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スーパー耐久2022レポート 第3回

スーパー耐久第3戦は、激戦を制し39号車が今季初優勝! 正念場で垣間見えた冨林勇佑の“進化”

2022年07月30日 15時00分更新

文● 吉田知弘 写真●加藤智充 編集●ASCII

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百戦錬磨のドライバーが冨林に襲いかかる!

 今季初優勝への可能性がさらに大きくなったのだが、ここからがゴールに向けた正念場となった。背後には、2回のドライバー交代を終えた311号車フェアレディZがせまって来たのだ。しかも、乗り込んでいるのはスーパーGTのGT500クラスで2度チャンピオンに輝いた松田次生。冨林の39号車は燃費走行をしなければいけないうえに、2度目のピットタイミングも周りと比べて早かったため、タイヤのマネジメントも必要だった。

 2台の差はあっという間に縮まり、残り40分を切ったところでは間隔が1秒を切った。経験豊富な松田は、着々と冨林を追い詰めていき、メインストレートで並びかけようとするが、ここは39号車の方がスピードで優っており、並びかける隙を与えなかった。それでも休む間もなく隙をうかがってくる松田に対し、冨林は防戦一方となるも意地でポジションを守り抜き、ゴールを目指した。

 重要な局面で、気持ちを切らすことなくマシンを走らせていく……。気がつくと、冨林は39号車メンバーの中で誰もが頼れる、頼りたくなるエースに成長していた。そんな走りを存分に見せつけたレース終盤だった。

 なんとか311号車の猛攻をしのぎ切ったのだが、レースはこれで終わらない。39号車とは逆にレース終盤までピットストップを引っ張る作戦に出ていた52号車クラウンRSが、最終盤での逆転トップ浮上を狙っていた。冨林は311号車とのバトルをしながらも、常に52号車との位置関係を無線で聞き、ペースを落とさないように心がけていた。

 そういった冷静な目が功を奏し、52号車が2度目のピットストップを行なっている間に逆転。311号車とのバトルは最終ラップまで続いたが、なんとか0.7秒差で逃げ切り、今季初優勝を飾った。

 普段は、他のクラスの車両が総合トップチェッカーを受けるのだが、今回は2グループに分かれているため、39号車がグループ2のトップチェッカーとなった。最後まで集中力を切らさない走りをみせた冨林は一気に注目を浴びることとなったのだった。

デルタ 田中延男代表 コメント

 「本当に良いレースができました。決勝ですが当初は石井→伊藤→冨林の順でいく予定でしたが、Cドライバー予選が天候の影響もあって基準タイムをクリアできていませんでした。嘆願書により出走は認められましたが、スタートドライバーは伊藤か冨林のどちらかにしなければいけなくて……。そこで伊藤にスタートを行ってもらいました。そうしたら、序盤にSCが出たので、伊藤の走行時間は大幅に減りますが、ここで動くしかないなと。

 とはいえ余裕はなくて、燃料もギリギリでしたし、最後の冨林のスティントもタイヤが厳しかったです。その中で、よくやってくれました。今回はチームの作戦勝ちだったと思います。燃費とかのことを考えると、あの序盤で入ることはなかなかできないと思いますけど、勇気を持っていきました。そして、最後は冨林に託して勝つことができました」

冨林勇佑選手 コメント

 「めちゃくちゃ長く感じたレースでした。途中、石井選手のスピンでロスした部分もあったので、正直311号車の前に出られるとは思っていなくて、とにかく52号車との位置関係を気にしていました。もちろん優勝はほしいですけど、チャンピオン争いを考えると52号車を意識しなければいけません。311号車とバトルをしすぎてしまうとペースが落ちて52号車に先行されるので、そこをずっと気にしていましたが、ギャップを聞いていたら大丈夫そうだったので、あとは311号車とのバトルに集中しました。

 (相手が松田次生選手だったことには)気合いが入りましたね。GT500のチャンピオン経験者との勝負で勝つことができれば、さらに注目されますし、逆にここで抜かれてしまったら、予選での伊藤選手の失敗とか、決勝の石井選手のスピンもイジることができないので……。いろんなものがパワーになって、なんとか頑張れました。タイヤも厳しかったし、これだけ暑くなるとブレーキが厳しくなって大変でしたけど、チームも燃費とかを逐一計算してくれて、ギリギリでしたがずっとプッシュすることができました。ここで勝てたことで、チームの士気も上がると思いますし、後半戦に向けて勢いをつけられたと思います!」

伊藤鷹志選手 コメント

 「予選ではミスをしてしまって、チームにも迷惑をかけてしまいましたけど、決勝は監督の采配が素晴らしかったです。正直、もうちょっと走りたいなという気持ちはありましたけど、スタートで1台抜けたのも大きかったですし、そこは自分も自信になったところもあります。これを踏まえて、次戦はっと良い走りができるように準備して頑張ります。39号車にとっては今季初優勝ですし、僕もS耐初優勝になったので、本当に忘れられない1日になりました」

石井宏尚選手 コメント

 「予定外の展開になって、本当は僕がショートスティントになるはずだったんですけど、長いスティントを担当することになりました。うちのクルマは燃費がすごく良くて、メカニックさんが事前に練ってくれたプラン通りで、あまり燃費走行をすることはなかったです。ただ、僕たちが早めにピットインしたことで、SC明けのタイミングで、ST-5クラスの車両が目の前にいたので、そこはすごく気を使いながら走らなければいけなかったんですけど、うまくできたかなと思います。自分としても出せる部分は出し切ったんですけど、ちょっとヘアピンの立ち上がりでスピンしてしまって……。そこは今後に向けて反省点ではありますが、最後の冨林選手がすごく頑張ってくれたので、本当に感謝しかないです」

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