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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第677回

アナログ回路でデジタルより優れた結果を出せるAspinityのAnalogML AIプロセッサーの昨今

2022年07月25日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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2022年第4四半期に量産開始

 すでにAspinityはこのAnalogMLを実装したAML100のサンプルや開発キットの出荷を開始しており、量産も今年第4四半期を予定しているとする。

構造的に、それほど微細化した先端プロセスは必要ないので(先端プロセスではNANDフラッシュの実装が難しいから、おそらくは40nmかそれ以上のプロセスだろう)、量産そのものの敷居は相対的に低いと思われる

 具体的な例として、警報装置向けにガラス破壊の検出を行なうにあたり、マイクと特徴検出までは常時動くが、その先のニューラルネットワークとその結果を基にした侵入判断のところは、イベントが発生するまで休止状態にある。したがって、常時必要な消費電力は125μWに過ぎないとする。

5秒および11秒あたりの最初の2つのDetectionがガラスを殴る音(Thuds)、27秒くらいからの長い音がガラスの破壊音(Shatters)に相当するものだそうだ。この判断はニューラルネットワークなしでは不可能だった

 これがどの程度の消費電力か? というと、例えば単三乾電池の容量は(製品にもよるが)1本あたりおおむね2000mAh程度である。電圧は1.5Vなので3000mWhという計算だ。これを125μWで割ると24000時間≒2.7年ほど動作することになる。実際にはその前に電圧降下なども起きるし、容量をフルに使い切るのは難しいが、話半分としても1年以上連続稼働させられる計算になる。

 もう1つが音声による起動の例である。音声起動の場合、注意するのは起動が必要と判断された際には、その音声を最初から(この例で言えば“wake word”の頭から)後段に送り出す必要があることだ。

Wake wordとは「Alexa」「Ok, google」「Hey, Siri」など、その類である

 そこで、AML100では入力された音声からキーワードを検出する処理(VAD:Voice Activity Detection)と並行して、音声圧縮処理が同時に動くことになる。これはドライブレコーダーを考えるとわかりやすい。衝突を検出してから撮影を始めていたら、なぜ衝突したかがわからない。なので、常時撮影をしており、衝突を検出したらその衝突前の数秒~十数秒のからの録画を保存するようになっている。

 音声検出もこれと同じである。MCUの方は、AML100から起動させられたら、圧縮保存していた音声を展開すると同時にマイクから直接音声を取り込み始め、キーワードに続く音声を連続取り込み。つなぎ合わせて実際に音声認識して、それに応じた処理を行なう仕組みだ。このシステムでの待機時の消費電力は全部合わせても200μW未満、とされる。

 もともとAspinityはRAMPベースのチップを、センサーメーカーに売り込むつもりだったようだ。ただ思ったほどには売れなかったようで、では幅広いセンサーに利用できるようにしたうえで、機器メーカー向けに売り込もう、というのがAML100の狙いに見える。

 どこかで大口採用が決まれば、量産効果が効いて一気に価格は下がりそうにも見えるので、まずは最初の大口顧客をいつつかまえられるかが鍵になりそうである。

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