神奈川/神戸データセンターに新棟を開設、「pPUE=1.16」の高効率とクラウド接続性で事業拡大を図る
NEC、100%再エネ利用のグリーンデータセンター2棟の計画を発表
2022年09月14日 07時00分更新
NECは2022年9月13日、2023年下期に「NEC神奈川データセンター二期棟」を、また2024年上期に「NEC神戸データセンター三期棟」を、それぞれ開設すると発表した。いずれもNECとしては初めての、100%再生可能エネルギーを活用したグリーンなデータセンターとなる。それぞれ1500ラック規模を想定しており、2つの新棟をあわせた投資額は300~400億円を見込んでいる。
グリーンDCとしての効率性、ハイブリッド/マルチクラウドを実現する接続性
今回の発表について、NEC マネージドサービス事業部門長の上坂利文氏は「データセンター需要の高まりを受けて、新棟の建設を決定した」と述べた。2019年開所の「神戸データセンター二期棟」は同社の想定よりも早く、約3年で満床になったという。上坂氏は「クラウド接続性の強化によって、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドに適した環境を整えたことで、事業が順調に拡大している」としたうえで、新しいデータセンターにおいても「安心・安全、効率、コネクティビティ」という特徴を生かした整備を行うと説明する。
新設するデータセンターは、耐災害性や高セキュリティによる「高可用性」、高い電力効率と再生可能エネルギーの活用による「効率性」、各種クラウドサービスとの「接続性(コネクティビティ)」という3つの特徴を持つ。
特に注目されるのが効率性だ。両データセンターでは、中央熱源冷却方式や冬季のフリークーリングの活用、空調設計の最適化、受変電/配電損失の低減、高効率UPSの採用などによって、国内商用データセンターでは「pPUE=1.16」の実現を目指す。従来の神奈川/神戸データセンターはpPUE=1.18で設計されていた。
さらに両データセンターでは、太陽光発電による自家発電やグリーン電力証書、トラッキング付き非化石証書を組み合わせることで、消費電力を100%再生可能エネルギーにするという。上坂氏によるとこの再生可能エネルギーのうち、8~9割がトラッキング付き非化石証書、約1~2割がグリーン電力証書となり、太陽光発電による自家発電はわずかだという。
顧客企業のハイブリッドクラウド/マルチクラウド利用が進むなかで、各種クラウドサービスとの接続性もポイントとなっている。両データセンターは「NECパブリッククラウド接続サービス」の接続拠点を通じて各種クラウドサービスとの閉域接続が可能。さらに主要クラウド事業者との接続拠点を有する「NEC印西データセンター」との接続も含めて、顧客が希望するロケーションや必要なクラウドサービスへの接続要件から最適な環境を提供するという。
そのほか高可用性についても、ハザードマップ対象外の低リスク地域でJDCCファシリティスタンダードティア4相当の堅牢な立地環境、ISMAP登録(NEC Cloud IaaS)、FISC安全対策基準準拠、SOC2 Type2 保証報告書の取得といった特徴を挙げた。なおデータセンター内では、入館カードの無人発行システムや顔認証システムの採用で利便性を向上しながらも、7段階のセキュリティチェック実施で強固なセキュリティを実現するという。
用途に応じた3種類のデータセンターを展開、幅広いニーズに応える
上坂氏は、NECのデータセンター事業全体での取り組みについても説明した。
NECでは、その用途に応じて「コアDC(データセンター)」「地域DC」「クラウドHUB」という3種類のデータセンターを整備している。
今回新棟を増設する神奈川/神戸データセンターは、コアDCという位置づけだ。コアDCは東西の中心となる大規模なデータセンターであり、1棟あたり約1500ラック(神奈川データセンター第一期棟は約3000ラック)の規模で運用している。一般企業向けの販売が中心だが、NEC Cloud IaaSも運用するほか、クラウド事業者やECサイトのような大規模ユーザーにも安心・安全な環境を提供する。
また前述のとおり、コアDCは各種クラウドサービスとの接続性も提供する。上坂氏は「NECのデータセンターを活用することでハイブリッドクラウド環境を構築できる」と述べたうえで、接続だけでなく、マルチクラウドの運用管理を行うマネージドサービスやマルチクラウド間のデータ連携サービスも提供できると紹介した。
2つめの地域DCは、地方公共団体や地場企業向けのデータセンターと位置づけており、全国13拠点に展開している。コアDCとのデータセンター間ネットワークを介して、地域DCからもクラウドへの閉域接続が可能だ。今後は「デジタル田園都市国家構想」への対応を想定しているという。
クラウドHUBは、2022年4月開設で約800ラックを導入する印西データセンターがその役割を担っている。クラウド基盤とのハブ機能を提供し、インターコネクテッドエコシステムの形成や、エコシステムパートナーとの接続をシームレスに実現するネットワーク環境を提供する。2022年6月には「Microsoft Azure ExpressRoute」の接続拠点を開設。Azureとの低遅延/セキュアなダイレクト接続を可能にする「NEC DXネットワークサービス」も提供する。なお今後は西日本エリアへのクラウドHUB設置も計画しているという。
上坂氏は「NECのデータセンター事業は、クラウド接続性とグリーンDCを強化することでさらなる事業成長を目指す」と述べた。クラウド接続性については、メガクラウドやIXとの接続拠点を有するデータセンター事業者の成長率が高いことに着目し「従来の『SIer系データセンター』の役割にとどまらず、接続性を強化してマルチクラウド/ハイブリッドクラウドに適したデータセンター環境を提供し、顧客のDXを支援する」と語る。
またグリーンDCでは、NECが掲げる「2030年度までに温室効果ガスを55%削減する」という目標達成への貢献のほか、データセンターの利用顧客に対しても温室効果ガス削減目標達成のツールとして提案。100%再生可能エネルギーを活用する新しいデータセンターを通じて、環境貢献度を高める考えを示した。
なお、ソブリンクラウドの提供については「NEC Cloud Stackのソブリンクラウド化を検討している。近いうちに説明することができる」と述べた。