業務を変えるkintoneユーザー事例 第154回
秘訣の1つはできない人や苦手な人を置いてけぼりにしないこと
胸ぐらつかみ合うレベルの世代間ギャップ kintoneで埋めたギフトボックス会社
2022年09月09日 09時00分更新
「kintone hive 2022」の第4弾が札幌で開催された。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出する。6社が登壇したが、今回はトリを務めたモリタ 代表取締役社長 近藤篤祐氏による「世代の違いを乗り越え、kintoneを活用!スタッフの調和が作り出す最高のギフトボックス」というプレゼンのレポートを紹介する。
業務改革を行なった結果、ベテランと若手が対立
モリタは札幌市白石区にある紙箱やパッケージを製造する物づくりの会社だ。創業は1932年5月で、今年90周年を迎えている。近藤氏は2007年に入社し、2020年から社長を務めている。従業員は20代から70代の28人。お酒やお菓子などの箱を手がけており、日本だけでなく海外にも展開している。中身の魅力を引き出す最高のギフトボックスを作っているそう。
「順風満帆に見えますけども、ここまでに至るまでの道のりは長かったです。今から15年前、当時の主力製品はお中元とお歳暮のギフト箱でしたが、その箱の売り上げが減少していきました。受注減とデフレのど真ん中で低価格競争により赤字決算が続き、苦境に陥ったのです」(近藤氏)
そこでモリタでは全国で数社しか手がけない「Vカットボックス」という箱作りの開発に取り込み、量産化に成功した。そのおかげで受注が増えたのだが、Vカットボックスは作るのがとても難しく、現場は大混乱してしまった。
まずは生産計画がないこと。当時のベテラン職員は「計画を立てる暇があったら、機械に向かえ」と言い、無計画に生産を進めるタイプが多かった。そのため、業務が複雑化する傾向にあり、受注が増えると対応できずキャパオーバーになった。そうなると、大手企業からせっかく大口の注文が来ても、断らざるを得なくなる。
2つ目の問題は、生産情報の伝達不足と伝達ミスが頻発したこと。モリタの工場は1階と2階と3階に分かれているが、なんと伝達方法は口頭だった。
そこで、若手世代を中心に改善活動がスタートした。パソコンを導入して製造指示書を手書きからExcelにペーパーレス化。ホワイトボードで生産計画を立てて、スケジュールを見える化したのだ。しかし、ベテラン世代はこの取り組みについて行けなかった。
「ついに、若手のスタッフがベテランに向かって『ちゃんと計画通り仕事しろよ』と言い、ベテランはカッとなって『お前パソコンになんか座ってないで、機械を動かせ!』と、つかみ合いのケンカになってしまいました。目の前で発生しまして、私が仲裁に入りました」(近藤氏)
改革がしにくい保守的な風土になっていたことに気がついた近藤氏は、若手世代に賭けることにした。せっかく意欲が出てきた若手世代に、どうにかして任せてあげたい、と考えたのだ。
そこで、クラウドサービスによる情報共有化で、コミュニケーション力を向上させ、課題解決のきっかけなれば、とkintoneを導入することにした。導入の決め手は、とにかくアプリが作りやすそうだったから。営業や生産、業務改革など、いろいろなと自由に作れそうだと感じたそう。
最初に作ったアプリは「製造指示書」アプリ。受注品の詳細情報を共有するアプリで、コロナ禍の2020年3月に開発した。着手してから1週間で完成させたそう。紙ベースと併用することで大きな混乱はなく運用がスタートできた。
しかし、使い勝手が悪いという声が寄せられた。kintoneの画面をプリントアウトすると文字が小さく読みにくいとか、必要のない項目もあるのでわかりにくいという。プリントアウトが2枚、3枚になってしまうのも課題だった。
「いろいろ調べて、プラグインの「Repotone U」を導入しました。アプリのデータをあらかじめデザインしたPDFシートに自動転記できるプラグインです。製造指示書アプリの「作成」というボタンを押すと、PDFに変わり、レコードに自動保存できます。これで、社員のkintoneに対する満足度が一気にアップしました」(近藤氏)
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