プロセスマイニングの実践においては「CoEの編成が有効」と強調、具体例を示す
「日本でもプロセスマイニングの大きな波が起きる」Celonis 村瀬氏
2022年07月20日 07時00分更新
プロセスマイニングツールや実行管理システムを提供するCelonisは2022年7月19日、日本市場におけるプロセスマイニングの導入状況などに関する記者説明会を開催した。
Celonis日本法人社長の村瀬将思氏は、「日本でもCelonisを活用した変革が始まっており、大きな波がこれから起きる」と述べ、プロセスマイニングを通じて“無駄”や“ムラ”をなくし、日本企業のビジネスパフォーマンスを最大化していくという意気込みを示した。さらに、企業が本質的な変革を進めるうえでは、テクノロジーだけでなく「CoE(Center of Excellence)の編成が有効」だとして、その具体的な説明を行った。
プロセスマイニングによる洞察からインテリジェントなプロセス実行へ
Celonisは2011年にドイツのミュンヘンで設立された、プロセスマイニングと実行管理システム(EMS)のソフトウェアベンダー。日本法人は2019年2月に設立された。現在、日本国内ではパナソニックインフォメーションシステムズや、九州電力子会社のQTnet、富士通のDX子会社であるRidgelinez、KDDI、NIPPON EXPRESSホールディングス、アグレックスなどが同社製品を採用している。
Celonisのプロセスマイニングは、複数の業務システムからログを収集し、プロセスの目的やタイムスタンプなどの情報を組み合わせ、プロセスを“レントゲンのように”可視化する。これにより、プロセスの実行時にボトルネックとなっている部分を、データに基づいて解決していく。
村瀬氏は、Celonisの製品は「従来のSoR(System of Record)やSoE(System of Engagement)とは異なる“System of Performance”という新たな仕組み」であり、「日本の企業の救世主となるプラットフォームになる」と自信をみせる。
「Celonisは、プロセスマイニングとData Executionによって、顧客企業の見えない非効率性を明らかにし、解決を支援することができる。日本は個別最適のシステムが数多く、また複数部門に渡るシステムが多い。これらのシステムを対象に、Celonisでプロセスを可視化して“改善の金脈”を掘り当てることができる。また、全社中期経営計画といった高い視座からの全体最適を図ることができる」(村瀬氏)
大きな成果を生み続ける独シーメンスでの先進事例
海外におけるプロセスマイニングの先進事例として、独シーメンスの取り組みが紹介された。
独Celonis 組織改革担当VPのラース・ラインケマイヤー氏は、過去20年以上にわたってシーメンスに在籍した経歴を持つ。2014年にCelonisへ移籍したあとも、シーメンスにおけるプロセスマイニングの取り組みに貢献してきたという。
「シーメンスでは2014年から全体プロセスの可視化に着手し、それらの成果を基に2018年には『Celonis EMS』を導入、プロセスの実行管理を行った。これにより、効率化とともに、プロセス改革による価値を導き出すことができた」(ラインケマイヤー氏)
現在では全世界15工場、6000以上のユーザー、500以上のプロセス、200以上のアクションエンジンをカバーしているという。2018年に実行管理を導入してからは、わずか1年間で1000万以上の手作業を削減し、手戻りによる作業も11%減少、自動化率は24%高まったという。シーメンスではCelonisをグローバル戦略パートナーに迎え、今年はCelonisとともにサプライチェーンの強靭化、予測分析、クラウド化によるリアルタイム性の強化などに取り組む考えを示している。
「Celonisは、強力なテクノロジーを提供するだけでなく、価値のあるアドバイザーとして、プロセスの変革を支援することができる」(ラインケマイヤー氏)
プロセスマイニングの実践に「CoEの設置」が欠かせない理由
今回の説明会では、プロセスマイニングを実践していくうえでは「CoEの設置」が重要であることを、時間を割いて説明した。
ここで言うCoEとは、Celonis製品を有効活用するために設けられる社内の専門組織であり、リーダーシップやベストプラクティス、技術展開、サポート、トレーニングなどを行うことになる。ラインケマイヤー氏は、「CoEは変革を実現するために重要な中核的組織になる」と位置づける。
「CoEが持つのはヘルプデスクの機能ではない。エグゼクティブスポンサー(経営陣による支援)との連携などを通じた『カタリスト』としての役割、全社にメッセージを伝達してコミュニケーションの中心となる『エバンジェリスト』としての役割、テクノロジーの実装を進めていく『イネーブラ』としての役割を担う。CoEが成功するためには、最適なチーム編成や組織体制、運用モデルが重要であり、トップダウン型のプログラムによってガバナンスと戦略的連携を実現する必要がある」(ラインケマイヤー氏)
Celonisが200社以上のユーザー企業を対象に実施した調査によると、調査対象企業の100%が「CoEが必要」だと考えており、CoEを設置することで、設置しない場合に比べて8.8倍の確率でROIを達成できることがわかったという。また、92%の企業が「Celonis CoEは透明性を高める」と回答し、75%の企業が「CoEはコスト削減にプラスの影響を与える」と回答、57%の企業が「CoEは自動化を向上させる」と答えたという。そして、CoEを成功させるためには、エグゼクティブスポンサーの支援が必要であることも示された。
Celonisのユーザー企業のうち、全社規模で、Celonisに関する戦略的なCoEを設置している企業は約200社あるという。Celonisではそこから「CeloCoE Champions」と呼ぶ先駆的な企業を40社選定し、さらに「1,000万ドル以上のビジネス効果」「10以上のプロセスでの実行」「Celonis EMSの活用」などの条件を満たすトップ企業17社を「CeloCoE Champions League」としている。Champions Leagueの1社であるファイザーの場合、Celonisを活用して1億2000万ドルもの効果を創出したという。
「日本では、CoEを設置している(Celonisユーザー)企業はまだ10社程度。日本企業がCeloCoE Champions Leagueに食い込めるよう、支援をしていきたい」(村瀬氏)
なお、CoEには「中央集権型」「ハイブリッド/フェデレーション型」など、いくつかの運用モデルがあるという。ラインケマイヤー氏は、日本企業ではとくに、中央とオペレーションユニット(業務現場)のギャップを埋めるのに役立つハイブリッド/フェデレーション型が適しているだろうと語る。さらに、CoEをIT部門の中に置いたり、シェアードサービスとして展開したり、CDOがリードしたりといった具合に「それぞれの変革に応じて、適正な形態を選ぶのがよい」と述べた。
なおCelonis日本法人では、6月28日に「Celonis World Tour 2022 東京」を開催。対面方式のみで実施したものの、当初予定を上回る数百人が参加し、サテライト会場を用意する盛況ぶりだったという。
また日本独自の取り組みとして、ユーザー企業のエグゼクティブを集めた情報交換会「CxOClub」を、ユーザー会として「CeloUG」を設置している。
「CxOClubは、2回目までは海外事例の共有が中心だったが、3回目からは国内事例を共有するかたちに変わっている。コロナ禍におけるサプライチェーンの混乱に対して、在庫管理の可視化や適正化を図った事例のほか、新システムのカットオーバーに際してCelonis CoEを活用することで“ハイパーケア”を実現し、新たなプロセスの定着を可視化している事例などが紹介された。こうした日本での事例が増えていることに手応えを感じている」(村瀬氏)