業務を変えるkintoneユーザー事例 第149回
kintone hive sapporo 2022で披露された跡継ぎならではのメッセージ
ペーパーレス化と業務改善を実現 跡継ぎがkintoneでできること
2022年08月18日 09時30分更新
「kintone hive 2022」の第4弾が開催された。会場となった札幌でのkintone hive開催は初となる。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出する。今回は「アトツギが奮闘するkintoneを使った現場改革」というテーマで登壇した三晃化学 代表取締役社長 渡辺庸介氏のプレゼンについて紹介する。
書類の山がすべて手書き。電子化はできたが活用にいたっていなかった
三晃化学は1956年に創業した。主に農家や酪農、土木産業の分野で使われるプロ向けの資材を作っており、現在はパート従業員を含めて44名。たとえば、風害を防ぐためのネットなどは縫製から立てるところまで手がけているそう。
渡辺氏は3代目の跡継ぎで、大学卒業後4年間は家業とは別の会社で働いた。その後、三晃化学に入社して営業として働き、2021年7月から代表取締役となった。
「よく、跡継ぎは社員と軋轢が生じて揉めたりするのですが、私は三晃化学に入社して、社員の皆さんが非常に優しく、自分も働いていて100パーセントのパフォーマンスを出せる会社だと感じました。こういう温かい部分は残しておきたいのですが、それらを支えるための、書類の山はすべて手書きでした。これは私が3代目としてがんばらなきゃいけないなと思いました」(渡辺氏)
kintoneの導入前は、渡辺氏が勉強し、Excelやクラウドサービスを活用して課題を各個撃破していた。しかし、データの電子化まではこぎ着けたのだが、情報がサイロ化しているのでデータの活用までは実現できなかったのだ。
そんな時に、kintoneと出会ったそう。kintoneのことを学べる「kintone devCamp」やデベロッパー同士が課題を解決し合えるコミュニティ「cybozu developer network」などがあり、プラグインにより機能拡張できることを知り、これならばやりたいことを実現できるのではないか、と感じた。
kintone導入時にはまず、業務フローを理解し、整理することに着手した。いろいろな部門の社員の話を聞き、どんな仕事でどんな情報を紙で流しているのかをヒアリングしたのだ。
業務フローを整理したら、kintoneに載せるためのアプリ構成を考えた。ホワイトボードに構成図を書き出し、渡辺氏がバリバリと主導して開発を進めたという。その結果、アプリ導入は成功した。
「うまくいった原因は2つあります。1つ目は現場のメリットを考えたことです。kintoneを入れることのデメリットより、二度手間が減ったり、簡単に入力できたり、見やすいといったメリットがあれば乗り越えられるのではないかと思いました。さらに、ダメだった場合は、元に戻してもいいと伝えました。紙に戻してもいいですよ、とすることで、心理的なハードルを下げたわけです」(渡辺氏)
導入が成功しただけでなく、kintoneというたたき台があるので、社員からいろいろな意見が出るという効果もあった。最初のアプリは簡単な作りだったが、社員からの意見を参考にブラッシュアップして見やすい形になったという。
作成した4つのアプリで大幅時短に成功
「アプリは4つあります。1つ目は製造指示書、2番目は工場の管理者と倉庫の担当者が使うピッキングリスト、3番目がミシンを使っている方々と時間共有するための時間記録、4番目が営業マンの見積もりのデータです」(渡辺氏)
「製造指示書」は従来Excelで管理していたが、マスターの管理が面倒で単価などの更新が1年に1回くらいしかできず、結局活用されていない状態だった。さらに、過去の製造記録を調べたいと思っても、ファイル名でしか検索できないという課題もあった。
kintoneアプリにすることで、単価や品名を別アプリで管理して手軽に更新できるようになった。Excelファイルの時は約8000個もあって、検索にするだけで5分以上かかっていたところが、kintoneでは20秒で検索できるようになり、大きな時短が実現した。さらに、手書きの時の様式で見たいという社員もいたので、手書時代の様式も再現したという。
三晃化学では午前中までに注文があったものは、午後に出荷することになっている。その際のリストも手書きだったので、昼にまとめて書いて午後イチで渡していた。倉庫の担当者も夕方までに急いで梱包する、という大変な状況だった。そこで、kintoneを電子掲示板的に利用することにした。リアルタイムに注文がわかるようになり、午前中から前倒して出荷の準備ができるようになったのだ。
倉庫の担当者にはタブレットを配布し、出荷すべき商品を見落とさないようにした。現場の人が遠目でも見やすいように、数量や商品名は大きく表示するように工夫している。
また、出庫依頼書と商品に添付する出荷案内書に同じ内容を記載していることに気がついたので、出荷案内書アプリを作成して自動的に内容がコピーされるようにした。そのおかげで、データの二重入力をしなくて済むようになった。
商品を作る際、5人が5時間かかったら、25時間かかったという計算になるが、この製造時間記録も以前は紙で管理していた。まずはパートリーダーがまとめて書き、社員が受け取ってExcelで管理していたのだ。ざっくりしているのでどんぶり勘定になっており、本当にどのくらいかかっているのかは把握できていなかったそう。また、この作業が残業の元になっているという課題もあった。
kintoneアプリ化することで、個人別に正確な作業時間を記録できるようになった。また、現場で作業している人にとっては、kintoneの入力画面は使いづらいので、お金をかけて入力画面を作り込んだ。今何を作ってるのかを数タップで入力できるようにしたのだ。
潜在的な採算割れの製品を把握できるようになったのも大きなポイント。担当者が6時間でできると見積もった商品が実際に10時間かかったなら、改善しなければならない。このような分析ができるようになったことで、社内も盛り上がったという。
「(アプリの)モックアップをパート・従業員の方にどうでしょうかと見せたときに、「あ、これだったらなんとなくできそうだね」と言っていただいたことを非常にうれしく感じました」(渡辺氏)
4つ目が、他のクラウドシステムからの切り替え。見積り書は専用サービスを利用していたが、単価はkintoneアプリで管理しているので、データの共有がままならない。それならば、とkintoneアプリを開発して乗り換えた。
このように、バラバラだった会社の情報がkintoneというプラットフォームに入ることで、部門間の情報共有がリアルタイムにできるようになった。kintoneを見れば情報がわかるので、わざわざ他の社員の手を止めて質問するというような時間が減ったそう。
社員が自発的に動き始めたのが一番の導入効果
1点、出張が多い営業担当からは、スマートフォンで利用するのでkintoneのスマホ画面が見づらいことがある、という声が上がっており、今後の改善点だという。
「一番の導入効果は社員の皆さんが、自発的に動き始めたことです。部門間の担当者たちが集まって、今までのワークフローをどうしたら改善できるんだろうか、もっと良くしてこうよ、kintoneならだったらできるんじゃないか、なんてことが自発的に始まっています」(渡辺氏)
最近、値上げの波が来ているので、今後は在庫管理や棚卸しなど、価格を素早く反映させたり、通常の業務改善を進める予定だという。さらに、kintoneに情報が集まっているので、KPIを見える化したり、kintoneをダッシュボードとして活用したりできるのではないか、と考えているそうだ。
「跡継ぎが社員さんのために業務改善をしたいという時には、kintoneがあれば、必ず手助けしてくれると思います。何か困ったことがあってもサポート体制が充実しています。跡継ぎの皆さん、kintoneを使って現場の改善をどんどんしていきましょう」と渡辺氏は締めた。
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