパン)は、クラウドサービスにおけるコスト最適化の手法について説明を行なった。今後も長期的に円安基調が継続するとの観測もあるなかで、AWSジャパンでは、それに向けた対策を自ら提案した形になる。AWSのユーザーは、果たしてどんな手法で対策を取ればいいのだろうか。
「円安の影響でコスト効果を実感できない」という声も
AWSのクラウドサービスの契約は、米国ドルでの支払いが基本となる。そのため、急激な円安で実質的な利用額が増加するという状況が生まれている。これについてAWSジャパン 事業開発統括本部 統括本部長の佐藤有紀子氏は、「コストに対する意識や関心は、これまで以上に高まっている。円安の影響で『想定よりコスト効果を実感できない』という声も挙がっている」とコメントする。
また、今回の急速な円安にあわせて、一部の企業からは為替を固定した形での料金設定を求める声があったという。これについて佐藤氏は、「クラウドサービスを安定的に利用してもらうために、こうした要望には個別に対応している。一般的なプログラムとして提供するものではなく、個別企業のケースに応じて対応しているものである。対応について、特別な条件などを設定しているものではなく、営業部門を通じてお客様との会話を続け、対応しているところである」と述べた。
説明会では、持続可能なクラウドの利活用のための、さまざまな支援プログラムが紹介された。
1つめがセルフ診断ツールとして提供している「AWS Trusted Advisor」である。ここで用意されている「コスト最適化」の項目では、14個のチェックポイントがあり、利用しているクラウドサービスの状況を確認し、コスト削減のためのアドバイスを行なう。
AWSジャパン パブリックセクター技術統括本部長の瀧澤与一氏は、「月額料金の節約の可能性を確認できるツールであり、使用率の低いサーバーを確認し、コストを最適化したり、AWSの購入オプションであるリザーブドインスタンスやSaving Plansの提案を行なったりする。AWSのユーザーは、まずはAWS Trusted Advisorにアクセスしてもらい、チェックをすることで、コストを下げられる要素を見つけることができるだろう」と説明する。
リザーブドインスタンスとSaving Plansによるコスト削減
2つめが、前述したリザーブドインスタンスの利用である。Amazon EC2を1年間連続して使用することや、3年間固定して使うことがわかっている場合には、リザーブドインスタンスを購入することで、割引を得られる。平均割引率はスタンダードクラスでは1年間で40%、3年間で60%となっており、全額前払い、一部前払い、前払いなしという選択を選ぶことで、さらに割引率が変化する。
瀧澤氏は、「100台のサーバーのうち、60台をリザーブドインスタンスで、40台はオンデマンドで利用するといった組み合わせでの利用も可能である。全額前払いであれば、現時点での為替レートに基づいて価格がセットされる。今後もさらに円安が進行すると予測している場合には、全額前払いという選択肢もある。100台のうち、60台までを全額前払いにし、残りの40台は為替の動向を見てみるという選択もできる。これは利用者側が自由に選択できる」と説明。リザーブドインスタンスが為替対策にも有効であることを示した。
また、より多くの柔軟性を提供するSavings Plansを利用することでのコスト削減も可能になるという。Savings Plansでは、Compute Savings PlansやEC2 Instance Savings Plansなどを用意。インスタンスファミリーの移行やテナントの移行、コンピューティングオプションの変更のほか、コンテナやML(Machine Learning)への適用も可能なプランとなっている。設定の変更によってコストを削減したり、各種サービスの購入オプションの見直しによって、コストダウンが可能だ。
瀧澤氏は、「リザーブドインスタンスと同様にさまざまな購入オプションを用意しているため、柔軟に購入方法を選択できる。どんなプランがいいのか、Savings Plansとリザーブドインスタンスのどちらがいいのかといった点については、AWSのソリューションアーキテクトがアドバイスすることができる」と説明。Savings Plansでも、リザーブドインスタンスと同様に、全額払いを選ぶことで、現在の為替レートでの長期間利用が可能になり、今後の円安の進展を想定している企業にとっては為替対策につなげることができるという。
データ重複排除機能でストレージの課金を減らす
3つめが、ストレージサービスである「FSx for Windows File Server」におけるデータの重複排除の提案だ。ファイルサーバーを運用していると、複数の場所に同じファイルが点在したり、複数のコピーとバージョンを保有したりといったことが発生し、これを探し出すことも難しい。その結果、大規模なファイルサーバーでは、無数の重複が存在し、ストレージコストが増大することになる。
瀧澤氏も「データ重複排除機能を使用することで、平均で50~60%ほどの容量を削減することが可能となる。これによってストレージへの課金額を減らすことができる」とする。
さらに、オブジェクトストレージであるAmazon S3においては、用途に応じたストレージタイプに変更することでコストを削減できることを提案。瀧澤氏は「S3では、標準アクセスのほか、標準低頻度アクセス、1ゾーン低頻度アクセスなどを選択できるようになっている。アクセス頻度や可用性によっても、タイプを選択できるようになっていることから、すべてを標準アクセスで利用しているユーザーは、ストレージタイプを見直すことで、コスト削減につなげることができる」と指摘した。
ここでは、「Amazon S3 Intelligent Tiering」と呼ぶサービスを紹介。顧客の要件と使い方、コストのバランスを見て、自動的に最適なタイプに移行することができることも紹介した。「30日間のアクセス状況を見て、アクセス頻度が低いストレージであれば、アーカイブとして利用できるサービスプランに自動的に移行し、コストを削減するといったことができる。これを繰り返すことでコストの最適化ができる。利用者がアクセスできなくなるということはなく、利用には影響がない」(瀧澤氏)とした。
そのほか、クラウドへのリフト&シフトへの取り組みもコストダウンにつながることを提案。ワークロードに応じた段階的な最適化を実施しながら、サーバレスやマネージドサービスをフル活用したクラウドネイティブアーキテクチャを実現していくことでコスト削減が可能になるとした。